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北谷馨の質問知恵袋 「創立総会の決議要件」に関する質問

今回は、「創立総会の決議要件」に関する質問です。

Q:「当該設立が募集設立である場合において,定款に設立時役員の定めがないときは,設立の登記の申請書には,議決権を行使することができる設立時株主の議決権の過半数を有する設立時株主が出席し,出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上の賛成により設立時役員が選任された旨の記載がある創立総会の議事録を添付しなければならない。」→「誤り」
この問題が誤りである理由がわかりません。

創立総会の決議要件(会社法73条2項)は、実力のある方でも意外と曖昧になりがちなところです。会社法の中でも、トップクラスで質問が多いところです。

上記の問題文の記載だと、「株主総会の特別決議」と同じ要件になってしまっています。
創立総会の決議要件と、株主総会の特別決議では要件が異なるため、「誤り」となります。

株主総会の特別決議(会社法309条2項)は、ざっくり言えば
「①議決権の過半数が出席」
し、「②出席した中の3分の2以上の賛成」必要

です。一方、

創立総会の決議は、
「①議決権全体の過半数が賛成」し、かつ、「②出席した中の3分の2以上の賛成」が必要

です。
一見ほとんど同じですが、当てはめとしては大きく異なってきます。

例えば、総議決権が100個で、そのうち出席した議決権が60個だとします。
・株主総会特別決議は、まず「①議決権の過半数が出席」なので、51個以上の出席が必要です。今回、60個出席しているので、①はクリアです。
次に、「②出席した中の3分の2以上の賛成」なので、出席した60個の3分の2以上の賛成、つまり40個以上の賛成が必要です。

・創立総会の決議は、出席した数に関係なく、「①議決権全体の過半数が賛成」していることが必要なので、100個の過半数=51個以上の賛成が必要です。
かつ、「②出席した中の3分の2以上の賛成」も必要なので、出席した60個の3分の2以上の賛成、つまり40個以上の賛成が必要です。
この①②両方の要件を満たさないとダメなので、結局、51個以上の賛成が必要になります。

もう1つ例を見ます。
総議決権が100個で、そのうち出席した議決権が90個だとします。
・株主総会特別決議は、まず「①議決権の過半数が出席」なので、51個以上の出席が必要です。今回、90個出席しているので、①はクリアです。
次に、「②出席した中の3分の2以上の賛成」なので、出席した90個の3分の2以上の賛成、つまり60個以上の賛成が必要です。

・創立総会の決議は、出席した数に関係なく、「①議決権全体の過半数が賛成」していることが必要なので、100個の過半数=51個以上の賛成が必要です。
かつ、「②出席した中の3分の2以上の賛成」も必要なので、出席した90個の3分の2以上の賛成、つまり60個以上の賛成が必要です。
この①②両方の要件を満たさないとダメなので、結局、60個以上の賛成が必要になります。

この違いは、しっかり確認しておいてください。

「創立総会の決議要件」は、受験生であれば、必ず学習する内容のはずです。しかし、出題されると、差がつくところです。

「差がつくのは、マニアックな知識ではなく、基本知識の正確性」であるということを強調しておきたいと思います。



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