うつ病にてドロップアウト道中記 #7 弱い者は諦めるしかないのか。

かつての体験を一つ思い出し、芋づる式に思い出してこれを書きました。睡眠も食事も満足にできず、たった数日で5k以上の体重が落ちました。これを書いてどうしたいのか、正直自分でもわかりません。これを書くことで社会の何かが変わるなんて希望は全く持っていません。社会に対してそれだけの期待ももう持てなくなりました。ただ書くことで自分の重荷を少しでも軽くしたいだけなのでしょうね……。



私がまだ元気だった頃、務めていた会社でうつ病を理由に退職した知り合いが2人いました。1人(Aとします)は退職後、障害年金を申請し、受理されました。それからすぐにフリーで働き出し、フリーの収入と年金で月40万以上得ています。いい部屋に移り住み、遊びにお金を使い、会社で働いていた頃とは比較にならないほど毎日が楽しいと笑っていました。もう1人の知り合い(Bとします)は、障害年金申請しましたが受理されませんでした。ツテを頼って頼み込み、なんとか働かせてもらえる会社を見つけました。またある分野に造詣が深く、その知識を買われて、退職した会社からもたびたび非常勤のアドバイザーとして仕事を回してもらっていました。

2人はそれなりの時間一緒に働いていたこともあり、また、同じ時期に同じ理由から退職したため、プライベートでよく交流していたようです。私はAとはそこまで親しくしていませんでしたが、Bとは気が合ったのか休日などで会うこともありました。

ある日、AとBとがプライベートで会った時、Bはその時、非常勤アドバイザーとして関わっていたプロジェクトの悩みをAに打ち明けたそうです。その翌日、Aは会社に「自分はBから現在進行中のプロジェクトの内容を話された。Bは部外秘の情報を簡単に口にするから重要な仕事を回さない方がいい」と連絡しました。それを受けて会社はAに礼を言い、部外秘の情報を漏らしたBに対して信用できないとの理由で依頼していた仕事の一切を打ち切りました。

収入の一つを失ったBはAに対して詰め寄ったそうですが、Aは「社会のルールを守らないお前が悪い」の一点張りで全く取り合わず、「自分の失態を認めず他人のせいにするなんて、お前がそんな奴とは思わなかった。二度と会いたくない」と絶縁宣言したそうです。

その後、女手一つで育ててくれた母親が癌になってしまい、看病と自分の闘病で参ってしまい、ツテを頼って雇ってもらった会社にも出勤できない日が目立つようになったようです。これからどうしたらいいのか、と、頭を抱えるBの姿が今も印象に残っています。

その後、私も病気になってしまいましたから2人がどうなったのかはわかりません。Bが部外秘の情報を外に漏らしたのは悪いことでしょう。ですが、今後の生活に絶望するほどの境遇に追い込まれるのが正しい報いなのでしょうか。反対に、医者や行政を騙し、年金を受け取りながら外注で仕事をこなし、金銭的な不安が一切ないAはなぜ何の処罰も受けずに生きられるのでしょうか。


私はかつて良い人間とあまり言えない人との付き合いがありました。ある時、Cの携帯に着信があったそうです。相手はCの悪い仲間で、内容は「今、みんなで女を連れ込んだからお前もこないか?」というものでした。Cも女癖が悪かったですがそういうことには興味がなく、断ったそうです。何ヶ月も経ってから飲み会でことの顛末を聞いたそうです。私は又聞きなのでざっくりとしか分からないのですが、被害にあわれた女性の家族か恋人に襲われ怪我を負わされたそうです。襲ってきた相手を警察に訴え、百万円近い金額を慰謝料として請求したそうです。この話自体、本当にあったのかどうか、私にはわかりません。加害者にも被害者にも一切の面識がなく、真実だと証明する証拠も、嘘だと証明する証拠も私にはないからです。

ただ、この件とは違う話でこういうことはありました。私の同級生で10代の半ばから急に素行が悪くなった人間がいました。彼は学生時代に女性を乱暴して少年院に入れられました。20代になった時、その人間は裕福な家の女性と結婚し、円満な生活を今も続けています。


私は昔、ある女性と知り合いました。彼女とは最初から妙に気が合いました。お互いに悩みを打ち明けられる仲になるまでそうかかりませんでした。知り合ってから2年が経った時、真剣な、そして暗い表情の彼女から打ち明けられたことがあります。「私は幼少期から10代半ばまで、血の繋がった家族から性的暴力をうけていた」と。私は衝撃を受ける以前に心が麻痺してしまいました。10年以上、家族にも言えず、誰にも言えず、初めて私という人間に自分の過去を打ち明けてくれた彼女は泣いてませんでした。目にいっぱい涙を溜めて口元を手で覆っていました。嘔吐するのを堪えて。私にできることは? 何をすれば彼女の助けるなるのか? そう聞いた私に彼女は「この話を聞いてもし私のことを嫌いにならないでくれるなら、今まで通りに接して。気遣ったりせず、遠ざけたりせずに。ただ私が昔を思い出して辛くなったときは会ってくれたり、電話したり、私の相手をして欲しい」と言いました。

彼女のために他にできることはないのか。また、彼女の重大な過去を私1人で背負うこともできなかったからでしょう。私は必死になって相談窓口や、性暴力被害を扱う医療機関などに片っ端から当たりました。そのどれもが、本人以外の話では信憑性がない。本人が直接言ってこないと対応できないという回答でした。

私以外の人間に過去を知られるのを嫌がる彼女をなだめ、説得し、私が同行することを条件に専門の相談センターに行くことを了承してくれました。

結論から言って、そのどこもが全く役に立ちませんでした。いつ、どこで、誰から、どのような被害を受けたのか。根掘り葉掘り聞いてきて、「辛かったね」「大変だったね」と言う。だけど、「10年以上も昔のことで、緊急性がないからうちでは対応できない」。回答はどこも一緒。せめてそう言うことを専門に扱うカウンセラーの紹介を、と言っても、「そう言うことを専門にするカウンセラーは正直いない」と。

無意味に過去を掘り返されるたび彼女は傷ついていき……。

彼女の力になれなかった、より言えば彼女を傷つけるだけだった。その一点で、センターの人間と私は同じなんだと思います。彼女を助けられなかった無意味で無価値な存在です。

私はどうすれば良かったのか。ただ彼女の負った傷、悲しみと辛さを一緒に背負って耐えることの勇気がなかった私は……。


本当に助けを求めているのに助けてもらえない人。

助けを求める声さえあげられない人。

そういった人たちを救い上げられる手が、今の社会にはないと感じます。

昔に比べて支援や保証は増えたのでしょう。だけど、それを利用するのは助けてと言える人、自分が苦しいと訴えられる人、そして自分が被害者だと演じられる人だけではないのでしょうか。

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