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大好きな場所からちょっと離れてみたいくつかの理由

 一年間滞在することのできるワーキングホリデービザを取得して、ニュージーランドにやってきました。実はニュージーランドに来たのは初めてではなくて2回目。 20歳のとき、10日間だけ旅行したことのある国です。初めての海外で、初めての一人飛行機でした。その時感じたこの国のいい雰囲気、空気。たくさんの人の優しさとあったかさ、どんな人でも受け入れてくれる小さな街たちと大きな自然にとても惹かれて、またここに来ることを決めました。
 はじめての海外での生活を、ここにすることに決めました。


 さて、どうして日本から飛びたしたのかというと、いろんな理由があります。

 一番大きな理由は、より自分が自分でいられる場所を探したかったから。(これはわたしの好きな方が言っていたことばで、見た瞬間にぴったりだなあと思ったので借りています)わたしが生きにくいと感じる日々から少し遠くに離れてみたかったからです。

 でも、こうやってわたしは生きにくいなんて大袈裟なことを言っているけど、本当はそんな日々ではありませんでした。
 いい友達がたくさんいて、成長が楽しみな姪っ子と大好きな妹がいて、助けてくれる大人たちが見守ってくれていて、居候させてくれる家や働き先もあって、好き勝手やらせてくれるバイト先があって、わたしはとても恵まれていた。本当に恵まれていたんです。

 だけどやっぱり、このままじゃ駄目だな〜と思っていた。このままダラダラ絵を描いてバイトをして遊んで暮らす日々を続けたくはなかった。生きてるんだから学び続けたいし、成長しつづけたかったのです。とはいっても同級生たちのように就職するという選択もできず、だからといってフリーランスイラストレーターとして頑張るという選択もしたくなかった。今からいっぱい絵を描いて、一生のほとんどをじっと机に向かって絵に費やすなんてできなかった。(わたしは絵を描くことはできるけど、才能はない)
  わたしの目標はあくまで、「きれいな里山の麓で畑をやりながら絵を描いたりピアノを弾いて暮らす」こと。したいことはたくさんあるけど、最終的にたどり着きた場所はそれだけなんです。その場所に向かうために、今何ができるかな、何をしたらいいかな……と、いつも考えているんです。


 東京にいればたくさんのカルチャーに触れることができるけど、お金を稼いでは消費する日々。それが楽しかった時もあった(……かな? なかった気もする)けど、まあとにかくわたしはとっくに飽きてしまっていた。もちろん映画を見て、美味しいものを食べて、絵をたくさん見ることができるのは最高に素晴らしく、とてもよかった。友だちに気軽に会えて遊べる日々はとても最高だった。どんな人でも受け入れてくれる文化はとても居心地のいいものだった。
 そうして東京と密着した生活を送ること四年。結局、東京は時々来る場所としては最高な場所だけど、住んだり働く場所としてはちょっとわたしには似合わないな〜という結論が出てしまった。東京にいながら小さな自然を大切にして、たくさんの人と楽しく過ごす日々には、もう充分満足してしまった。そう、いつの間にかお腹がいっぱいになっていた。

 だから、次の場所に行ってみようと思ったのだ。わたしの目標に少しでも近づけることのできる場所。思いっきり深呼吸して気持ちよく羽を伸ばしながら生活できなるところ。裸足で歩いていても奇妙な目で見られないところ。

 そんなとき、その気持ちを後押ししたのは他でもない、iPadだった。(これは本当に幸いで、多分わたしはiPadがなかったら未だに日本にいたかもしれない)iPadがあれば絵を描けるようになったことは、いままで以上にわたしのフットワークを軽くした。電波があれば世界中どこでも行けるじゃん! という気持ちになっていた。今までのツール、パソコンとペンタブのセットは旅には重すぎるし、しっかりした机も必要だ。パソコンとペンタブを運転席で広げて気軽に絵を描く事はで難しい。でも、iPadがあればできる! どこにいても何をしてても絵が描けるのだ。すごく嬉しかった。次はどこに行こうかな? と考えたときに、一気に選択肢の幅が広がった。


 そしてわたしは海の向こうに行く、という選択肢を思いついた。わたしの周りにはワーホリ経験者が何人もいたし、ニュージーランドで過ごした十日間の間に何人ものワーホリ人と出会って話をたくさん聞いていたから、ワーホリはすごく短かなものだったのだ。(わたしはなぜかヒッピー達の川暮らしに加わっていたんだったなあ……初めての海外で…)

 働いても働かなくてもいいし学校に行っても行かなくてもいいし、とにかく一年好きに過ごしていいよ〜という最高のビザ・ワーキングホリデービザを取得できるのは30歳まで。そしてわたしは今22歳。色んな国に行くことはいくつになってもできるけど、ゆっくり長期間滞在することが可能な期間は、きっと思ってるより長くない。だったら今すぐ行ってみよう。ダメだったら諦めて日本で楽しく過ごそう!

