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糸と魚と川vol,10/糸魚川に惹かれた若き学芸員の世界に迫る〜糸魚川に恋して職業にして移住しちまったよ編〜

2023年3月27日(月)駅前広場キターレにて開催!糸と魚と川もvol,10まで来ることができました。今回は、糸魚川市役所担当の山崎が持ち込み企画!!糸魚川に惹かれた若き学芸員の世界に迫る〜糸魚川に恋して職業にして移住しちまったよ編〜糸魚川に惹かれた「学芸員」さんにフォーカスし、3名の学芸員が登壇し、各々の心が動いた所を熱く熱く語るトークセッションが繰り広げられました。今回はいつも以上にマニアックになっています!

本記事はそんなイベントの内容をまとめたものになります。ぜひ糸魚川に魅了された学芸員の表情、コトバを感じていただければと思います。

「糸と魚と川」とは…

糸魚川の魅力を市内外の方々、特に、移住に興味のある方向けに向けて発信し、自然豊かな場所、地方という視点が出てきた際に「糸魚川」という選択肢を作ってもらう、そんな糸魚川と日本全国の循環を創造することを目的としたイベント。

渋谷:10回目きましたね!第1回目から約1年半くらいですかね。

山崎:そうですね!2021年11月からです!

渋谷:早速、嬉しかったトピックがあったみたいで・・・

山崎:言っていいですか笑
庁舎でばったり、ご夫婦に会ったんですよね。「あ!山崎さんだっっ!!!」と。
私はそのご夫婦を知らなかったんですけれども、話を聞いたら、奥さんが糸魚川にルーツがある方だということで、奥さんのお母さんは糸魚川のご出身で、糸魚川に何度か来たことがあるらしく。
そして、なぜか、この糸と魚と川を知って、アーカイブをずっと見てくれていて。
旦那さんから言わせると、「ちょっと異常なくらい見ている笑」だと。笑

渋谷:じゃあ、再生回数のほとんどはその方・・・?笑

山崎:ということになりますね笑「糸魚川に空き家を買いました!」という報告をアポイントなしで僕にしてくれたんですよね。
思いがあっても踏み切ることができなかったけど、糸と魚と川を見て、背中を押されたという言葉をもらって、本当に嬉しかったですね!

渋谷:きっかけを作ることができましたね。

山崎:やりたいことが叶って本当によかったです!

渋谷:今回10回目ということで、山崎さんからの持ち込み企画ということで!

山崎:そうです!テーマは「糸魚川に惹かれた若き学芸員の世界に迫る」ということでよろしくお願いします!!!

渋谷:学芸員とはどういう人を言うんですかね。あまり詳しくないのですが・・・

山崎:そう言われると思って調べてきました!

学芸員とは…

学芸員は,博物館資料の収集,保管,展示及び調査研究その他これと関連する事業を行う「博物館法」に定められた,博物館におかれる専門的職員です。学芸員補は学芸員の職務を補助する役割を担います。

文化庁ホームページ

簡単に言うと、ある意味変人笑マニアックな人です笑

ー講演者についてー


小河原孝彦 (石の博士)
1983年、東京都中野区生まれ。入学した中学校に理系の部活が地学部しかなかったという理由で、地学に目覚める。2002年、新潟大学理学部地質科学科に進学。大学では鉱物採集の日々を過ごし、糸魚川のヒスイを研究していた縁から、2014年糸魚川市役所に入庁。現在、文化振興課博物館係(糸魚川フォッサマグナミュージアム)勤務。専門は、ヒスイなど岩石、鉱物について。最近の研究テーマは、糸魚川のジオフードの紹介とおいしいお店の探索。

研究のテーマは「鉱物学」
「鉱物」というと、地球に存在する無生物である特定の成分をもつ個体です。
それを研究するのが鉱物学です。
生物(地球上にいあるもの)は目で見かけますよね。でも、大地の真下って何でできているんでしょう?
生物は実は地表にいるものだけなんですよね。地下にある岩石というのは全て好物でできている。つまり、鉱物を学ぶことはそれだけ意味があるということです。鉱物は、顕微鏡を使っても何もわからない、小さすぎる世界なんです。
鉱物を作っているものの元の部分(原子)を見なくてはいけない。そのために、粉末X線回析装置や透過型電子顕微鏡を使うんですよね。

