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糸と魚と川Vol.02イベントレポート① ~3Mプロジェクト&複業人材マッチング~

2022年2月24日、駅北広場キターレ in 糸魚川にて「外と中、関係人口とローカルプレーヤー・企業・団体との接点をどう作り広げていくか?その先の未来は?」をテーマに2人のゲストをお招きして、第2回となるトークセッションがおこなわれました。

本記事は、そんなイベントの内容をまとめたものです。

~今回のゲスト~
・株式会社カネタ建設 代表取締役 猪又直登氏
・株式会社Riparia 代表取締役CEO 室田雅貴氏

イベントでは以下の4つのテーマについて話がされました。

1. 糸と魚と川の活動紹介
2. 3Mプロジェクト、複業人材マッチングについて
3. ゲストトークセッション

◎糸と魚と川プロジェクトとは

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まずは前回に引き続き、糸魚川市産業部商工観光課 企業支援室 山崎和俊さんより『糸と魚と川プロジェクト』について簡単にご説明いただきました。

糸と魚と川とは、持続可能な人・物・金の循環を生み出し、「そこに関わる人みんなが幸せを感じられる街を創りたい」という想いを持つメンバーが集まって立ち上げた活動全体の窓口となるプロジェクトです。

詳しくは下記URLの『糸と魚と川プロジェクトがスタートしました!』をご覧ください。
↓↓↓
https://note.com/ito_sakana_kawa/n/n3f771adde3f2

続いてモデレーターである株式会社MOVED 代表取締役である渋谷雄大氏より、MOVEDが糸魚川に関わるようになった経緯をご説明いただきました。

◎いかにしてMOVEDが糸魚川を応援するようになったのか

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株式会社MOVEDは「誰もが自己実現できる社会へ」をスローガンにフルリモートで働くメンバーが集まる会社です。
メンバーには本日のテーマでもある『複業』を認め、自由な働き方を推奨しています。主な事業内容は下記の3つです。

・『つたわるプレゼン』 プレゼン研修・セミナー研修
・『ハタトレ』     IT導入・業務改善支援
・『Cloud University』  クラウドサービス研修

これらの事業を通じて、数年前に糸魚川と繋がりが生まれました。その後、何度も糸魚川を訪れる中、この地の可能性を感じ、もっと広く糸魚川の人や土地の魅力を伝えていきたいと思い、現在に至ります。


続いて猪又さんより、御自身の事業、そして3Mプロジェクトについてご紹介いただきました。

◎猪又さんプロフィール

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1994年、株式会社タカラ(現タカラトミー)に入社。1999年に糸魚川へUターンし、家業であるカネタ建設へ入社し、2001年には代表取締役に就任。

その他にも、有限会社糸魚川タクシーの代表取締役、共同代表として糸魚川重機工業株式会社、株式会社三和の代表取締役も務めています。

また本日のテーマである『3M(緑でつなぐ未来創造会議)』の座長も務めています。

まずは、そんな猪又さんが経営するカネタ建設についてご紹介しましょう。

◎暮らしワンストップサービスで地域を豊かに

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1933年に起きた糸魚川大火の際に、猪又さんの祖父に当たる初代代表が、地元の復興のために製材所として立ち上げたことが始まりです。現在は総合建設業として、一般家庭を中心に地元の素材と気候風土を活かす設計・建築などをおこなっています。

また、建設業の他にも『暮らしワンストップサービスで地域を豊かに』と掲げ、家の中で健康に暮らすこと、在宅での介護、不動産の引き継ぎなどを総合的にサポートできる地域のプラットフォームのようになれる企業作りをしている会社です。

そして、カネタ建設では年に1度、夏にオレンジフェアという大きなイベントを開催しています。

◎地域に根付いた自社運営のイベントを開催

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オレンジフェアとは「子ども達にカッコイイ大人の姿を見せたい」、「楽しい思い出の1日を地元で過ごしてもらいたい」という理念の基づいて開催されているイベントです。

2021年で17回目の開催となり、下記の3つの運営方針をもとに計画されています。

・すべて手作り
・若手育成の舞台
・「人」の展示会

オレンジフェアの詳細はこちら。
↓↓↓
https://youtu.be/t99wsJL4nmA

17年間開催されていることで、始まった当時に子どもだった人も大人となり、糸魚川を出たとしても、その人達が故郷を思うときに浮かんでくるものの1つとなっていると猪又さんは語っておられました。

