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ものをつくる「狂気」

こんにちは。itosino(いとしの)の刺繍作家Eda Maki(えだ まき)です。

今日は、最近わたしがつくっている刺繍ジオラマというものについて。
どんな作品なのかと、それをつくる理由をお話したいと思います。

■刺繍ジオラマとは?

そもそも刺繍ジオラマとは何かというと、
刺繍糸でつくるジオラマ(ミニチュア)作品のことです。

ベースになるのは、itosinoがオリジナルで制作している「いとしのもりのものがたり」というお話。
主役は小さな刺繍の動物たち。
1匹のこぎつねが刺繍の森をかけまわる、この物語のワンシーンを、ジオラマというカタチで再現しています。

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こちらは、先日のnoteでもご紹介した「春の森」の作品。
例えばこの桜の木。
この木は、幹も花の部分も、ぜんぶ刺繍糸を加工して作っています。

ふわふわした花のところは、刺繍糸を細かく切ってほぐしたもの。
幹の部分は段ボールをベースに作った土台に、何色かの糸を幹の流れに沿って貼り付けています。

「糸しの森」をつくりあげるために、できるだけ他の素材は使わず、刺繍糸でつくってみる。

このジオラマを見たある友人からは、ちょっと面白いコメントをもらいました。

「桜の木も刺繍糸でつくってるの?!」

「 狂 気 ! 」


この「狂気!」の一言
実はこれがめちゃくちゃ嬉しかった。

■ものをつくる「狂気」

わたしは、ものづくりって「狂気」をもとにできている、と思っています。

普通ならいらないような尋常でないこだわりとか、愛情とか。
機械でつくれば一瞬でできるのに、手作業で刺繍や編み物をつくるのもそう。

探究心、向上心、自己満足、つきつめるそれらをまとめて「狂気」
ものづくりのベースにあって、なくてはならないもの。

そのベースになる言葉をコメントとしてもらえたのは、わたしにとってはちょっとニヤニヤするような、嬉しい出来事でした。

■糸を刻むという狂気

実際、刺繍糸を刻んでいる姿は、けっこうおかしな様子だと思います。

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例えばこの海のシーンでは、土台の砂も刺繍糸で作っています。
刺繍糸を細かく刻んでつくっているのですが、刺繍糸はそのまま刻むとふわふわの綿のようになります。
桜の花などはこれがいいのですが、砂はふわふわだと困る。

そこで、まずは刺繍糸を1本ずつボンドにつけて固めます。
それを何色かつくって、ハサミで細かく切っていけば、砂のようなサラサラとした細かい粒の出来上がりです。

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この、途方もなく時間がかかるけれど、地道で新しいものを作る「狂気」の作業が私はとても楽しくて仕方がありません。

■狂気を取り戻せ

ブランドをしていて、「商品」とばかり向き合っていると、そもそものものづくりの楽しさから心が離れていってしまうことがあります。

だから時々、とことん「作品」と向き合う時間をつくる。
つくりたい!って欲求だけで、気が狂ったようにただ走ってみる。

刺繍ジオラマという作品は、itosinoの物語を伝えるもの以上に、ものづくりに不可欠な「狂気」を取り戻すためのものです。

寝る時間が惜しくて、食べる時間が惜しくて、ただただ、つくっていたくて。

ものづくり以外にかける時間が、全部もどかしくなるようなあの感覚を忘れたくなくて。
「商品」としての価値は無視した、こんな自由に突っ走った作品をときどきつくってみてます。

突っ走った先がどこに行き着くのか、まだわかりませんが。
ただ、つくって楽しい!に全力を注いだ作品がどんな完成を迎えるのか。

その狂気の道のりを、みなさんも一緒に楽しく見守ってもらえれば嬉しいです。


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