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花王とパナのコラボ家電が凄い

凄い商品が出て来たので、他社の俺が凄いって言うだけの記事です。

花王が新しい美容家電を発表

花王は2019年11月1日、薄膜形成技術を応用したスキンケア美容家電「バイオミメシス ヴェール」を発表。同年12月4日に発売する。

顔に皮膚のような薄膜を形成して、寝てる間にスキンケアをするという商品。効果としてはナイトケア用のパックに近いだろう。

薄膜の原料となる化粧液「ポーション」(8,000円)、原料ポーションを肌に吹き付け薄膜を形成するための本体装置「ディフューザー」(50,000円)、薄膜に美容効果を持たせるための美容液「エフェクター」(12,000円)で構成される。

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従来の延長線上から飛躍した価値

花王の説明によると、「バイオミメシス ヴェール」で形成された薄膜は美容液の保持と、透湿性を持つのが特徴だ。

併用する製剤を速やかに膜全体に均一に広げ、しっかりと保持するという性能があります。一方で、繊維のすき間から適宜水蒸気を通すので、肌を完全に閉塞することなく、適度な透湿性も保てます。
花王プレスリリースより抜粋)

既存商品だと美容パックがイメージに近いが、ベタベタもせず、透湿性があるので快適な上に、動きに追従するので寝てる間に簡単に剥がれたりもしない。澤田社長が説明してる通り、従来の延長線上ではできないレベルの価値を訴求している。凄い。

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顔で薄膜を形成させる発想はヤバい

薄膜は、粘着性の極細繊維を顔に吹き付けて形成する。まずこの時点で発想がかなり凄い。素直に考えるならば、目や鼻など粘膜へのダメージを避ける為に、予めシート状に形成しておいた繊維を顔に貼り付ける方式にする。その方が量産しやすいし、販売価格も抑えることが出来る。

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しかし、薄すぎて貼れない等の技術的な問題が恐らくあって、顔に吹き付けて形成する方式を採用したのだろう。この時点で、薄膜形成装置の場所が工場から顔に移動することになる。そして、花王内部だけでは作り切れないと判断し、パナソニックとの協業に向かったのだ。

完成してる今から見れば正しい判断で、商品化に至ったブレイクスルーなのだろうが、出来るかどうかも分からない当時は相応に狂気を持った判断だったはずだ。花王研究者の意地が垣間見える。

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そして、実際に薄膜形成装置を家庭用サイズで量産しちゃったパナソニックもなかなか凄い。繊維を安定的に吹き付けるには、吹き付けノズルや、原料の押し出し機構の精度が必要になり、それを小型化・量産化するには高度な金型技術が必要となる。また、吹き付けの際に、繊維に電荷を与えて、皮膚に引っ付きやすくしてるらしい。空気清浄機や電気集塵機なんかと似たような技術だ。この辺りの金型技術、小型化技術、制御技術はパナソニックの得意とするとこだろうけど、実際やりきるのは大したものだ。流石の技術力だなと思う。

今後まだまだ発展の余地がある

また、今回の商品は美容液パックが完成形というわけではなく、薄膜形成技術の応用第一弾としての位置づけだ。

花王株式会社(社長・澤田道隆)は、積層型極薄膜形成技術「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」を具現化する、高性能小型ディフューザーを開発しました。
応用第一弾として、2019年12月4日、化粧品領域から事業化。
花王プレスリリースより抜粋)

要するに、今回の事業のコアは美容効果をもつ美容液ではなく、ディフューザーやポーションなどの道具側にあるため、道具の使いこなし方で、様々な商品展開が可能となる。

例えば、美容液をファンデーションに置き換えれば、シミや皺、毛穴などを覆い隠すベースメイクのような使い方や、シャドウやチークなどと置き換えれば、色味をのせて立体的な表情を作り出すために使ったりなど、応用範囲が広い。要するに、花王は「顔の上に新たな顔を作り上げる工場」を開発したのだ。なんだか3Dプリンタみたいだね。

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どれぐらい儲かるのか?

報道によると、基礎研究段階から数えれば15年。パナソニックとの協業など、商品化にむけた具体的活動を始めてからでも4年経っている。既にイニシャルコストは10億は余裕で超えているだろうし、今後、販売に向けて営業面での更なる投資も必要となる。

売価がフルセットで7万円。1万セット売ったとしても7億円なので、利益率考えると5~10万セットぐらいがトータルでの損益分岐点だろうか。70憶円。日本の30~40代女性は約1000万人いるので、1%の人々が買ってくれればペイするだろう。非常に大変に見えるが、全く勝算のない数字でも無い。か?

また、当然ながら、日本だけの商品ではない。プレスリリースは日本語と同時に、英語、中国語でされており、既に欧米や中国の小売大手に営業が始まっているとのことだ。

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大体、世界の経済規模は日本の10倍くらいなので、700~900億位がとりあえずの目標だろう。澤田社長の発言からもその辺は読み取れる。

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売上高1.5兆円の花王からすれば、1000億円という額はそれほどインパクトのある数字では無いし、生産能力の制約などもあるだろうから数年がかりの目標となる。この商品だけで、株価に大きく影響を与えるとかは無いだろう。ただ、新しい分野なので開拓余地は広く、上振れは十分有りうる。

コンスタントに稼ぎ続けるには、継続利用してもらう必要があり、ファンコミュニティやサードパーティの形成が重要になる。類似商品が発売されるなどして、デフューザー本体の価格も下がっていき、徐々に、化粧液(ポーション)や美容液(エフェクター)で儲けるビジネスモデルに移行していくだろう。

ちなみに、パナソニックの取り分としては開発費用が数億円と、OEM製造の委託費用などで、1台当たり2000~4000円程度の利益は出るようにしてるのではないだろうか。美味しい商売だが、こちらも売上高8兆円のパナソニックからすれば、僅かな数字だ。どちらかといえば、花王との協業実績を作れたことで、自社の美容家電事業に、更なる発展性を持てたことが大きなメリットだろう。

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(パナソニック上海の体験型美容家電ショールーム。
家電だけでなく、化粧品もセットで体験出来れば客単価が上がるだろう)

俺はめちゃくちゃ応援してる

今回の「バイオミメシス ヴェール」は花王の研究者の意地の商品だ。俺はそう見ている。よく15年もかけて商品化まで漕ぎ着けたよ。色々大変だったろうけど、よくやりきった。尊敬する。ここからがまた新たなスタートとなり、売れなかったりクレームが来たりと大変になるだろうけど、応援している。

俺は化粧をしないが、そろそろ年齢的にスキンケアを始めてみようかと考えていた。老いというものは残酷だ。今まで化粧に無関心だった男ですら、肌のコンディションを気にし始めてしまう。

そんな折、花王から研究者の意地を感じるような商品が出て来た。俺も老いにただ流されるままでなく、僅かでも立ち向かう気概は持とう。「バイオミメシス ヴェール」はちょっと高くてビビるので、とりあえず「ニベア」あたりからのスキンケアを始めようかと思う。

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