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「会社法がわからない」という方に向けて

みなさん,こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回は「会社法がわからない」という方に向けて,会社法が分かるようになるコツをお伝えできればと思います。


【1】会社法は受験生の苦手科目No.1

会社法は苦手意識を持つ受験生が特に多い科目です。

民法などに比べて,会社法はとっつきにくい科目で,「一通り学習したけどよく分からない」という方も多いでしょう。

また,実体法として土台となる会社法が分からなければ,手続法である商業登記法も分かりにくくなるので,結局,商業登記法が分かるようになるには,会社法をまず分かるようになる必要があります。

【2】なぜ会社法はとっつきにくく感じるのか

では,なぜ会社法はとっつきにくく感じるのか。

それは,「細かい知識に惑わされ,体系がつかみづらいから」です。会社法は細かい規定が多く,最初からそれを覚えようと躍起になっていると,全体構造がつかみづらくなります。例えるなら,木(個々の知識)の1本1本に目が行き過ぎるあまり,森(体系,全体像)の構造が把握できず,迷子になってしまうのです。体系がつかめず,現在自分がどの位置づけの知識を学んでいるのかが分からなければ,個々の知識も理解しづらくなり,覚えにくくなります。

また,会社法がとっつきにくく感じる理由として,「似たような知識がごちゃごちゃして覚えづらい」ことも挙げられます。会社法は「取締役」「監査役」「会計参与」「会計監査人」や「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」など,分けて覚えなければならないところが多いですが,このように似たような知識をそれぞれ別々に押さえても,問題を解く際にごっちゃになってしまい,分からなくなってしまいがちです。会社法では比較問題が好んで出題されるので,この苦手意識はなんとしても払拭しなければなりません。

これらの点を踏まえて,会社法が「わかる」ポイントを3つお伝えしていきます。

【3】会社法が「わかる」ポイント

〔1〕インプットの初期は「全体構造の把握」を重視する

インプットの初期の段階では,森全体を見渡す,すなわち体系をつかむことに専念し,細かい知識は後から覚えていくと効率的です。

初めから細かい知識を覚えようとするのではなく,最初のインプットを「体系の理解」と割り切ってざっくり理解し,その後,復習を繰り返すに当たって細かい知識を覚えていくようにしましょう。

例えば,募集株式の発行を例にとると,いきなり細かい決議要件を全て覚えようとするのではなく,まずは「①募集事項の決定➡②引受人による申込み➡③株式会社による割当て➡④出資の履行➡⑤募集株式の発行(効力発生)」といった流れをつかむことが重要です。

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このような知識の「枠」を初期のインプットで組み立てて、その枠に後に学習する知識を流し込んでいくイメージです。

〔2〕記憶する知識を極力絞る

会社法のテキストの多くは,表でまとめる形式がとられていますが,これをいきなり全部覚えようとしても,的が定まっていない分,本当に押さえなければならない重要な知識までも見落としてしまいがちです。

ですから,①講師が強調していた箇所,②問題演習で出題のあった箇所には印をつけて,まずはそこだけを最低限押さえるようにするとよいでしょう。

このように会社法に関しては「狙い撃ちの省エネ作戦」で頻出の知識を着実に覚えてしまったほうが効率的です。覚える知識が絞られる分,頭の中がごちゃごちゃにならず,スッキリするので「体系の理解」にも役立ちます。

〔3〕徹底して比較整理する

上記の通り、会社法では知識の混同が生じやすいため、徹底した比較整理が大事です。具体的には,過去問で比較して出された知識,自分が紛らわしいと感じた,似たような知識をテキストの余白に,積極的にまとめていくのがオススメです。

 例えば,次の過去問(平成22年第30問イ)「取締役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることができるが,監査役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることはできない。【○】」を例にとって比較整理してみると,次のような形になります。

『定款で書面決議による決議省略』
 取締役会 ➡ 可
 監査役会 ➡ 不可」

 ここに更に株主総会の場合を追加したりして幅を広げると,網羅性に優れ,更に効果的です(参考として下記の表をご覧ください)。このように会社法の比較整理を行うことで,①混同しがちな知識が整理され,②比較問題に対応しやすくなるし,③比較・関連知識の復習になるというメリットがあります。立派な表として整理する必要はありません。簡単でかまわないので,思い立ったらすぐにテキストの余白に比較整理するようにしましょう。

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