ヒスイの研究、何が楽しいの?
ヒスイの凄さは2つかなと思います。下記の両方を兼ね備えた日本唯一の宝石なのかなと思います。
①科学的に研究しても面白い
②歴史・文化的に研究しても面白い
今日は、科学的に研究するというお話ですが、地球の進化の歴史がわかるということをお話しします。地球そのものも実は進化を遂げています。
地球は最初から青い星ではなかったんです。マグマの塊であったことも全てが氷の塊だったこともありました。地球も進化をして青い星になっているというのが色々な研究からわかっています。
地球時計という「地球が誕生して46億年。それを12時間で表すとどうなるか」というものなんですけれども、人類が誕生したのは「11時58分」だそうです!とんでもなく最近の話ですね。
ヒスイは石の中でも古い方なんですけれど、地球時計でいうと「11時」くらい。5億年前でさえ、地球の歴史に比べると最近なんですよね。
一番古いヒスイで5億年前に生まれたんですけれど、もっと昔も石は誕生しているんですよね。でも、ヒスイは5億年前しか生まれなかったどうしてでしょう?
答えは、地球の進化に隠れていて、プレートの運動が関わっています。
ヒスイが地球上のどこでできるのかというと、プレートが沈み込む場所でしかできないんです。周りよりも温度が低く、圧力が高いところ、割と特殊な環境でヒスイは生まれます。
46億年前から地球は、41億年かけてヒスイができる環境が地球に誕生したことがわかります。昔より冷えてきて温度が下がり、圧力だけが高くなっている状態が生じて初めて、ヒスイが誕生したり、生物が誕生したりしている。
実は、ヒスイから、地球の進化の歴史がわかるという面白い話もできるようになるということなんです。
なので、糸魚川へ来て、ヒスイの研究をやっているということになります。


小池悠介(縄文の博士)
1989 年、新潟県新潟市生まれ。父の影響で歴史が好きだったが、高校時代に発掘調査の現地説明会を見学し考古学の道を志す。2008 年、奈良大学文学部文化財学科に入学。大学時代は学業の傍ら奈良県立橿原考古学研究所の発掘調査に従事する。2014 年糸魚川市役所入所。現在は教育委員会事務局文化振興課文化財係に所属。専門は近畿から北陸の縄文時代晩 期の土器。糸魚川でのライフワークは国史跡寺地遺跡の詳細の解明すること。

糸魚川の遺跡とヒスイ
糸魚川には、国史跡の「長者原遺跡」と「寺地遺跡」、2つの縄文時代の大きな遺跡があります。
「長者原遺跡」とは・・・
今から五千年くらい前の縄文時代中期と呼ばれる時代に栄えた遺跡で、木を切り倒すための磨製石斧がたくさん作られていた場所です。磨製石斧を作るために使われていたのが「ヒスイ」なんですね。「ヒスイ」は装飾品のイメージがありますが、一番最初の利用例はハンマーなんです!ヒスイのハンマーを作って、全国に流通させており、北陸最大級の遺跡です。
「寺地遺跡」とは・・・
縄文時代の晩期の遺跡です。4本の柱の足元にたくさんの石がひいてありました。そこはきっと祭司のための場なんですが、そこに大量に破片や大きいものなどヒスイが撒かれているんです。少し特異。その後ろの建物にはヒスイの加工が行われていたのではないか?と言われている遺跡です。

ヒスイがどれだけ広がっているのか?
糸魚川を中心に、東日本、北日本、多いのは長野県のあたり、関東平野、三内丸山遺跡などがある北東北など、たくさん流通しています。
それが縄文時代晩期になると、西日本にもヒスイが広がっていきます。沖縄県まで流通するんですね。
弥生時代になると、北九州、出雲、吉備など、強い勢力を持つ地域に分布します。古墳時代になると、近畿地方に増えます。近畿地方の古墳から出土しているんです。なんなら海外にも流通しています。全部が全部糸魚川のヒスイとは限りませんが。。

多くの文化財が糸魚川にはある!

小滝川硬玉産地/青海川硬玉産地/奴奈川姫/寺地遺跡丸木船/寺地遺跡/長者原遺跡

この6つのもの全部と関連づくもの、「ヒスイ」。

海上信仰資料/伊藤家住宅/尾道産石造物/バタバタ茶/牛つなぎ石/松本街道・ボッカ資料/山口関所跡

こちらの8つと繋がるのは、「塩」。
テーマを一つに絞っても、たくさんの文化財がつながり合ってるのが糸魚川です!いろんな分野の文化財を繋げていくと、糸魚川の文化財がより楽しめると思います。


香取拓馬(地震の博士)
群馬県桐生市出身。幼少期は空手・書道・体操・サッカーに明け暮れる。2011年に新潟大学入学。入学直前の大震災がきっかけで、地震や断層を研究する道に。在学中は探検部に所属し、全国の山や川をフィールドに活動。2012年にはU21ラフティング世界大会に出場。2017年に研究拠点をつくば市(産総研)に移し、第60次南極地域観測隊に参加。2020年から現職である糸魚川市ジオパーク推進室に所属。好きなことは自然と対話すること。

石、地震、地層に興味を持ったきっかけ
幼少期
地元の群馬県立自然史博物館に行くことが家族旅行の定番になっていました。今思い返すと、恐竜が生きていた時代、それよりもっと前の時代は、人類誰も見たことがない世界ですけど、その時代のものが手の中にあるというのがワクワク感を感じて、ロマンではないですが、好きだったんだと思います。もう一つ理由はあって、博物館で働く学芸員さんがとってもかっこよかったんです。アカデミックで難しい話なはずなのに幼稚園児にわかりやすく教えてくれて憧れていました。
大学時代
大学入学の前に、東日本大震災を経験したんです。直接的な被災とかはなかったのですが、これがきっかけで地震、地層の研究の道に進みました。
24歳
つくば市地質調査総合センターという研究所に勤めます。この研究所、実はナウマン博士が設立に関わっています。
2018〜2019
第60次南極地域観察隊として、南極の石を調査していました。南極の石は実はめちゃくちゃ古くて、一番古くて40億年前の石と現在の石が混在しているのが南極なんです。なので世界中の研究者が南極に集まります。
27歳
糸魚川市商工観光課ジオパーク推進室フォッサマグナミュージアムに所属。

地震はなぜ起こる?

