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遺留分の計算
今回は、「遺留分の計算」というテーマです。
遺留分に関する問題は、単純な条文知識が問われることも多いですが、計算問題が出ることもあります。
以下の問題を検討してみましょう。
令和6年4月1日、Aは死亡した。Aの相続人は、妻B及び子C・D・Eである。Aの遺産は、積極財産3300万円と債務1500万円である。FはAの死亡半年前に4200万円の生前贈与を受けている。なお、Eは相続放棄をしている。このとき、Cが、Fに対して、遺留分侵害額請求をすることができる額はいくらか。
遺留分侵害額請求ができる額は、ざっくりと言えば、
「本来相続できるはずだったと期待していた額の2分の1(相続人が直系尊属だけであれば3分の1)」
になります。なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。
具体的な計算は、4つのステップを踏むことになります。
STEP1
まず、遺留分の基礎となる財産を確定します。
これは、
「相続開始時に被相続人が有した積極財産-債務+被相続人が贈与した財産の価額(※)」
になります(1043条1項)。
なお、遺贈された財産は「相続開始時に被相続人が有した積極財産」に含まれています。
※「被相続人が贈与した財産の価額」に含まれるものについては、1044条、1045条に規定があります。基本的には、第三者に対する贈与は相続開始前1年間のもの、相続人に対する贈与は相続開始前10年間のものになります。
本事例では、3300万(積極財産)-1500万(債務)+4200万(Fへの贈与)=6000万が、遺留分の基礎となる財産となります。
STEP2
次に、Cの遺留分率を計算します。
相続人が子及び配偶者なので、1042条により、2分の1に法定相続分を乗じたものが各相続人の遺留分率になります。
子Eは相続放棄をしているため、Cの法定相続分は4分の1です。
したがって、Cの遺留分率は、2分の1×4分の1(法定相続分)=8分の1になります。
STEP3
Cの遺留分額は、遺留分の基礎となる財産×Cの遺留分率です。
6000万(STEP1)×8分の1(STEP2)=750万が、Cの遺留分額となります。
「Cには750万円は保障されている」というイメージです。
STEP4
次に、Cの遺留分侵害額は、
遺留分額-相続によって得た額-贈与・遺贈を受けた額
となります。
「Cに保障されている額」-「Cが実際に得た額」というイメージです。
Cが相続した財産は、積極財産が3300万×1/4=825万、債務が1500万×1/4=375万であるため、差し引きすると450万になります。
その他、Cは特別受益となる贈与や遺贈は受けていませんから、
750万(遺留分額)-450万(相続によって得た額)-0(贈与・遺贈を受けた額)=300万
となり、これがCの遺留分侵害額になります。
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「STEP1」さえクリアできば、STEP2~STEP4は簡単な算数です。
STEP1も、厄介なのは「加算する贈与は何か」というところだけなので、1044条、1045条(1045条は細かいですが)を嫌がらずに覚えてしまえば、あとの計算自体は難しくありません。
「差がつく計算問題」なので、しっかりと練習しておきましょう。
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