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時事からみる出題予想~株式分割

皆さん。今日は,伊藤塾講師の蛭町です。直前期は,出題予想論点を軸に大胆に学習対象を絞りこみ,精度の高い知識を確保するのが理想となります。

出題予想は,登記の専門雑誌や新聞などの公表されている情報から社会,経済,実務の動向を把握し,過去問から分析・把握した出題の手口がどのように変化するのかを想像して行います。

出題予想に役立つ登記の専門雑誌や新聞などの情報のうち,今日は,少し前の記事ですが,日本経済新聞の2022年11月7日の記事を紹介します。これは,最小投資単位が大きな「値がさ株」について,東京証券取引所が単位の引き下げを求めたため,株式分割されることを期待して活況を呈しているというものです。

知ってのとおり,政府の方針は,「貯蓄から投資へ」とであり,ゼロ金利でも資産を増やすには,日本の家計資産(約2000兆円)の半分を示す預貯金を,株式投資信託にシフトさせるしかありません。この転換は,企業価値の向上が個人にも及ぶ好循環をもたらすことが期待され,少額投資非課税制度(NISA)の拡充が予定されています。そこで,人気があり値がさ株となる任天堂,ニトリなどの株式へ,より投資しやすくしようとするものです。

令和4年には,単元株式の廃止が出題されており,これとの関連性もある株式分割は,十分出題予想論点となります。

株式分割は,過去5回出題されていますが,大事なのは会社法が施行された後の平成18年と平成31年の出題です。

平成18年は,株式分割と同時に行う発行可能株式総数,単元株式の減少又は廃止という定款変更を株主総会の決議以外で行う例外であり,平成31年は,吸収合併の前提としての株式分割と同時に行う発行可能株式総数の増加変更でした。

また,株式分割そのものではないですが,比較して押さえるべき出題が,平成30年にありました。それは,株式無償割当が自己株に割当ができず,公開会社に移行する際の4倍ルールが満たせず,瑕疵論点となる出題でした。

この出題の手口を考えれば,株式分割の出題予想論点としては,①株式分割に伴って単元株式数を増加させる変更,②分割と同時の発行可能株式総数が分割比率内であるが,公開会社の4倍に満たさず無効となる出題,③公開会社に移行するに際して自己株式のある会社で4倍ルールを満たすために株式分割を行い平成30年の株式無償割当と異なり適法となる出題が考えられます。

株式分割により少額投資家が株式を買いやすくなり,これが日本の株価の維持に寄与させたいという図式を考えれば,株式分割は,要注意の登記となります。

伊藤塾司法書士試験科講師 蛭町浩

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