江戸時代にはなぜ地震が起こるかは解明されていなかったんですけれども、当時はナマズが地下に住んでいて、ナマズが暴れると地震が起こると考えられていたんです。実は写真には「要石」が描かれているんですが、要石が地下から打たれていて、頭(鹿島神宮)と尾(香取神宮)を2つの要石で押さえ付けているという話で、今も現存しています。(頭と尾は約10キロ)現在は科学の進歩もあって、地震のメカニズムは明らかになっています。2014年神城断層地震を例にお話ししますと、奥側が明らかに持ち上がっているんですが、下記の黄色い部分(断層)を境に、奥側が持ち上がることによって揺れが発生し、地震が発生するんですね。(下左図)じゃあ、その地下はどうなっているのかということで、トレンチ調査というもので、断層の下を掘って断面を見る調査です。(下右図)白い矢印を境に、色の違う地層が広がっていると思います。よく、断層は線で考えられがちですが、実は面なんです。

断層が動いた際に地下の岩石を見てみると、割れたり、細かく破片状になったり、引き伸ばされたりするんですね。それを調べていくと、実は、下記を解明することができます。
・いつどのくらいの地震が発生したか(防災)
・山や谷がいつ、どのようにできたか(地形発達史)

断層:糸魚川ー静岡構造線
糸魚川の真ん中に通っていて、東側には、日本列島ができた後の新しい岩石が、西側には日本列島ができる前の古い岩石が、糸魚川で接しているという少し変わった場所になっています。
フォッサマグナパークは、糸魚川ー静岡構造線の断層路を直接観察できる場所となりまして、日本縦断しているので一見どこでも見れそうですが、これだけ綺麗に見えるのは糸魚川のみになっています。
・日本最大級の断層
・日本列島誕生の痕跡
・プレート境界の可能性
上記の理由から、糸魚川ー静岡構造線は研究対象として、一番面白い断層の一つです。

ートークセッションー

山崎:外からの目線で糸魚川に足りないもの、マイナスのイメージを教えてください。

小河原:糸魚川の方って、恵まれすぎていて、それらの価値について深く考えないところがあるのかなと思います。

小池:お祭りなどの伝統を当たり前だと思っていて、すごいと思っていない。それをうまく活用していくというところがもう少し頑張れるといいのかなと。

香取:コミュニティが濃すぎて、少しだけ入りずらいなと思うところはありました笑特に若い人の知り合いがあまりいない、若い人が集まる場所がないというところもありますね。

渋谷:3人のゲストがお話ししていること、本当に同意です。プラスして、若いコミュニティはあるのか、知らないだけなのか。。あるのであれば、発信していければいいですよね。声を上げる人や伝える人がいるといいですよね。

山崎:本当に自分の心がときめいて、本当は人に教えたくない!というところを教えてください!

小河原:晴れた日の山は本当に綺麗です。すごく近い山が一面に見えていて、自分が登ったことがある山を眺められると飽きないです。

小池:糸魚川には山城がたくさんあって、山城に登ると街の臨場感を感じることができるんですね。ガチな高い山じゃくても楽しむことができます。

香取:山被りはアレなので、マリンスポーツですかね。シーカヤックのイベントをやったり、景色とか最高ですよ。

ークロージングー

(やってみたいこと)

小河原:もっともっと石を楽しんでほしいと思っています。例えば、石で料理をしてみたり、芸術をしてみたり。五感を使ったものに訴えかけられれば、もっと面白いのかなと思います。

小池:長者原遺跡に1週間くらい携帯なし何もなしで、遺跡で暮らしてみるというのをやってみたいです。色々遺跡にはストーリーがあるので、ストーリーを紡いだリアル体験をしたいなと思っています。

香取:音楽が好きで、ロックフェスをやりたいです。ロック=音楽じゃないですよ。石です笑「こんなものも石!?」というところが鍵だと思うので、様々な石を体験してもらいたいと思っています。

▼今回のイベントを動画でチェックされたい方はこちらから!▼
記事ではお伝えできなかった温度感や泣く泣く記事内でカットした部分が動画には載っております。

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「糸と魚と川」に参加希望の方は、下記のメールアドレスまでご連絡ください。
お待ちしております。

糸魚川市産業部商工観光課企業支援室(担当:山崎)
kigyo@city.itoigawa.lg.jp

株式会社MOVED(担当:渋谷)
info@moved.co.jp