 そうしてわたしは海外に行くことを決めた。通っていたイラストスクール・青山塾が終わり、借りていた一軒家の契約が切れた2019年4月のことだ。
 守るもの(予定、約束、家族、おうち)はなんもないし、ついでにお金もないけど時間と元気に動く身体はある。じゃあ、いつか守りたいものができて動けなくなる前に、せっかく動ける今行かないともったいない。ずっと行きたかった海外に行くことをやっと決めた。全部なくなって、やっと決めることができた。

 だけど本当にお金がなかったから、4月に日本を出ることを決めたけど結局出発は11月。ニュージーランドに決めたのも9月くらいで、色々ぎりぎりだったなあ。ニュージーランドに行こう、と決めてはいたもののオーストラリアとカナダも候補にあって、すごく悩んでいたんです。日に日に高くなっていく航空券の値段に怯えて、ええい、もうとっちゃえ! の勢いで航空券を取ったのを覚えています。(航空券を取ってから慌ててビザ申請をしました。)
 そんなこんなで住み込みアルバイトでお金を貯めたり、日本でやらなきゃいけないことをこなしていたらあっという間に半年経ってしまいました。でも、決めてから半年くらいは必要だと思うのでよかったです。自分も周りもびっくりしちゃうので……気持ちの整理が必要だったので。

 とはいえ出発前の、またねラッシュは本当に本当に寂しかった。たくさんの友だちがおうちに呼んで泊めてくれた。一緒に遊んでくれた。出発前なのにもっと話したい! と思う新しいすてきな人たちに会うこともできました。
 出発の日は、大好きなふたりの家で起きたんだったなあ。夜遅かったのに朝からわたしの好きな料理を作ってくれて、おしるこを作ってくれて、おにぎりを作ってくれて、たくさんのおもたせをくれた。わたしはさみしくてしょうがなくて、でも嬉しくて、ありがとうでいっぱいだった。
 出発の前の日も、大好きなひとの家で起きたんだったなあ。普段はわたしより先に家を出ていく友だち。いつもはわたしぐうぐう寝てるんだけど、その日はなんか起きちゃって、でもさみしいからベッドの中でじっとしてた。早起きして仕事の準備をしている彼女のことを眺めてた。さみしくてしょうがなくて起きたくなくて、寝てるまんまハグをしてもらった。前日の夜、仕事終わりの彼女と近所のスーパーで待ち合わせして、確か一緒におでんを食べたんだっけ。遅くまで話をしてたんだったなあ。そういえばその日の昼間は、絵を描く大先輩達と公園でサッカーとフリスビーしてた。いつもの大好きな二人と、はじめましての大先輩たち。みんな素敵な方で、すごく楽しくて、もっと話たい遊びたい知りたい聞きたいって気持ちでいっぱいだった。
 そうだ、出発の前の前の日も幼なじみで同級生で大好きなパリピズと深夜まで鍋をつついて川の字になって寝たし、前の前の前の日も鍋をつついてから夜遅くまで布団の中でおしゃべりしてた。子供みたいに眠れなくて困ってる大好きな子と一緒に眠ったんだった。
 そう、わたしにはたくさんの大好きな人がいるから、とてもとても寂しかった。

 大好きな人たちのいる場所を離れるのはとてもさみしい。一緒にいれないのは寂しい。だけど、また会えたときにいままで以上にすてきな人になっているその人たちに会えるのが楽しみだし、わたしも同じようにもっとすてきな人になっていたいから、ここにいたら出会えない新しい場所にいくことを決めたのだ。


 といってもわたしは出不精で面倒くさがり屋なので意気込みとかはあんまりないです。今もふつうに日本と同じようにのんびり暮らしてます。
 気持ちよく過ごしていたら出会えたものを大切にして、なんでもないけどたのしい日々を過ごしていけたらいいなという気持ちと一緒に。

 っていうこと、そのうちまた書きたいな。

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