「パーマの名前がむず過ぎる!」美容師が選ぶ「謎ネーミング4選」とは?【意外と知らないパーマの話②】
操作イトウです。
【意外と知らないパーマの話②】は、パーマにまつわるネーミングについてのお話です。
【意外と知らないパーマの話①】はコチラ↓
◾️パーマの名前、ムズ過ぎるんだよ…
美容業界やファッション業界の言葉は、やたらとお洒落で聞き馴染みのないフレーズだらけ。
例えばネット予約でメニューを探す際に、メニューの内容が意味不明で困った方は多いのではないでしょうか?同じようなセットメニューが並び、その種類の違いもわからず、クーポンでお得な気がするけど、微妙に値段も違う。
これらはクーポンサイトやInstagramでのアピール合戦によるもので、ネット上には「過剰な期待をしてしまう、聞こえのいいフレーズ」が軒を連ねるようになりました。あらゆる情報が過剰に「盛られる」現代では、アテンションエコノミーは煩わしくも仕方がないことです。
とりわけパーマのネーミングは、美容師である僕からしても奇々怪界。
そこで、ここでは比較的使われている「パーマの謎ネーミング」を4つ取り上げて、説明します。
①【コスメパーマ】って言われても、よくわからないんだが。
まず、ネット予約のメニュー欄で特によく見るのが、「コスメパーマ」というネーミングです。
「コスメパーマ」とは、現代の最もポピュラーなパーマ剤のことを指しています。従来のパーマでは、髪がバリッとした硬い触感になることが当たり前でしたが、コスメパーマによって手触りの柔らかいパーマをかけることができます。
更に、「臭い」の面でも軽減されているので、あの「ツンとする臭い」も既に過去のものとされています。
でも、「コスメ」ってなんなのか?
▼「化粧品登録」だから「コスメ」って呼んでる
コスメパーマは、従来のパーマの薬剤が「医薬部外品」だったのに対して、「化粧品」で登録されていることから、「化粧品=コスメ」と呼ぶようになりました。
日本では、あらゆる商品化された薬剤は薬機法(旧薬事法)に基づいて、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の3種類に振り分けられて登録されています。
薬剤は、成分によって副作用などの危険性があったりするので、全ての薬剤は危険性が「強いもの」から「弱いもの」へ、
(強) 「医薬品」 → 「医薬部外品」 → 「化粧品」 (弱)
と振り分けられているのです。
そのため、『今まで「医薬部外品」だったパーマ液が「化粧品」になりましたよ』となると、「諸々危険性が薄れました」ということになります。
つまり化粧品の方が、「優しい薬剤を使ったパーマですよ」というアピールの名称なのです。一般の方からしたら、知らんがなって感じですよね。
②【水パーマ】え?水でパーマがかかんの?
お次は、「コスメパーマ」と同じくらいよく見る「水(みず)パーマ」です。
「え?水だけでパーマがかかんの?」と勘繰ってしまいますが、無論、水だけでパーマがかかるわけではありません。実際には薬剤を利用しています。
▼水蒸気を使っているから、水なのだ!
水パーマは、通常のパーマの工程にプラスして、「水蒸気」(「スチーム」や「ミスト」と呼ぶことが多い)を当てる工程が含まれます。
パーマは「水蒸気」を当てることで、薬剤の効きを促すことができます。
明らかに水蒸気と「水」は別物ですが、これもまた「水でパーマかけてます!」と過剰なアピールをしているのです。
③【ストレートパーマ】ってパーマなんだよね?「縮毛矯正」と違うの?
