伊藤塾答練問題作成者が読む「令和5年度司法書士試験委員」
司法書士試験受験生の皆さん、こんにちは。私は、伊藤塾司法書士試験科で答練問題(択一実戦力養成答練〔会社法・商法・商業登記法〕、記述式答案構成力養成答練〔商業登記法〕)の作成を担当している杉山潤一です。
本日は12月1日。本年も残すところあと1か月となりました。受験生の皆さんには、師走の慌ただしい日々の中、受験勉強に邁進されていることと思いますが、伊藤塾司法書士試験科でも、来年1月から開始する答練問題作成が佳境を迎えています。
さて、毎年、この時期になると、答練問題作成者である私は、ある官報の記事に注目するのが恒例行事となっています。そして、その記事が本日12月1日、官報にて公告されました(「官報第869号」p6)。
ここに記載されているのは、法務省人事である「令和5年度司法書士試験委員」です。つまり、ここに氏名の記載されている30名(司法書士10名+法務省20名)の試験委員によって、皆さんが受験することとなる令和5年度司法書士試験の問題が作成されていくこととなります。
確かに、「試験委員が誰であるか」と「どのような試験問題が出題されるか」との間に明確な因果関係があることを立証することができるわけではありません。ですから、試験委員が公表されたからと言って、受験生の皆さんとしては、学習の方針を変える必要はないですし、また、答練問題作成者としては、作成する答練問題を変えることはほぼありません。
しかしながら、過去には、会社法改正の中心的な立案担当者が試験委員に就任した年の本試験で、その会社法改正に関する知識が非常に多く出題された(結果として、その年の本試験の会社法の問題の平均点が大幅に下がった)ということもありましたので、答練問題作成者としては、試験委員が公告される官報の記事を無視することはできないのです。
それでは、本日公告された試験委員のうち、私が答練問題作成者として着目したのは、以下の2名の新任の試験委員です。
●松井信憲さん(現「法務省大臣官房審議官」)
松井さんは、平成17年制定会社法における商業登記法の立案担当者であり、現時点における商業登記の最高権威といっても差し支えありません。松井さんは、その法制審議会での議論等の立案過程やその時点における商業登記実務の蓄積を踏まえ、その成果を『商業登記ハンドブック』(商事法務)にまとめています。余談ですが、司法書士として商業登記実務を行う際、「この事案はどのように処理すればよいのか?」と悩む場面であっても、大抵は、『商業登記ハンドブック』に有益な記載があり、それによって問題が一発解決することも珍しくありません。その意味においても、『商業登記ハンドブック』は、「商業登記実務における最強の切り札」といっても過言ではありません。
●竹林俊憲さん(現「法務省民事局民事法制管理官」)
竹林さんは、令和元年改正会社法における中心的な立案担当者であり、その法制審議会での議論等の立案過程を踏まえ、その成果を『一問一答・令和元年改正会社法』(商事法務)にまとめています。
以上から、令和5年度司法書士試験の択一式問題(会社法、商業登記法)と記述式問題(商業登記法)について試験委員との関係で私が着目しているのは、以下の二点です。
①『商業登記ハンドブック』に記載されている知識
②令和元年改正会社法に関する知識
とはいえ、このことは、受験勉強に多忙を極めている受験生の皆さんに『商業登記ハンドブック』や『一問一答・令和元年改正会社法』を読み込むことをお勧めすることを意味するわけではありません。
①と②については、私の作成する2つの答練(択一実戦力養成答練〔会社法・商法・商業登記法〕、記述式答案構成力養成答練〔商業登記法〕)において十分に留意して問題作成をしていますので、手前味噌ではありますが、受験生の皆さんには、これらの答練を受講することによって、①と②に対応していただきたいと考えています。
そして、これらの答練を受講した後に復習する際には、①と②に着目して学習を進めていくことを答練問題作成者としてお勧めいたします。
それでは、年明け、2つの答練の問題を通じて、皆さんにお会いできるのを楽しみにしております。受験生の皆さん、よい年をお迎えください。