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なぜ、女性の美容師が少ないのか。

操作イトウです。

今回は、なぜ美容師は男性ばかりなのか、についてです。

※追記 この投稿をベースに、R3.1.19、文春オンラインに寄稿させていただきました。こちらもご参照ください

女性の社会進出、サスティナブル、と言いながら、美容師さんは圧倒的に男性が多い。僕らより上の世代では特に多く、仕事やプライベートの価値観が変化した20、30代でも、やっぱり女性は少ないです。

一方で「男性の美容師が苦手、できれば女性で。」というお客様側のご要望は少なくありません。接客業では、女性の雇用は貴重な人材です。デパ地下食品フロアなどは今でもほとんど女性ですし、男性に対して見えない圧を感じる方もいるようです。

「技術職だから、器用な男性が残るのかな?」ともよく聞かれますが、そこには別の理由があります。

では、なぜ女性美容師は少ないのか?

美容学校は女性比率が高い

下のデータは2019年の美容学校の在学生の数です。女性比率は70%ほど、つまり美容学生は圧倒的に女性が多いのです。

僕の美容学生時代も、学校の男女比は男2:女8でした。多くは二十歳で卒業して10年以上経った今、同じクラスの40人のうち美容師を続けているのは15人程度、そのうち女性はわずか2人、です。それでも、周りからは続けている人が多い方だ、と言われます。

結局残っているのは、ほぼ男性。僕らの時代では美容師は人気の職業だった為、都内の専門学校では倍率があったほどでしたが、10年の間にほとんどの同級生は美容師ではなくなっている。ではなぜ現場には女性が少ないのか?

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女性美容師が現場に少ない理由

一つはまつげ業界です。まつげ業界はパーマなど薬剤を使うことから、数年前から美容師免許が必要になり、それを目的として国家試験を受ける方も増えています。つまり女性の在学生の何割かは、そもそもまつげの仕事に就くために美容師免許を受けているのです。

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また、美容師をドロップアウトした方で、まつげ界に転職することも多くあります。既に美容師免許を持っているため、まつげの技術は習得するのに時間もそれほどかからないため、次の働き口の受け皿になっています。

ですがこの事例はここ数年の話で、10年以上前に在学生だった、僕ら世代には関係のない話です。

就職先に美容師を選ばなかった、または美容師を辞めた女性の多くは美容部員(デパートの化粧品売り場で働く方のこと)、エステ、ネイル関係に就職します。

これらに美容師免許の資格は必要ありませんが、元々お洒落な素養を持っていて、メイクやネイルの知識も活かされます。その他はお洒落が好きでアパレル関係、ファッション界から離れてOLになる方も多かったです。

美容師の離職率

今でも多くの美容師は、一人前になるまでに長い下積み、低賃金、拘束時間の長さ、華やかに見える理想と現実のギャップなど、過酷な労働環境での仕事を強いられています。

今の20代も、変わらずにその洗礼を受けている。ここについてはコチラで語っています↓

また美容業界は体育会系の要素が色濃く、世代間の仕事の価値観の違いによって「しゃにむに働く」事を強いられ、男女関係なく、多くの若手は体調不良や手荒れなどに悩まされます。

僕が新卒で勤め始めた美容室では、忙しすぎて営業中にトイレに行く暇がなく、膀胱炎で悩む女性スタッフもいたほどでした。当時は「そういう世界なんだ」と思い込んでいましたが、今更考えれば、そんな働き方では続くわけありません。

その為多くは20代のうちにドロップアウトしていき、結婚、出産などを理由に30代以降の女性美容師は激減します。今の30代以降の女性美容師が少ない理由は、まずここにあります。

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ですが現在は、運営の仕方や働き方を変える美容室が増えたことで、結婚、出産後も続けられる女性美容師が増えている傾向があると言えます。

10年前までは、「辞める」か「出産しない」かほぼ二択だった

前述しましたが時代の価値観もあり、女性美容師は結婚、出産をきっかけに退職、引退する人が多かったです。出世欲、上昇志向を持っていない人にとって、美容師という仕事は社会復帰するにはハードルが高い。長く美容師を続ける女性は、キャリアウーマン的な志向の人が多いです。

特に難しいのが、出産後の職場復帰です。長期離脱による客離れ(業界では「失客」と呼びます)は必至で、復帰後は大きく売上を落とします。お客様側が「あの美容師さんでなければ、別を探そう」と思うのは自然なことです。

そして、子供が大きくなるまでの間は保育園や学校、学童保育など、子どもを預ける時間でしか働けない為、フルタイムでは働けません。

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必然的に予約の受付時間も狭まる為、例えば自分を指名してくださるお客様が夕方にしか来店できない、となると受けることができない。すると、また失客してしまいます。

なので、結婚、出産以前に「それでも貴方に切って欲しい」と言ってもらえる顧客をたくさん獲得していて、既に成功している女性美容師でしか、美容師としての社会復帰は難しかったのです。ですが、男女問わず、20代のうちにお店の稼ぎ頭になれる程の美容師は、一握りです。

また個人経営の多い美容室はスタッフの人数が限られている為、一人のスタッフがフルタイムで働けないのは、戦力ダウンです。多くの雑務も含めて「私が他のスタッフに負担をかけている」という心理もあり、10数年前まで多くの女性美容師にとっては、「辞める」か「出産しない」か、ほぼ二択だったのです。

人材不足による雇用の変化

しかし、この10年の間に若手の人材不足が顕著になり、現場が圧迫されるようなったことで、在籍している人材の確保は美容室の最重要課題になりました。

仕事とプライベートの両立という価値観の変化、それによる働き方の多様化、ここにきてのコロナ禍。会社側が柔軟に変化する事を余儀なくされている今、女性美容師でも働ける環境は、改善されてきています。

近年の美容界の大きな変化として、「面貸し」と「業務委託」という仕事のスタイルが確立されました。

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細かい説明についてはまた別の記事にしますが、どちらも「従業員」ではなく「個人事業主(フリーランス)」として仕事に応じた報酬を貰い、今までのような会社との主従関係ではない、対等な関係で仕事ができます。拘束時間に縛られることもなく、副業や家事、子育てや趣味などの時間を、その人の配分で用意することができます。

美容師の働く環境が改善されると、気持ちの余裕は仕事のクオリティに反映して、お客様に還元することができる。女性美容師のみならず、多くの美容師が心地よく働けるようになるといいと思います。


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ではまた。





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