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住み込みアルバイトは寂しい(デメリット)

 いつの間にか梅雨があけ、温泉郷も本格的にシーズン入り。連日たくさんのお客様で賑わうようになりました。

 シーズン前はお客さまが一桁の時も結構あったのですが、シーズンになるとそうはいきません……もちろん夏なので温泉シーズンというわけではありません。山に囲まれている温泉郷では、山登りのシーズンがはじまったのです。

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山登りはすごく好きなのですが、ブヨとクマが怖いです。

山登りのシーズンによく来るお客さま

 一年で一番忙しいとも言われている夏の山登りシーズンには毎日色々なお客さまがやってきます。まずは日本中からやってくる登山者と観光客。上級者向けの山はもちろん、初心者向けの山もありますし、登山ではなく散策を楽しめる有名な景勝地もあるので 登山はちょっと……というラフな格好の方でもすごく楽しめる場所なんです。

 そして日本各地からだけでなく、中国や韓国、ヨーロッパから山登りしにくることも。特に多いのが、中国や韓国からやってくる団体さんです。ツアーバスでやってきて、一泊して、山登って、何日かたってからまた帰ってきて一泊して帰国されることが多いです。同じツアー内容で毎週来られるので、添乗員さんやドライバーさんはもう常連さん。仲良しのドライバーさんもいます。みんな顔も覚えたし性格もわかってきたし、あだ名もこっそりつけました。
 話には聞いていたけれど、国によって特徴がめちゃくちゃあるんですね。この旅館にやってくる韓国さんは、ありとあらゆるご飯に持ち込んだコチュジャンをぶっかけます。だから食べ終わった後の食器を見ると真っ赤なことばかり。そして浴びるように酒を飲みます。日本酒よりも度数が高いアルコールを普段飲んでいるようで、平気で一升瓶を何本も空にしていきます……(そのうえで部屋で大量に飲む)そして帰った後の部屋には本場の辛ラーメンや焼酎が転がっています。すごく特徴的なお客さまたちです。

 最後にこのシーズンに現れるのは学校の登山教室やクラブの合宿。 三人用の部屋に六人とか七人とか平気で泊まることになるのでびっくりしました。でもまあ部屋でゆっくりするっていうか布団の上で遊んで寝るだけだしいいのか……
 ということは、学生時代に修学旅行でお世話になった旅館もきっといつもは数人しか泊めない部屋にぎゅうぎゅうに押し込んでなんとか泊まらせてくれてたんですね。きっとその時の旅館さん、準備が大変だっただろうなあ……
 そう、人数が普段の倍くらいになるので布団の準備(旅館中から布団を集めて部屋に入れる)やごはんの準備がめちゃくちゃ大変なんです。でも子供たちは布団も自分で準備してくれるし、食べ終わったら残飯をちゃんとまとめて食器もまとめてくれるので、多いわりにはそんなに大変じゃないな〜という印象でした。
 なんてったっていい子ばかりです。挨拶もしっかりしてくれるし、お味噌汁を運んだらみんなで手伝ってくれるし……子供たちにはお茶盆(急須とかお茶菓子とかが入っている箱)を準備しない代わりに廊下に麦茶を置いとくのですが、それの入れ替え作業にひとりであたふたしていたら 見かねた子が手伝ってくれるし……そんな感じでいい子ばっかりでした! むしろ元気出ました! 朝ごはんが5時半っていうんではじめての5時出勤だったけど! しんどかったけど!
 あと、廊下の隅に置いてある将棋で真剣に勝負している子供がいて、私も何度も見てしまった。みんなみたいに部屋で騒ぐのも楽しいだろうに、薄暗い廊下で将棋を楽しむなんて乙だなあと思ったのです。いいな。

 そんなこんなでいろんなお客様が来て楽しいのですが、仕事を覚えたためにやることが増えたこと・忙しくなってしまっていること・梅雨が苦手なので参ってしまい そこからいまいち脱出できていないことにより、精神的にも体力的にもしんどい日々が続いています。どのバイトもそうなのですが、仕事を覚えると責任は増えるし、気づくことが多くなるからやることが増えてしまうのです。自分の時間をちゃんと持つこと、休息を取らないとしんどくなるなあと思います。絵描き友だちの先輩はいなくなり、同級生の友達はいなくなり、ぽっかりさみしさを抱えています。友だちに会いたい、妹と姪っ子に会いたいなあという気持ちを抱えながら生活しています。寂しいので友だち各位、連絡をください。
 そう、さみしい。住み込みアルバイトは、ちょっとさみしいアルバイトでもあります。

