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北谷馨の質問知恵袋 「共同根抵当権の変更」に関する質問

今回は、「共同根抵当権の変更」に関する質問です。

Q:甲土地と乙土地に共同根抵当権設定登記がされており、甲土地についてだけ極度額変更の登記がされているとします。この場合、他の前提登記なく
①丙土地について共同根抵当権の追加設定の登記は申請できるでしょうか。
②乙土地について債権の範囲の変更の登記は申請できるでしょうか。
もし①②で結論が異なる場合は、どういった考え方によるでしょうか。

上記の質問の事例では、
①はできません。
②はできます。

「設定登記」か「それ以外の登記か」で考え方は変わります。

①丙土地について共同根抵当権の追加設定の登記を申請する場合

甲土地と乙土地に共同根抵当権が設定されており、丙土地について追加設定する際は、
「根抵当権者」「債務者」「債権の範囲」「極度額」について、甲土地と乙土地と丙土地で登記が一致する必要があります。
仮に甲土地と乙土地に極度額1000万円の共同根抵当権が設定されており、その後甲土地についてだけ極度額を800万円に変更する登記をした場合は、
前提として乙土地についても極度額を800万円に変更する登記をしたうえで、丙土地について極度額800万円の共同根抵当権追加設定の登記をすることになります。
甲土地と乙土地で極度額がバラバラになっている時点で、「甲土地と乙土地と丙土地で極度額の登記を一致させる」ということが不可能になってしまうので、丙土地について追加設定の登記をする前に、甲土地と乙土地の極度額の登記を一致させる必要があるのです。

②乙土地について債権の範囲の変更の登記を申請する場合

「根抵当権者」「債務者」「債権の範囲」「極度額」について登記が一致している必要があるのは、あくまで共同根抵当権の設定登記を申請する場合です。

甲土地と乙土地に極度額1000万円・債権の範囲が売買取引の共同根抵当権が設定されており、その後甲土地についてだけ極度額を800万円に変更する登記をしたとします。この場合、乙土地の極度額が1000万円のままだったとしても、乙土地について債権の範囲を売買取引から金銭消費貸借取引へ変更する登記をすることは可能です。変更登記を申請する時点で「根抵当権者」「債務者」「債権の範囲」「極度額」について登記が一致している必要はないのです。
なお、この場合、極度額の変更は甲土地だけ、債権の範囲の変更は乙土地だけで登記をしている状態になりますが、このままだと、実体上は、極度額の変更は生じておらず(1000万円のまま)、債権の範囲の変更も生じていません(売買取引のまま)。すべての不動産について変更登記をした時点で、実体上、すべての不動産について極度額の変更や債権の範囲の変更の効力が生じるのです(民法398条の17第1項)。この点も合わせて確認しておきましょう。


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