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朝からカツラが飛んでしまい

今日は風がほんとうに強かったでしょう。それで、いやだなあ~って朝から思っていたんです。それで一応私も気を付けてはいたんですがね。スポーンっと飛んでいっちゃって、カツラが。

ええ、まあ、そうなんです。もう10年になりますか。昔はいまほど、なんですか、技術が進んでいなくてね。パチッパチッとクリップで留めるやつでして。それでも当時50万円ほどしましたか。ハハハ、まあ、男の見栄みたいなものがそのころはまだあったんでしょうねえ。それ以来、外すタイミングを失って今日までですよ。

でも今日満員の駅でスポーンとね。飛んでいっちゃって。それでわたしなんだか晴れ晴れとしましてね。もう後ろも振り返らず堂々と歩いて帰ってきましたよ。いや~あんな清々しい気分は久しぶりだったな。

妻ですか? ええ5年前に出ていきました。原因はまあ、私がお馬のほうが好きでして、給料やらボーナスやら全部お馬につぎ込んじゃって借金の方が少し。あと小指の方も好きなもんでそっちにもお金がね。ハハ。カツラでお馬に風俗通いじゃあそらもう逃げられますわね。

今は毎日ブラブラしています。公園に行けば似たもの同士がいるもんで、日がな一日将棋を指したりしてね。まあ親の遺産がちょっとはあれなもんで、食うには困らない程度には。将来は喫茶店でもやろうかな、なんて。気の合う者同士が集まる秘密の隠れ家的な。

はい!ええ!いやいやこちらこそどうもありがとうございました。まあなんとかボチボチやっていきますよ。カツラも取れて心も体も軽くなっったことですしね。かんばるでえ!なんて。ハハ。娘がね、なんですか、ピンク系の店でで働いているらしいんですわ。こんど行ってみようかな、なんて。ハハ。カツラがなけりゃ親父だって気付かんでしょう。ふふ、冗談ですよ。

ええ、まあ、元気でやっていきます。ここのコーヒー代はお願いしてもいいですか? すんません。コーヒーゼリーまで食べちゃって。前歯がね、ほら、ほとんどないでしょう。柔らかいもんしか食えんくてね。ごちそうさまでした。ほな。

※フィクションです



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