住み込みアルバイトのさみしいこと

 住み込みアルバイトに出発する前、わたしを一番引き止めたのは前職のおにぎり屋さんの店長でした。辞めないですむように好条件をいくつも出してくれて、住み込みアルバイトのメリットとデメリットまで出してくれて、どうしたら東京で生活できるかまで計算してくれました。必死さと愛を感じました。
 そしてその時店長が出した主なデメリットは、出会いがない・遊ぶ場所がない(することがない)・自由がない ということでした。

 今までいた場所は東京、そして今いる場所は岐阜の山奥。極端に違う場所で住み込みアルバイトをしている今、感じているさみしいことをまとめてみます。

①出会いがない

これは本当だと思います。人との出会いはもちろん、びっくりするほどカルチャーとの出会いがない。流行のかけらもない。ここにはタピオカのタの字もありません。
 まず、(比較対象が東京っていうのがちょっとあれなんですけど)東京にいた時と違って展示には行けないし映画にも行けません。当たり前だけど友だちには会えないし、みんなの近況はSNSでしか知ることができません。端から端まで歩いても30分かからない小さな温泉郷ですので 人間関係はとても狭く、新しくて面白いことはあまり感じられません。若い人たちが新しく盛り上げようとしている場所ではなく、どちらかというと、昔からいるみんなでなんとか維持していこうと頑張っている……そんな感じに思える温泉郷です。
 新しい風が吹くこともなく、温泉郷のなかでぐるぐる巡るひとたち。古くから残る文化財や旅館。外から来る人たちは古いことを求めているのでそれで成り立ってるんだなあ……この温泉郷の時間はきっと止まっていて、ここを取り囲む山と滝と川だけがゆっくり明日へ向かって流れているんだなあ〜……
 疲れすぎてそんなことを考えてしまうこともしばしばです。

②遊ぶ場所がない

 これは、その人がどんな遊びが好きかによります。自然にはたくさん会えるのせ、自然が好きな人にはもってこいです! 散歩コースは自然だらけ。でもそれも飽きる人は飽きるだろうし、わたしはかなり面倒臭がり屋なので行くまでに時間がかかります。友だちとおしゃべりしながら散歩をするのは好きなのですが、毎回ひとりだと寂しいし、気持ちが森に溶けていくので結構疲れます。自然は背景であることが一番気持ちいいのかもしれません。
 ところでみなさんはどんな遊びをするんでしょう。 ゲーセンとか映画とか飲み屋がないとしんどい…っていう人には確かに田舎の住み込みアルバイトは向かないと思いますが、私は普段から友達と散歩したり探検したりしているので今のところ大丈夫です。 ただ、展示を観にいけないことだけが本当に悲しいです……

 ちなみに私のお気に入りの自由時間の過ごし方は、森を歩くことと部屋で寝ることアイスを食べることです。あとはこの温泉郷一番のおしゃれカフェでパフェを食べたりしています。めちゃくちゃ美味しいのに安いので、毎週のように通ってしまう……

③自由がない

 たしかに、気軽にコンビニに行ける自由はありません。(車で40分かかるから)バスは夕方でなくなるし、次の日の朝も早くから仕事なので 夜遅くまで遊びに行くこともできません。でもそれって、明日仕事がある人はみんな同じだと思うので、そこまで不自由には感じません。
 ただ、選択肢が少ない、という意味では非常に不自由ではあります。気持ちはいつでも自由で楽しくやっていくことはできるけど、選択肢は本当に少ないです。


 とにかく田舎の住み込みバイトは、出会いがない&することがない と感じやすい場所だと思います。それでもわたしがやっていけるのは、旅館のロビーに古いピアノがあったから。絵を描いて、外の人と繋がることができるという自信があったから。遊ぶ場所がなくても絵はかけます。気力がなくて描けないことばかりですが、もう少しがんばりたいです。

 でも会いたい人たちがいるので、それだけがさみしい。早く帰りたい気持ちと、暑くて忙しい東京には帰りたくないぜ〜という気持ちが入り混じっている八月です。


 色々なお客さまがいて毎日楽しいよ〜

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