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北谷馨の質問知恵袋 「定款の添付の要否」に関する質問
今回は、「定款の添付の要否」に関する質問です。
Q:株主総会特別決議を要する登記の申請において、株主総会特別決議の定足数を「議決権の3分の1」に軽減する定款の定めがありましたが、定款が添付されていませんでした。定足数の定めを証するための定款の添付は必要ないのでしょうか。
まず前提として、株主総会特別決議の要件を確認しておきます。
・定足数
原則=議決権の過半数
例外=定款で別段の定め可能(ただし、3分の1未満への引き下げは不可)
・決議要件
原則=出席株主の議決権の3分の2以上の賛成
例外:定款で加重可能
定款の添付については、商業登記規則61条1項において以下のように規定されています。
「定款の定め…がなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款…を添付しなければならない。」
簡単に言えば、「定款の定めがなければ申請が却下になる場合は、定款を添付する」ということです。
【定款による軽減の場合】
株主総会特別決議の定足数を「議決権の3分の1」とする定款の定めがあった場合、定款を添付する必要があるでしょうか。これは、場合分けが必要です。
①議決権の過半数が出席している場合 → 定款の添付は不要
②議決権の3分の1が出席している場合 → 定款の添付を要する
①は、原則的な要件である「議決権の過半数」の出席があるため、定款の定めにかかわらず、定足数は満たしています。このような場合は、定款の添付は不要です。「定款の定めがなければ申請が却下になる場合」ではないからです。
②は、原則的な要件である「議決権の過半数」は満たしていませんが、定款で軽減した定足数は満たしています。このような場合は、定款を添付します。「過半数の出席はないけど、定款で3分の1に軽減しているからセーフです」ということを立証する趣旨です。
【定款による加重の場合】
では、株主総会特別決議の決議要件を、定款で「出席株主の議決権の4分の3以上の賛成」に加重していた場合はどうでしょうか。
以下の③④の場合について検討してみてください。
③出席株主の議決権の4分の3が賛成している場合
④出席株主の議決権の3分の2が賛成している場合
③は、定款で加重した要件も満たしていますから、登記はできます。しかし、「定款に加重規定がある」ということを、定款を添付して立証する必要はありません。
定款を添付するのは、「定款の定めがなければ申請が却下になる場合」です。「定款で要件が加重されているがそれもクリアしている場合」には定款を添付する必要はありません。
④は、加重された決議要件をクリアしていないので、登記はできません。
ここで、「定款を添付しないなら、④の場合でも登記ができてしまうではないか」という話になりますが、登記官としては、定款による加重規定の有無までは審査しないことになっています。定款を添付しないので、デタラメな申請をすれば④の場合でも登記はできてしまいますが、それは虚偽の登記申請になりますので、司法書士としてはそのような登記申請をすべきではありませんし、答案としても誤りになります。
まとめると、以下のようになります。
・定款に軽減規定があり、会社法上の要件を満たしている場合
→ 定款添付不要
・定款に軽減規定があり、会社法上の要件は満たしていないが、軽減された要件は満たしている場合
→ 定款添付必要
・定款に加重規定があり、加重された要件を満たしている場合
→ 定款添付不要
・定款に加重規定があり、加重された要件を満たしていない場合
→ 登記不可
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