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経営理念の考え方


2017年、神奈川県中小企業家同友会の経営指針作成部会を受講した。
その後、自分の中で自問自答を繰り返すことで、ようやく同友会のいう経営理念の考え方が腑に落ちてきた。裏を返せば、受講した当時は、経営理念そのものの考え方を本当の意味で理解をしていなかったということだ。
自分の備忘録も兼ねて、私の理解する経営理念の「考え方」を記したい。なお、あくまでも同友会のいう経営理念の「考え方」の私の解釈であって、自社の経営理念についてではない。この考え方を論評する趣旨でもない。
また、有料のプログラムなので、そのテキストを全部明らかにするようなことはしない。したがって、あえて前提などはすっ飛ばし、関係者以外に説明が必要な用語についても説明しない。分かる人だけ「ウンウン」と頷いてもらえれば本望である。

企業目的=企業の存在意義

経営理念の出発点として、まず、企業の存在意義を確認しなければならない。
(いきなり予断だが、最近、「パーパスマネジメント」という書籍が流行っている。直訳すると「目的経営」だが、ここでいう「パーパス(purpose)」とは「存在価値」という意味であると解説されている。)

企業は(自然人と違い)存在を世の中から認めてもらえなければ存在し得ないからだ。

世の中から認めてもらうということは、世の中で「役に立つ」(有益)と認めてもらうことだ。役に立たない(無益な)企業は衰弱死するし、害悪のある(有害な)企業は殺される運命にある。
(自然人は、存在価値を示さなくても「基本的人権」(人が人として生まれてきただけで認められるデフォルトの権利)があるされており、少なくとも現代において「役に立たない人間」に生きる資格はないとはされていない。)

企業の存在意義(「役立ち方」)を分析すると、
・雇用の受け皿 になること(人間性)
・社会の役に立つこと (社会性)
に尽きる。
それ以外の要素は最終的にここに集約されるか、「存在意義」とはいえない副次的なものであるはずである。

すべての企業はこの存在意義(企業目的)の実現を目指すことになる。

言い換えれば、
・中の人に認めてもらう(人間性)
・外の人に認めてもらう(社会性)
として、この段階では社会全体において補集合の関係になる。
(なお、「中の人」と「外の人」の境界は必ずしも明確に分かれているわけではない。業種業態によっては、中外の区分があいまいであったり、互換性があったりする場合もあり得る。この境界は、目的を整理するための「補助線」と捉えた方がわかりやすいかも知れない。)

企業は重要な経済のプレイヤーである。
価値を生み出して貨幣と交換し、さらにその貨幣を市場に流しつつ、(社員だったり他社だったりといった)新たな別のプレイヤーも育て上げることによって、初めて経済が拡大し、豊かな世の中につながっていくのである。


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ただし、外の人全員に認めてもらう必要まではない。
全員に認めてもらおうとすることでかえって存在意義がブレる、ないしは無くなってしまう可能性がある。そもそも不可能だし、目指すべきでもない。

そこで、認めてもらうべき範囲を決めることになる。これが顧客である。もちろん「今の」顧客に止まるものではない。
企業にとって、その存在を認めてもらうべき層が「顧客」である(ドラッカーは、企業の存在意義を「顧客を創造すること」のみに尽きると言っている。)。

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事業目的

では、どのようにこの存在意義を実現していくか。

それがまさに事業である。
企業は、事業を通じてその存在意義を実現していくわけである。
すなわち、事業は、企業目的実現のための手段である。その逆ではない。

社会=顧客に対しては、商品やサービスを提供して企業目的を実現する。
のみならず、こうした商品サービスを提供して利益を上げることで、中の人=社員の雇用を確保し、さらなる商品サービスを改良、開発することで事業そのものを強化して顧客に貢献するわけである。

つまり、利益のない事業は、企業目的実現のための事業ではない。
「商品サービスを提供すること」に加えて、「利益を上げること、利益をどう分配するかを決めること」は重要な事業の目的である。

経営者の器の話

私のイメージする経営者の器は次のようなものだ。

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底面に企業目的があり、そこに対して価値を注ぎ込むための筒が事業。事業の底面積を広くしたり、高くしたりして、器を広げていくことが経営者の器を大きくすることにつながるのである。

目的と手段

このようにみてくると、商品やサービスを世に出すことは、企業の目的たり得ない。企業目的実現のための手段である

同様に考えると、企業は事業をするために雇用をしているわけではないことになる。雇用をするために事業をしているのである。よーーく考えると非常に重い。
でも、同友会の労使見解の本に書いてあるのはそういう意味である。


経営理念作成部会にいると、全く異業種の社長たちの思いや悩みを聞くことができる。こんな機会は普通に会社経営をしているだけではまずないはずである。他社はこんな悩みを抱えているのか、とか、業種は違うけど悩みは同じなんだ、とか、得るものは非常に大きい。プライスレスと言っていい。
受けてないのにここまで読んでいただいた方は、ぜひ受講をお勧めする。得難い経験ですよ。

なお、ヘタクソな図はリアリティを追求した結果である。つまりわざとである。

#経営 #理念 #経営計画


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