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北谷馨の質問知恵袋 「共有物分割の登録免許税」に関する質問

今回は、「共有物分割の登録免許税」に関する質問です。

Q: 「共有物分割」による所有権の移転の登記の登録免許税は、登録免許税法別表第一.1(2)ロでは1000分の4とされているのに、実際には1000分の20で計算しているようです。どういった場合に1000分の4が適用されるのでしょうか。

共有物分割を原因とする所有権移転登記の税率は、分筆登記と共に共有物分割の登記を申請する場合で、かつ、共有物分割前と共有物分割後の資産価値が同等以下の場合にのみ、1000分の4となります(登免税17表参照、登免税施行令9、平成15.4.1民二1022号)。

昔は共有物分割はすべて1000分の4だったのですが、脱法行為が横行したので、これを防ぐために、一定の場合だけ1000分の4になりました。
脱法行為とは、本当は売買でA→Bに移転するはずなのに、登録免許税を安くするために、持分の1%だけA→Bに移転して、AB共有にしてから、共有物分割で残りの99%をBに移転させるというものです。
売買なので本来なら登録免許税は1000分の20だったところ、上記の方法によって、ほぼ1000分の4にすることができてしまいます。
このような悪用を防止するため、共有物分割で1000分の4になるのは、土地を分筆した一定の場合に限ることになりました。

一見すると計算がややこしそうですが、やりたいことは簡単です。

例えば1000万円の甲土地をABが2分の1ずつ共有していて、これを共有物分割をしてA単独所有にするのであれば、B持分の500万円はAに移転しています。
Bが有していた500万円の価値がAに移転しているので、売買等による移転登記と同様に1000分の20になります。

一方、共有物分割をして、甲土地を2つの土地(500万円の乙土地と500万円の丙土地)に分けたうえで、乙土地をAの単独所有丙土地をBの単独所有としたのであれば、結果、Aが有している価値とBが有している価値はそれぞれ500万円のままです。
この場合は乙土地と丙土地の持分移転の登録免許税は1000分の4になります。

※分筆登記をしただけでは乙土地と丙土地はそれぞれABの共有のままなので、乙土地についてB持分全部移転、丙土地についてA持分全部移転をします。

以下、少しややしい事例です。
甲土地(価額1000万円)をABが2分の1ずつ共有しているとします。
共有物分割をするにあたって、分筆登記をし、甲土地を乙土地(価額は600万円)と丙土地(価額は400万)の2筆に分けたとします。

結果、AB共有の乙土地と、丙土地になります。続いて、乙土地につき共有物分割でA単有とし、丙土地につき共有物分割でB単有としました。

すると、もともとは、1000万円の甲土地をABで2分の1ずつ(500万円分ずつ)共有していたのに、上記のような共有物分割をした結果、Aに属することになった乙土地の額は、600万、Bに属することになった丙土地の額は、400万となります。
結果、Aの所有している分が100万円増加します。

この100万円部分だけは税率が1000分の20になり、他の移転部分は1000分の4になります。乙土地の税率は、移転する300万円のうち200万円部分=1000分の4、100万円部分=1000分の20となります。丙土地の税率は、移転する200万円すべて1000分の4になります。

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