このようにまちを愛する猪又さんは建設業を営むからこそ、糸魚川の大きな資源である杉材に着眼。
そこで始まったのが3Mプロジェクトなのです。

◎3Mプロジェクトの生まれたきっかけ

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糸魚川では年間189億円もの巨額な資金が外部へ流出している状況です。また市内面積87%が森林であり、そのほとんどが活かされていません。豊富な資源を持っているにもかかわらず、12.4%しか地元の杉材を使っていないことで、杉材として適齢期を過ぎた杉が減っているのです。

そこで「森林は油田だ」をテーマに、糸魚川の森林資源に関する川上から川下までの企業・団体による初の官民一体の事業として下記の4段階の構造を軸に3Mプロジェクトが立ち上がりました。

■使命(Mission)
・全国有数の森林資源を生かした産業育成で持続可能な糸魚川をつくる

■目指す姿(Vision)
・地域キャッシュフローを守り自立経済を実現

■価値観・行動指針(Value)
・糸魚川プライド・とことん地元主義!
・ 業界の垣根と常識を取り払い、ONE TEAMになる
・ 数字で語る(経済効果を常に意識)
・ 地元を愛する次の人財を育てる

■戦略・計画(Strategy)
・国策との連動(林野庁・森林環境譲与税他)
・糸魚川森林資源のブランディング
・ 市民共感・愛着の醸成と利用促進
・ 住宅モデル・森林観光などの開発
・ 製品・サービスの販路拡大

では、3Mプロジェクトについて詳しく見ていきましょう。

◎3Mプロジェクトを支える4本の柱

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■商品開発/ブランディング
糸魚川の杉は構造材には向かないとされてきましたが『重ね・合わせ梁(ばり)』の研究開発をすることで無垢材の美しさを保ちつつ、強度を兼ね備えた木材として打ち出すことに成功しました。また、これまで建築業者からは嫌われてきた『黒芯』と呼ばれる木目がある木材を逆に利用し、オシャレなデザインの家具などに活かす試みを始めています。

■地域団体とのコラボ
「市民の手に届くあらゆる身近な場所に糸川の杉を使う」と銘打って『糸と魚と川vol.01』で五十嵐さんからご紹介いただいた美山プロジェクトとコラボし、糸魚川産の杉を使ったツリーテラス作りも手掛けています。

■森林教育・レジャープログラムの開発
地域の子ども達に向けて、各世代に対して、糸魚川における生業を理解してもらうため、森林を使い『森の教室』プログラム開発と定期的にイベントを開催しています。プログラムでは実際に木材を使ってキャンプをしたりするなど、身近な資源の活用方法を学べます。

■糸魚川版認定住宅モデル開発
糸魚川市と連携して、市民・企業・行政がWIN-WINとなれる政策の実現を目指します。これは建築物を作るときに、ある一定以上の割合で地元の杉を使用すると認定される制度づくりです。

そして、ただ地元の杉を使うのでなく、同時に断熱性などの住宅としての性能を上げることで、消費電力の削減も狙える試みとなっています。また、断熱性のある高性能な住宅と、そうでない住宅では健康に大きく影響があり、一説では介護年齢が4歳程度早まると言われているのだそうです。

これらのプロジェクトを通して、糸魚川の森林資源を活かそうとする試みが3Mプロジェクトなのです。


◎猪又さんを突き動かすエネルギーの根源は?

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最後に「猪又さんを動かすエネルギーの根源は?」と聞かれ、このように語りました。

猪又:自分から0から始めたのではなく、周りから後押しをされてやってきました。「やってくれないか」と期待されると、それに応えたいと思うので、そこから勉強が始まったんです。自分は計算が苦手なので、戦略的には動けないが逆にそれが良かったのかもしれません。結果論になりますが「そこに関わる人のエネルギーが湧くかどうか」が大切なんだと思います。

この後、3Mプロジェクトの話にも触れましたが、詳しくはトークセッション編で改めてお話いただくこととなりました。

続いて、室田さんより複業人材活用による「人材不足解消の仕組み」について、ご説明いただきました。


◎室田さんプロフィール

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群馬県前橋市出身、新潟大学工学部、同大学院在籍中の令和元年に株式会社Ripariaを創業しました。

