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レポート | 2024年7月のいとち | 出会いと別れ

7月に入り、序盤こそは梅雨の空模様が続いた鹿島ですが、中旬以降は暑い日が増え、夏の陽気が続きました。特に梅雨明け間近に迫った7月の後半は一気に気温が上がり、外でのワークはちょっと厳しそうな雰囲気に。涼しいと言われているいわき市ですが、この数年は本当に暑い夏が多いです。

気温に負けずにいとちも熱く取り組もう! ということで、7月もさまざまなプログラムを実施しました。通常のプログラムだけでなく、夏のシーズンは学生たちの訪問も増えてきます。7月は、帝京大学医学部、一橋大学経済学部の学生がやってきてくれました。全体のラインナップはこんな感じ↓

7月2日 まち歩き(金光寺そば)→ 高橋さんふりかえりワーク
7月9日 どせばいいカードWS
7月16日 さくらんぼ保育園
7月19日 帝京大学医学部5年生の見学受け入れ
7月23日 医療創生大の学生2名ふりかえりワーク
7月31日 一橋大学経済学部・井伊ゼミいわき合宿

特に、一橋大学経済学部の学生たちは、医療を地域経済の観点から考察するというミッションを抱えての訪問。そんな学生たちと、鹿島で地域医療に関わる医療人たちの対話は、とても濃い時間となったようです。では7月のいとちの活動を、ザザザっと振り返っていきましょう。

忘れられやすい足元の歴史

7月2日は、いつものようにまち歩きです。この日は、いとちの活動拠点になっているかしまホームのすぐ近所にある「金光寺こんこうじ」を訪ねました。金光寺は真言宗のお寺で、久保地区、船戸地区に多くの檀家を抱えています。まさに「ジモト」のお寺です。

金光寺の創設は大同年間(西暦806年から810年まで)とされて言われていますから相当に古いです。もう1200年近く、この土地を見つめてきた寺ということになります。大きな寺だったようで、明治初期にはこの地に小学校も建てられ、「鹿島小学校発祥の地」の石碑も建てられています。

みんなで金光寺周辺を巡りました
裏山から望む、久保の街並み
土と共にある暮らし

裏山を登ると、山中に崖の土を掘った磨崖仏のようなものも見ることができます。教育を担い、祈りを捧げ、地域の人たちが集う。金光寺のあるこの場所が、おそらく久保地区の中心だったのでしょう。なんとなく、かつてこの地域に暮らしてきた人たちの暮らしが思い浮かぶようです。

このまちの歴史を知ることは、すぐに医療に直結することはないと思いますが、この風景を、歴史を知っておくことで、患者の暮らしを想像するきっかけになるかもしれないし、会話の引き出しが増え、コミュニケーションを円滑にすることもできるかもしれない。いや、それ以前に、知らなかったことを知ることは楽しいものですし、おもしろいものですよね。

夜からはインターン高橋さんの追い出しナイト
卒業制作として「いとち通信」を制作していただきました

夜からは、いとちプロジェクトに3か月間、インターン生として関わってくれた高橋果歩さんの送別会を兼ねたいとちナイトを開催。高橋さんに、インターン期間中の「学び」についてプレゼンしてもらいました。

大学では国際学を学ぶ高橋さん。ワークの時間よりも、異分野だった医学部の学生たちとの対話、何気ない会話などから、医学を学ぶ学生の考えや悩みなどが垣間見れておもしろかった、と振り返っていました。普段の「くらし」が、「医」との距離を縮める時間になっていたようです。

高橋さん、この3か月の集大成として、いとちワークの模様を伝えるためのミニ冊子「いとち通信・特別版」の制作もやってくれていました。得意の執筆や編集スキルで、いとちワークの見どころや内容をまとめてくれています。かしまホームを中心に、市内の複数の場所で配布しています。短期間でよくまとめてくれました!

高橋さん、次のインターン先でもがんばってください!

