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北谷馨の質問知恵袋 「株券提供公告の要否」に関する質問

Q:譲渡制限の定めの設定の登記において、株券を発行していないのに、「株券の不発行を証する書面」を添付していない解答を見ることがあります。なぜ添付不要なのでしょうか。

今回は、基本的ではありますが、非常に質問の多いテーマです。
 会社法や商業登記法では、「場合分け」が重要です。
株券提供公告については、以下の3つに場合分けをすることができます。

①株券発行会社で、現に株券を発行している場合
実体上:株券提供公告を要する。
添付書面:「株券提供公告を証する書面」を添付する。

②株券発行会社で、現に株券を発行していない場合
実体上:株券提供公告は不要。
添付書面:「株券の不発行を証する書面」を添付する。

③株券発行会社でない場合
実体上:株券提供公告は不要。
添付書面:不要。

 質問の内容は、②と③の「場合分け」ができていないものになります。
株券発行会社とは、株券を発行する旨の定款の定めがある会社のことです。株券を発行する旨は登記事項なので(「株券を発行する旨の定め 当会社の株式については、株券を発行する」のように登記される)、登記上、「①② or ③」の区別は明らかになります。
つまり、「株券を発行する旨の定め」の登記がされていない会社は、「③株券発行会社でない場合」であることが明らかです。

 「株券を発行する旨の定め」の登記はされていない
 ↓
株券発行会社ではない
 ↓
よって、株券提供公告は不要 

これが登記官に明らかなので、「株券の不発行を証する書面」は必要ありません。
 
一方、「②株券発行会社で、現に株券を発行していない場合」は、現に株券を発行しているかどうかは登記官には分からないので、添付書面で立証する必要があります。
 

「株券を発行する定め」の登記がされている
 ↓
株券発行会社だ
 ↓
よって、株券提供公告が必要なはずだ
 ↓
しかし、現に株券を発行していないから、株券提供公告は不要である
 ↓
「株券の不発行を証する書面」を添付して立証する

 会社法・商業登記法では、様々な場合分けが重要になります。
「公開会社or非公開会社」
「取締役会設置会社or非取締役会設置会社」
「大会社or非大会社」
「単一株式発行会社or種類株式発行会社」
「現に2以上の種類を発行している種類株式発行会社か否か」
「株券発行会社or非株券発行会社」
「現に株券を発行している株券発行会社か否か」
「第三者割当てor株主割当て」
等々。
 
面倒でも、この「場合分け」を丁寧に学習していくことが、会社法・商業登記法を得意とするためのコツとなります。


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