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株主総会議事録の要否(募集株式の発行等)

 今回のテーマは、
募集株式の発行等(第三者割当て)において、株主総会決議により取締役会又は取締役に募集事項の決定の委任をした場合、添付書面として株主総会議事録の添付を要するか
です。

まず、基本的な知識から確認しましょう。
募集株式の発行等(第三者割当て)における、募集事項の決定の決議機関は以下のとおりです。
※すべて単一株式発行会社とします。

・非公開会社
 株主総会特別決議
 →ただし、株主総会特別決議により、取締役会又は取締役に委任可
・公開会社 
 原則:取締役会決議 
 有利発行の場合:株主総会特別決議
 →ただし、株主総会特別決議により、取締役会に委任可

上記の、「委任した場合の株主総会議事録の添付を要するか」を検討します。

・非公開会社の場合

原則として、募集事項の決定は株主総会特別決議によることになりますが、株主総会特別決議によって、取締役会又は取締役に募集事項の決定を委任することができます。
この場合、添付書面として必要な議事録は、
「株主総会議事録」
取締役会議事録(又は取締役の過半数の一致を証する書面)」
になります。
これは簡単ですね。株主総会の決議で委任をしたのだから、株主総会議事録も添付するというものです。
取締役会議事録だけ添付しても、登記官の判断としては、「非公開会社なのに、取締役会じゃダメでしょ」となってしまうので、「今回は株主総会で委任しているのです」ということを、株主総会議事録を添付して立証します。

・公開会社の場合

原則どおり取締役会決議によって発行した場合は「取締役会議事録」を添付し、有利発行であるため株主総会特別決議によって発行した場合は「株主総会議事録」を添付します。
そしてここからが、今回のメインテーマです。
公開会社の有利発行の場合、株主総会特別決議によって、取締役会に募集事項の決定を委任することができます。
この場合、添付書面として必要な議事録は、「取締役会議事録」だけです。
「あれ?株主総会の決議で委任をしたのだから、株主総会議事録も添付するのでは?」と思ってしまいますが、ここでは、株主総会議事録は添付しません。

公開会社では、
「原則」は取締役会決議で発行できます。
「例外」として、有利発行であれば株主総会特別決議が必要になります。
「再例外」として、株主総会による委任があれば、取締役会決議で発行できます。

再例外の場合、普通に考えれば「株主総会議事録+取締役会議事録」になりそうですが、「取締役会議事録」だけ添付しても、そもそも「原則」が取締役会なので、「原則」の取締役会なのか「再例外」の取締役会なのかを区別することなく、取締役会議事録だけ添付して申請することができるのです。

まとめると、

原 則:取締役会決議で発行 →「取締役会議事録」
例 外:有利発行であれば株主総会特別決議で発行 →「株主総会議事録」
再例外:株主総会による委任があれば、取締役会決議で発行 →「取締役会議事録」

となります。

ここから先は、かなり上級者向けの論点です。

再例外:株主総会による委任があれば、取締役会決議で発行 →「取締役会議事録」
ですが、ただし、
取締役会決議の日から払込期日又は払込期間の初日までに2週間の期間がないときは、取締役会議事録に加えて、株主総会議事録の添付が必要
になります。
公開会社が取締役会決議により募集株式の発行(第三者割当て)を行う場合、払込期日又は払込期間の初日の2週間前までに、株主に対して募集事項の通知又は公告をする必要があります。
しかし、株主総会の委任を受けて取締役会で発行決議をしている場合は、この通知又は公告は不要となり、2週間の期間も不要となります。
よって、取締役会決議の日から払込期日又は払込期間の初日までに2週間の期間がないときは「今回は、株主総会の委任を受けているから、2週間なくて良いのですよ」ということを立証するために、株主総会議事録を添付することになるのです。

長々と書いてしまいましたが、今回、最もお伝えしたいことは、

非公開会社の場合
株主総会特別決議によって、取締役会又は取締役に募集事項の決定を委任した場合
「株主総会議事録」は添付する。

・公開会社の有利発行の場合
株主総会特別決議によって、取締役会に募集事項の決定を委任した場合
「株主総会議事録」は(原則として)添付しない。

という、違いです。
「委任決議をした株主総会議事録は添付不要」というのは、あくまで「公開会社の有利発行」の場合の話であり、非公開会社では添付するので、ご注意ください。


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