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顧客はめんどくさい彼女

急に味が落ちた店に「マズくなったね。」といえるか

昔からランチによく行っていたアジア料理店があった。
量も味もベストで、メニューも豊富。飽きるところがなく、行くところに困ったらそこに行くといった頻度で、週に数回通う常連だったのかもしれない。

ところが!
ある日突然、そう、それは突然に味が変わってしまったのだ。
まずい。端的にマズい。

たまたま頼んだメニューだけがマズかったのかも、とお店を信用したい一心で再訪し、別のメニューを頼んだ。
やっぱりマズい。これはマズい。

未練がましく数回通っただろうか。私は悟った。この店はもう私の好きだったあの店ではないのだ。
メニューも値段も変わらないのに、味だけが変わっていた。ラディカルに。
多分、シェフが変わったんだろう。

別に店員と親しいわけでもないので、黙って食べて黙ってお金を払って退店した。
その後は、私は黙ってその店には行かなくなってしまった(どうでもいいけど、普通の店で店員と親しくなれる人、尊敬します。あたしゃあんなコミュ力もってない。)。

以上が数年前の出来事なのだが、なんでこんなことを思い出したかというと、FBで友人が似たようなこと言っていたから。
同じ経験をした人は多いのだろう。

そんなとき「マズくなったね」なんて店に言えますか?

少なくとも私は言えないし、世の中の99%も同じじゃないかと思う。
直接はもちろん、アンケートにも書けない。
人間、むやみに人とハレーションを起こすようなことはしたくないはずだから。

業績悪化の原因の追及はむずかしい

さて、客がこのような行動を起こした時、店からはどう見えるか。

よくわからないけど、だんだん客足が鈍っている。
いつも見る顔が最近は来ない。
来ない理由がわからない。
うちに何か問題があるのかもしれないし、なにか客側に事情があるのかもしれない。
しばらくしたら来てくれるのかもしれない。
このままだと大変なことになるが、原因がわからない。
原因を探ろうとアンケートを実施してみても、明らかにうちに気を使った、「大変満足」「また来たい」っていう回答ばかり。

値段が悪いんだろうか、価格が悪いんだろうか、店員の態度が悪いんだろうか、立地が悪いんだろうか、天気が悪いんだろうか、などいろんな仮説を立てるも、結局よくわからないので対策が立てられない。

客は答えを知っている。

客(私)が正直に答えれば「味です」ってすぐに正解がわかるのに、客は教えようとしない。

めんどくさい彼女に「ねえ、自分のどこが悪かったか分かってる?」と試されて、的外れな答えをいうと「全然分かってない。」と口を聞いてくれなくなるのと似てるのかも。

結局、仮説を一つずつ検証していくしかないのだろう。客は答えを知ってるのに。

仮説の検証って、あれもこれも考えて一気に変えると、うまくいかなかった時、あるいはうまく行った時も、結局何が原因で結果につながったのかよくわからないので、やっぱり一つずつ地道にやっていくしかない。客は答えを知ってるのに。

意識して変えるのであれば発信すべし

串カツ田中が全面禁煙にして業績が上がったというニュースがあった。
タバコの煙が苦手な私にとって、ありがたいニュースだし、今後禁煙の店が増えて欲しい(健康増進法が「増進法」という名前に反してだんだん後退していることに対してはゲンナリしている。)。

これなんかは、どういう結論になるかわからないけど禁煙にするという方針を決めて「全面禁煙化」宣言をした結果、顧客を選別できた例なのだろう。意識して変えるなら、変えることをアピールしないといけない。

でも、全面禁煙になった後も串カツ田中にはまだ行っていない。
なぜなら私は現金が嫌いだから。
そして、一つ課題を克服しても、まだ超えるべき課題があれば、その問題も顕在化しない。

こうしたニーズも(黙ってるけど)汲んでくれないかなあ。


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