虚構哀歌
自分を切り売りする度に、消費されていく。
貴方の時間、貴方の性、貴方の言葉、貴方の声。
貴方のイデア。
鏡に映るのは誰かが欲しい貴方で、
そうやって都合よくパッケージされた「それっぽい何か」をみんながありがたがって口にした。
貴方がまた消費されていく。
売れ残った誰も必要としない貴方こそを
僕は愛でよう。
手に取らなかった全ての人を、世界を呪いましょう。
そうしてひとしきり充足と欠損を繰り返して
また声を出しましょう。
物売りのあの、祝詞のような呪言のような一定の口調で、いつものように心音を売りましょう。
僕は貴方の偽物です。
僕が貴方の虚構を綺麗に売ってみせます。
だからどうか売らずにおいた言葉だけは大切に閉まっておいてください。
机の引き出しの奥の、鍵のついた小さな箱の更に隅っこに。
消費されない貴方の墓標へ。
ご破算で、願いましてはまた明日。
人に当たり前にある死や美しさを、 詩や文で紡いでいます。 サポートをしていただければ製作の糧になります。 是非よろしくお願いいたしますm(__)m