学生の頃からエンジニアとしてWeb、iOS、セキュリティ、ネットワークの領域に専念。地方と都会を行き来しながらエンジニアとしての力を高め、2020年にヤフー株式会社へエンジニアとして就職しますが、Ripariaの経営に専念するため退職するため、新潟にR(ルーツ)ターンしました。

※R(ルーツ)ターンとは「思い入れのある地へ戻る」という室田さんが作った言葉だそうです。

そんな室田さんの経営する事業『ともるい』についてご紹介いただきました。

◎マッチングサービス『ともるい』とは

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地方の企業と都会で働く人とのマッチングサービスとして、『はたらく』という切り口から関わる人が増やせると、新潟に対して愛のある人が増えるのではないかと考えて始まった事業です。

特に「地方に貢献したい」と思う人とのマッチングを目指しています。2020年8月に始まったサービスですが、現在では約1200人のワーカーが登録しています。スタートアップから老舗の中小企業・行政まで幅広くマッチングしており、平均マッチング率は86%と多くの企業とワーカーの繋がりを実現しているのです。

しかし、なぜこれほどまでに高いマッチング率を誇るのでしょうか。

◎共感が人を集める

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『ともるい』では、共感を大事にしているため、ただの仕事ではなく自分の存在を認めてもらうことに価値を見出す人が多く、20〜30代、更には10代など若くて優秀なワーカーが集まっています。そのため大手企業よりも良い意味で安くて優秀な人材とマッチングできるのだそうです。

また、より共感を得るためにも『ともるい』に掲載する文章は、賃金や労働時間など、ただの募集要項だけでなく、仕事の背景であったり、その企業で働くことで、どんな未来が訪れたりするかなど、共感に繋がるメディアのような役割果たすものとなっています。

それでは実際の例をいくつかご紹介します。

◎共感が生んだ新たな価値

■ゼロからマーケティングの仕組みを構築【老舗料亭×Webマーケター】
新潟県燕市にある明治時代から続く老舗の料亭明治屋。代々受け継がれた伝統の味を地元だけでなく、全国へ届けたいという想いから、これまで未知の領域だったWebマーケターの募集を始めました。
すると、コロナ禍で店舗への集客が難しくなりましたが、オンラインショップを立ち上げたことにより約10倍の売り上げを達成したのです。

■社外から新たな目線で企画を立案【酒造×プランナー】
1892年に創業した歴史ある佐渡島の小幡酒造。新たな取り組みとして、旧校舎を酒造りの場として蘇らせるプロジェクトを推進し、卒業生が集まる場所として同窓会を企画しました。更に新たな視点を取り入れたいと『ともるい』で共に企画してくれる人を募集したところプランナーとマッチングし、『酒払い』という報酬はお酒で支払う斬新な発想を組み込んだのです。

他にもいくつかの実例がありますが、詳細は『糸とか輪と魚 Vol.02』の動画をご覧ください。 ※1:08:30~頃
↓↓↓
https://www.youtube.com/watch?v=6ciW4vPuxd0

このように都市部の様々な分野のワーカーが集まり、マッチングしているのです。


◎ぼくらに迷う楽しさを

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これは『ともるい』が掲げるVisionです。色々な課題に対して選択肢がないことが課題の根本にあると室田さんは語っておられます。

新しい選択肢に出会わなければ1つの道を進んでいたかもしれませんが、一度出会ってしまうと、そこに迷いが生まれます。その迷うことを楽しめるような生き方や暮らし方をする人が増え、共感の輪が広がることを目指すのが『ともるい』であると締めくくりました。


◎共感が第2の故郷を生む

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最後に共感の輪が広がることについて、室田さんはこのように語りました。

室田:『ともるい』は、新潟出身で今は東京に居る人に向けて作ったサービスなんですけど、東京出身で東京在住のワーカーも多く在籍しているんですよね。東京出身の方は自分の地方というものを持っていないので、それを作りたいと思う人が一定数いるんです。

そして、その地方の仕事を何度も引き受ける中で、実際に足を運ぶようになって、その地方を好きになるんです。すると、そこが東京出身のワーカーにとって第2の故郷になるんですよね。


イベントの続きはこちら。
↓↓↓
『糸と魚と川Vol.02』イベントレポート② ~トークセッション編~


プロジェクトに参加希望の方は、下記のメールアドレスまで。

糸魚川市産業部商工観光課企業支援室(担当:山崎)
kigyo@city.itoigawa.lg.jp

株式会社MOVED(担当:渋谷)
info@moved.co.jp