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資本金の額の計上に関する書面

今回のテーマは「資本金の額の計上に関する書面」です。
択一式・記述式ともによく問われる書面ですが、その要否が混乱しがちなので、整理しておきましょう。
なお、例えば吸収合併であれば「資本金の額が会社法445条5項の規定に従って計上されたことを証する書面」のように、異なった表現がされているものもありますが、答案に記載する際は「資本金の額の計上に関する書面」で統一して構いません。

「資本金の額の計上に関する書面」は、原則として、資本金の額の変更登記や、設立登記を申請する際に添付します。

【株式会社の場合(設立の登記を除き、資本金の額が変更する場合を前提とする)】
1-1 発起設立・募集設立 金銭出資のみの場合 →不要
1-2 発起設立・募集設立 現物出資がある場合 →必要
2 募集株式の発行 →必要
3 新株予約権の行使 →必要
4 取得条項付新株予約権の取得と引き換えにする株式の発行 →必要
5 準備金の資本金への組入れ →不要
6 剰余金の資本金への組入れ →不要
7 資本金の額の減少 →不要
8 吸収合併による変更 →必要
9 新設合併による設立 →必要
10 吸収分割による変更 →必要
11 新設分割による設立 →必要
12 株式交換による変更 →必要
13 株式移転による設立 →必要
14 株式交付による変更 →必要
15-1 組織変更による設立 合同会社から株式会社へ組織変更する場合 →不要
15-2 組織変更による設立 合名会社又は合資会社から株式会社へ組織変更する場合 →必要
16 特例有限会社の商号変更による設立 →不要

「必要」が原則なので、「不要」となる例外を注意して覚えていきましょう。

1-1 発起設立・募集設立 →金銭出資のみの場合は不要

これは、100万円の出資があったのであれば、資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。
なお、「2 募集株式の発行」では、金銭出資のみでも「必要」です。これは、自己株式の処分が含まれる可能性があり、計算を要する場合があるからです(設立時には自己株式の処分はない)。

5 準備金の資本金への組入れ →不要 
6 剰余金の資本金への組入れ →不要

これは、商業登記法69条において、「減少に係る準備金(剰余金)が計上されていたことを証する書面」の添付が要求されているところ、当該書面が「資本金の額の計上に関する書面」の役割を兼ねることになるからです。

7 資本金の額の減少 →不要

これは、資本金の額はマイナスにならない限り自由に(必要な手続を経れば)減少できるからです。

15-1 組織変更合同会社から株式会社へ組織変更する場合→不要

これは、組織変更をしても資本金の額が増減することはなく、合同会社の頃から資本金の額は登記されているからです。
なお、合名会社又は合資会社から株式会社へ組織変更する場合は、もともと資本金の額は登記されていなかったので、資本金の額の計上に関する書面が必要になります。

16 特例有限会社の商号変更による設立 →不要

これは、商号変更(特例有限会社から通常の株式会社への移行)をしても資本金の額が増減することはなく、特例有限会社の頃から資本金の額は登記されているからです。
※なお、移行と同時に募集株式の発行の効力が生じる場合等、登記事項の変更が生じる場合は、当該変更に関する書面(資本金の額の計上に関する書面を含む)が必要になります。

【合同会社の場合(設立の登記を除き、資本金の額が変更する場合を前提とする)】
1-1 設立 金銭出資のみの場合 →不要
1-2 設立 現物出資がある場合 →必要
2-1 社員が出資の履行をした場合 金銭出資のみの場合 →不要
2-2 社員が出資の履行をした場合 現物出資がある場合 →必要
3 その他の資本金の額の増加 →必要
4 資本金の額の減少 →必要
5 吸収合併による変更 →必要
6 新設合併による設立 →必要
7 吸収分割による変更 →必要
8 新設分割による設立 →必要
9 株式交換による変更 →必要
10 組織変更による設立 →不要
11 種類変更による設立 →必要

1 設立 金銭出資のみの場合 →不要

これは、100万円の出資があったのであれば、資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。

2-1 社員が出資の履行をした場合 金銭出資のみの場合 →不要

これは、100万円の出資があったのであれば、増加する資本金の額の上限が100万円であることは明らかであり、別途証明する必要性がないからです。なお、株式会社の「募集株式の発行」の場合とは異なり、「自己株式の処分が含まれる可能性がある」というような問題はありません。

10 組織変更による設立 →不要

これは、組織変更をしても資本金の額が増減することはなく、株式会社の頃から資本金の額は登記されているからです。

なお、「必要」なもののうち、株式会社と比較して以下の2つに注意が必要です。

3 その他の資本金の額の増加 →必要

これは、例えば「剰余金の資本金への組入れ」などです。
株式会社では、商業登記法69条において、「減少に係る剰余金が計上されていたことを証する書面」の添付が要求されていましたが、合同会社ではこれに対応する規定はないので、「資本金の額の計上に関する書面」を添付することになります。

4 資本金の額の減少 →必要

これは、細かく突っ込む必要はありませんが、合同会社の場合、資本金の額は自由に減少できるわけではなく「一定の場合に、一定の限度で減少できる」という縛りがあります。そのため、減少額を証する「資本金の額の計上に関する書面」の添付を要します。


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