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はじめての老い -ブランコが怖いということ-

「はじめての老い」シリーズは、老いの初心者伊藤ガビンが、初心者なりに感じていることを記録しているものです。

30代の中頃くらいからかな、気がつくと高いところが苦手になっていたんです。そして40代、50代と苦手を超えてどんどんどんどん怖くなってきました。設営仕事やらなんやらで稀に脚立に登る機会があるのですが、涼しい顔をしながら、身体の中心部がキュッと縮みあがってしまう。もともとシワシワなのに、キュッと縮んでさらにシワが倍。脚立を降りてからもしばらく膝がガクガクしています。膝で笑って心で泣いて、というやつですね。

むかしから高いところが怖かったわけではないんです。子どもの頃は屋根に登ったり、非常階段から飛び降りたり、むしろ高いところに登りたがるいわゆる「アホな男子」のひとりだったんです。いやですねえ。
ローラーコースターの類も大好物で、20代は遊園地では調子こいて繰り返し繰り返し乗り続け、最終的には乗りながら居眠りしてたりしました。調子にのるなと言いたい。

しかしこれが30代半ばのある日、観覧車に余裕の表情で乗り込んだものの段々と怖くなり、観覧車の中央部分にしゃがみこんで両手で手すりの金属を握りしめていたんですね。降りる頃には手のひらは真っ白で汗びっしょり。嗅いでみると金属のニオイがヤバかった。ヤバ過ぎてたまにかぎたくなる。

観覧車が特に怖いですね。もしかして高いところが怖いだけでなく、閉所に閉じ込められるのが怖いということのダブルパンチ。カルビー的に言えばダブルコンソメパンチだったのかもしれません。スキー場のリフトのほうが「裸(ら)」で怖いように思うけど、観覧車の方がだんぜん怖いというか圧倒的に怖いというか勘弁してくれよ怖いよ怖いんだよと思うのは、そうした理由かもな、と。

「年をとると高いところが怖くなる」という話はちょいちょい聞くじゃないですか? どうですか? このシリーズを書きはじめてから「ガビンさん、アレ書いてくださいアレ、頻尿」とか、そういうこと言われる機会が多いのですが、つい数日前にもこんなDMが。

東京都在住 老いネーム 編集者Tさんからのおてまみです。
やっぱりねー。と思いました。だけど、その怖くなる理由、そのメカニズムは軽く検索(深掘りはしないと決めて書いております)して出てきたものを読んでも、どうにしっくりこない。「足元の筋肉が衰えているから」とかね。「鬱の初期症状では?」とかとかとかね。
そう言われてみれば、そうかもなあとかそーなんだーとかとか思いつつ、「いまの自分」が感じている「高いところ怖い」とはチョットチガウんだよなあと思いながら、日々老いていってたわけです。毎日老いますので。

この「高いところが怖い」を様々な場所で感じているわけなのですが、なかでも一番驚いたのが
ブランコがめっちゃ怖い
ってやつでした。そうあのどこの公園にもあるブランコ。子供が楽しそうにこぐやつね。普通老人は乗らない。のると『生きる』の志村喬になってしまう危険な乗り物なので。

なのですが私の場合は子がまだ幼いので、ちょいちょい公園に行く機会があるわけですよ。
無目的に走ったり、すべり台連続50回というサーキットトレーニングみたいな休日を過ごすことがあるわけですね。その流れでブランコをこぐことがあるのですが、これが滅法怖い。信じられないくらい怖い。絶叫マシンですわ。むちゃくちゃ怖いのよ。
なので同年代の人とかに、いまブランコ乗ってみて、めっちゃ怖いから、とオススメしてるのですが特に誰も興味ないみたいです。苦笑するしかない。

なんでこんなものが怖いんだろうか?
ちなみに鉄棒も怖い。ぐるんと回ったりするととても怖い。さらにいえば、ぐるぐる回るのは全部ダメになってると気がついた。
目をつぶってその場でぐるぐる回って、そのあと歩くやつあるやん? そう、スイカ割り正解。それ系のやつも、信じられないくらいグワングワンして、へたりこみますわ。これなんなん。

現状、私の仮説としては「三半規管ポンコツ化」説ですかね。思い起こせば子供の頃とちがって、自分の身体をあっちにゆらしたりこっちにゆらしたりということが減った。皆無であります。
日常的にバイクに乗ったりサーフィンしたりしたら、全然ちがう気がする。あとフィギュアスケートでぐるぐる回ったりとか。
いつぞやにテレビ番組で、安藤美姫選手(当時)がマシーンでめちゃくちゃ回転させられて、そのまま颯爽と歩く姿を見た記憶がある。「三半規管って鍛えられるんや!」とその時思いました。そう思えば、私もこれから毎日ぐるぐる回ったり、ブランコ乗ったりしてたら鍛えられるんだろうか?

そんなことをつらつら考えている時に、『コロガル公園』シリーズなどを手掛けてきた会田大也さんと会って話す機会があった。会田さんはYCAM(山口情報芸術センター)等で活躍するミュージアム・エデュケイターで、ふんごいおもちろい公園のようなものを作ってる人だ。
そんな会田さんが、公園で遊ぶ子供を長年観察してきて、彼らが面白がっているかというと
・重力
・速度
・遠隔操作
の3要素だと言う。

わかるわ〜。うなづきすぎて2つほど首がちぎれ飛びましたわ。子と公園に行くと、まさにこの3要素を存分に味わっているのを感じる。「遠隔操作」は説明が必要だと思うが、話すと長くなるのでまた!
で、私はうなづきつつ「あ!」と思ったのですね。
ちょっと待てよ、と。
もしかして、この「ブランコがめっちゃ怖い」は「ブランコがめっちゃ楽しめる」ということなのでは?? と。
子供が回転遊びなどの三半規管を半端なく刺激する遊びが好きなのでは、いろんな説明があるようなのですが、それはひとまずおいといて、いまの自分の「めちゃ怖い」は、近所の公園のブランコ=絶叫マシン、と考えると、これはとてもお得な状態になっているのではないでしょうか?
徒歩5分で絶叫マシンに乗り放題なわけですよ。
そうか、そうか、そうだったのか〜、というわけで、しばらく積極的に元気よくブランコに乗ってみたいと思います。

元気がよすぎれば『生きる』に見えることもないだろう。逆に、失職したことを家族に告げられず公園でやけくそにブランコを漕ぐおっさん、に見えるかもしれないが….

それはさておきお知らせです。公園についていろいろ会田さんと話していることが発展して、期間限定の「展示という名の遊び場」を作ります。ざっくり言うと、毎日中身が更新されていくダンボールの迷路です。さっき書いた3要素とはまた別のアプローチですが、関西近郊の小学生たち、ひとりもこの原稿読んでないと思うけど、よろしくね!

↓これ

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