よく、「ストレートパーマってパーマなの?」と聞かれることがあります。パーマの正式名称は「パーマネントウェーブ」ですが、薬剤でウェーブの形状を変えているので、パーマの一名称で間違いありません。
ストレートパーマは、薬剤の効果と「ストレートアイロンの熱」によって、ウェーブのある髪を真っ直ぐにする技術です。
一度真っ直ぐになった部分は、パーマのように緩むことはほとんどなく、切り落とすまで真っ直ぐをキープすることができます。また現代では、一般の方では見分けがつかない程のナチュラルなストレートにすることも可能になっています。
そしてよく聞かれることですが、「縮毛矯正」との明確な違いはありません。ですが、ストレートパーマよりも「縮毛矯正」の方が強力で真っ直ぐになりそうな印象を受けると思います。
この「縮毛矯正」の強力そうな印象は、あながち間違いではありません。
▼90年代後半〜00年代は、ツンツンが可愛いかった
縮毛矯正がポピュラーになった90年代後半〜00年代はじめは、一大「シャギー」ブームでした。みんなツンツンに真っ直ぐなストレートにしていましたが、当時はツンツンにするのが可愛いかった。
ですが従来の「縮毛矯正」は薬剤の力が強かったため、ツンツンに真っ直ぐなストレート“にしかできなかった”という側面もあります。
時代は移り変わって、薬剤も優しいものに変わると、美容師側は呼び方をストレートパーマに置き換えるようになりました。ですが、一般的には「縮毛矯正」の呼び方も根強く残っているので、現代では両立している状態ですし、どっちを使っても間違いではありません。
ですが、そもそもネーミングを置き換えたのはなぜなのか?
▼ファッション業界は、新しい言葉が大好き。
その理由は、ファッション業界の「新しい言葉好き」です。
ファッションにまつわるネーミングは、“時代によって改まる”ことが容易にあります。「ファッショントレンドは一巡して回ってくる」と言われるように、過去に流行したスタイルやアイテムは、時が経って再来することが多くあります。
明らかに00年代にインスパイアされてる↓
この再来するタイミングで重要なのが、ネーミングです。
「昔から存在するもの」でも、ネーミングを改めると“お洒落で最新な印象”に変わるのです。それまで「古くてダサい」印象だったアイテムも、呼び方が変わると、不思議と新鮮に感じることができるのです。
「ランニングシャツ」が「タンクトップ」になったように、
「スパッツ → レギンス」
「ベスト → ジレ」
などなど、挙げたらキリがないほどの事例があります。
「縮毛矯正」も同様に、「ストレートパーマ」の方がお洒落な感じがするから呼ばれるようになりました。ですが先述したように、現状両立されているので、どちらでも大丈夫です。
④【デジタルパーマ】実は、一つもデジタルじゃない
「デジタルパーマ」とは、ストレートパーマと同様、熱を利用するパーマです。ロッド(巻いている筒のこと)に電熱を当ててパーマを効かせることで、通常のパーマよりもちがよいのが特徴です。とはいえ、ストレートパーマのようにかかったパーマがずっと残るわけではなく、徐々に緩んでいきます。
通常のパーマのようにぐるぐるの強いパーマには向いていないため、長持ちして欲しい「緩めのパーマ」に利用されることが多いです。
最近はデジタルパーマの人気も再燃していますが、なんと、このパーマに「デジタル」の要素はありません。
▼「デジタル」は見た目先行のネーミング?
デジタルパーマは、ロッドに繋がったコードと機材の「見た目」から「デジタル」と呼ぶようになったそうです。『トータルリコールみたいに電気信号を送って、髪の中の電子配列を変えている!』ように見えなくもないですが、コイツはただちょうどいい電熱を送っているだけです。
だいぶ無理矢理に感じるネーミングですが、作られた当初からこの呼び名だったため、そもそも他の呼び方はありません。
▼デジタルパーマができない美容室は多い
通常のパーマは全国どこの美容室でもできますが、デジタルパーマは導入していない美容室も多くあります。
デジタルパーマが生まれてから20年ほど経っていますが、この技術は通常のパーマとは理論が異なるため、別の知識と経験値が必要になります。
また熱を当てる機材は高額で、使えるヘアスタイルが限定される上、最近になって再燃したものの、しばらくの間、デジタルパーマの需要は下火でした。
デジタルパーマは、上手に扱えば効果的な技術です。
しかし美容師からすると、「デジタルパーマ“でしかできない”ヘアスタイル」があるわけではありません。そのため、「あえて勉強して導入する必要がない」と判断する美容室は多いので、そもそも使い方を知らない美容師さんもたくさんいるのです。
◾️パーマのネーミングは摩訶不思議
いかがでしたか?意味不明なパーマのネーミングの数々。
パーマのみならず、美容業界はよくわからないフレーズで溢れているので、この記事を通してご一緒にせせら笑っていただけたら幸いです。
ではまた。
Twitter、Instagramのフォローもよろしくお願いします。
Instagram↓
https://www.instagram.com/itohcontroller/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?