ちょっと変わった登記の話

皆さん、こんにちは。
クラスマネージャーの沼尻です。
答練も終盤に差し掛かり、もうすぐ直前期ですね。

今回は過去問で出題され、テキストにも少しだけ載っている知識と私の経験した実務の話になります。そのため、ちょっとした息抜きのつもりでご覧下さい。

過去問は平成27年の午前の部の第8問肢のアで出題された動産譲渡登記です。

Aがその所有するパソコン(以下「動産甲」という。)をBに譲渡し,占有改定による引渡しをした後,AがCに動産甲を譲渡し,その譲渡につき動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律に基づく動産譲渡登記がされた場合,Cは,Bに対し,動産甲の所有権を主張することができる。 
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この肢は、「占有改定による引渡と動産譲渡の前後での対抗要件を取得するのはどちらになるのか?」として出題されました。この動産譲渡登記、実は不動産登記や商業登記と少し異なった登記です。

では、どの様に異なり、使われているのでしょうか?

1つ目は、「管轄」です。

不動産登記や商業登記は所在地ごとに管轄が決まっています。たとえば、目黒区の土地や渋谷区に本店を置いている法人であれば東京法務局渋谷出張所が管轄になります。
しかし、動産譲渡登記は東京法務局中野出張所しか管轄がありません。つまり、日本中すべての動産譲渡登記を東京法務局中野出張所で取扱っています。そのため、北海道や沖縄に存在する動産でも中野に申請する必要があります。

2つ目は「補正」という概念が存在しないことです。

そのため補正をすることができません。不動産登記や商業登記の申請で軽微な誤りがあれば補正をすることになります。しかし、補正ができないため、不備があった時に備えてあらかじめ取下げの委任も受けておき、その都度取り下げて修正して申請します。

3つ目は「審査期間」です。

不動産登記や商業登記であれば、通常1週間程度で完了します。しかし、動産譲渡登記は申請書を持ち込むとその場で審査がされ、混雑していなければ1時間ほどで登記が完了します。

最後に使い方についてです。

実務では、集合動産譲渡担保の設定に必要な引渡の代わりとして登記がされています。具体的には、ある土地上の太陽光発電の発電施設一式(太陽光パネルや蓄電池等)に対して設定されるケースがあります。他にも冷凍カニや肉用牛も譲渡担保として登記されたことがあります。

以上、本試験に出題されない内容になりますが、実務に出てから依頼を受ける可能性のある話でした。

7月に向けてコツコツと勉強を進めていきましょう。


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