タイムカプセル
「2時間サスペンス」、通称「2サス」は、近年元気がないようだ。私もじつのところ、好んで観ていないのだが、ときどき目にする限り、現在の殺人事件は、数十年前におこった殺人事件に原因があり、その復讐劇が多い気がする。
犯人は虎視眈々と、復讐の機会をずっとうかがう。その怨念たるや、八犬伝の「我こそは玉梓が怨霊」もかくや、と思うくらいだ。
人間、そんなに怨念を持ち続けられるものなのか。
それはともかく、埋められたタイムカプセルが開封されることによって、何かが開かれる。
これは「2サス」っぽいネタだな、と思いながら、書いた。
*
母校の高校から、タイムカプセルの開封式の案内状がきた。
タイムカプセルといえば、埋めたのは、15年も前のことである。
開封式当日、会場の体育館にいった。
そこには、思いがけずたくさんの同学年の人々が集まっていて、いつの間にか、同期会になっていた。昔語りに花が咲き、和やかな空気が漂っている。
糸のように目が細い、穏やかな顔つきで、でっぷりと太った女性が話しかけてきた。私の知らないひとである。
「あのころは、ごめんね~」
「なんのこと?」と私。
「いじめていたでしょう、あなたのこと、私」
「そうだっけ?」
「覚えていないの?」
「うん」
「そうよね~。15年も前のことだものね。いまとなっては、おたがいよき思い出よね~。私だけがやっていたわけじゃないけどさ~、まあ私がリーダーみたいなものだっから。あははは」
「へえ~。そうなんだ」
当事者は私ではない。妹である。私は姉だ。双子なのである。妹は、高校卒業後、大学に進学したが、途中で休学して自殺した。いじめの後遺症で、うつ病になったのだ。遺書は残さなかった。
太った女性にとっては、よき思い出かもしれないが、私にとってはそうではない。妹にとっても。
その夜、その太った女性は、事故死した。うっかり足をすべらせて、階段から転げ落ち、後頭部をしたたか打ちつけたのである。
まるで「2サス」のように。
*トップの写真は本文とは関係ありません。
【Show Must Go On Three Dog Night】
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