互いの死生観がぶつかる時間

7月9日は、「どせばいいカード」を使ったワークを行いました。このカードは、自分がどのように最期を迎えたいのかについて書かれたカードを、対話を通じて最終的に3枚選んでいくというカードゲーム。

新しいカードと手持ちのカードを交換するとき、自分がどのような価値観なのか、どのような印象を持っていたのかを言葉にするので、遊んでいるうちに、その人その人の「死生観」が出てきます。それがおもしろいんです。

自分にとって譲れない価値観をさらけ出す時間
それぞれのテーブルで盛り上がります

自分がどのような最期を迎えたいのか、というわたしの思いだけでなく、目の前の相手がそれについてどう考えているのかを聞く時間になるため、共感や違和感も含めて他者を理解するような場になるはずです。発話を促すツールでもあるので、深いテーマのわりに楽しい時間を過ごすことができます。

地域医療は、終末期医療や高齢者の在宅診療など、誰かの死に直面することも少なくありません。患者の数だけ考えがあり、家族の捉え方もさまざま。今回のワークでも、参加者同士が距離を縮めながら、人生の最期と共にある医療について、じっくりと語り合うことができました。

第3火曜日にはさくらんぼ保育園で実習です
園庭を駆け回って、医療と地域の交差点を探していきます
健康優良児にとって医療とはいかなるものなのでしょう

薬剤師にとっての地域医療

7月23日には、3か月の実習を終えた医療創生大学の三留さん、鈴木さん、2名の学生からの報告プレゼンをしてもらいました。

これまでの学びを丁寧に言語化してくれた鈴木さん
まち歩きでの気づきを語ってくれた三留さん

医療創生大の研修は3か月続きます。およそ10回以上、いとちワークに参加してくれています。普段とは違う学びのフィールドに戸惑うこともあったかもしれませんが、2人とも、薬剤師という将来の立場と重ね合わせながら、かしまでの学びを言葉にしてくれていました。

人の家族的・社会的・地域的背景をみるという全人的医療の基本姿勢は、薬剤師にも重ね合わせられるものが多いと思います。いとちワークの時間で学んだことが、2人のこれからに役立つときが来ることを願いながら、これからの活躍に、エールを送りたいと思います。

福島県立医大のBSL(Bed Side Learning:臨床実習)も継続
中山文枝先生からさまざまなアドバイスが送られます

もちろん、福島県立医科大学の学生が平日に参加している「BSL(臨床研修)」も継続して行われています。こちらがあくまで本筋の実習であり、学生たちは病院、施設、在宅を問わずさまざまな場で学びます。だからこそ、いとちワークの時間も輝く。病院や施設の内と外の視点のちがいなどに注目して、ぜひあなたもいとちワークに参加してみてください。

新たな展開も

別れがあれば出会いもあります。

7月は、帝京大学医学部、一橋大学経済学部の学生が、かしま病院を訪れてくれました。地域医療を学びたいという学生の選択肢に「いわき」や「かしま」が入ってきたということに、活動の広がりを感じます。

特に一橋大学の学生は、普段経済を学び、経済の側面からこれからの地域医療について考えている学生たち。普段は統計や数字、経済学の知見で地域医療を学ぶ彼らが、数字に置き換えられない一人ひとりの人生に向き合い、その集合体ともいえる地域を感じたとき、どんな揺らぎがあったのか。あるいは逆に、現場の医療人たちはなにを考えたのか。

地元のテレビ局、テレビユーふくしまでも取り上げてくださいました。リンクを紹介しておきます。ぜひみてみてください。

8月は夏休み期間で、毎週火曜日のいとちワークはお休みとなりますが、福島県立医科大学の3年生が「いわき地域医療セミナー」でやってきてくれますし、杏林大学、東北医科薬科大学の合宿も控えているうえに、今年は、10月に「ふくしデザインゼミ」のフィールドワークも行うため、その準備なども始まります。

新たな出会いに期待しながら、これまでいとちの場で学んでくれた学生たちへのエールを、改めて送りたいと思います!! ではまた来月!!

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