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マジがガチに侵食される日

最近気になっていることなのだが私は何かあるたびに「マジかよ?」と口にしていることが多い。
本当に意識していなければたとえ本気と問いただしたいわけではなくとも「マジ?」と相手に確認しているようだ。

一日で何度「マジ?」というのか数えていたら午前中で10回以上言ってしまっていてそれ以上数えるのを止めてしまった。
それくらい無意識的に言っているみたいだ。

一体いつくらいからこの言葉が口癖になってしまったのだろうか?
そう考えているとふとダンプ松本の顔が浮かんだ。


そう。1985年から放送されていたこのコマーシャルである。
1985年といえば私は8歳の小学校3年生である。その時に流行ったこのコマーシャルでダンプ松本がいうセリフ「マジだぜ」が妙にハマったのだ。
だからこそ今でもマジという言葉を深く思い出そうとするとダンプ松本の顔が思い浮かんでくるのだ。

しかしこのコマーシャルが訴求していた商品が「タコヤキラーメン」だということは記憶の中から吹っ飛んでいた。なんでも日清が作った黒歴史的なインスタントラーメンなのだそうだ。


マジは「真面目」の略で、洒落本『にゃんの事だ』(1781年)の「気の毒そふなかほ付にてまじになり」の例が古い。
江戸時代には主に芸人の楽屋言葉として使用されたが、1980年代に若者言葉として流行し、マジに「本気」や「真剣」などの漢字も当られるようになった。
1980年代に「マジ」が流行したのは、日本社会において「真面目」が崩壊したことで、軽薄な言い方で「真面目」を表す言葉が必要になったものと考えられる。
この流行以降、「マジバナ(本当の話)」「マジギレ(本気で切れる)」「マジ顔(真剣な表情)」など、「マジ〜」の形の語も多く作られた。

語源由来辞典

由来辞典によるとマジは江戸時代から続く言葉なのだそうだ。

少し前には「マジ卍〜」なんて意味のわからない言葉も流行ったのだが「マジ」は200年以上も形を変えながらも死語となることなく続いていることになる。


しかしだ。
最近自分が歳をとったように感じる出来事がある。
長女に「マジ?」といつものように確認の意味で尋ねると長女からは「ガチ」という言葉が返ってくる。

ガ、ガチだと…
しかしそういえば長女からはマジという言葉は聞いたことがない。試しに職場のアルバイトの大学生の子たちと話して「マジで?」と尋ねてみたら「ガチっす」と返事が返ってきた。

その他の若い世代、たとえば20代半ばの3年目くらいの社員の子からも「マジかー?」って尋ねると「ガチです」と返事が返ってきたのだ。


色々な世代の人と話していると大体30代半ばくらいに分水嶺があるように思えるのだ。つまり「ガチ」を使うあなたは若くて「マジ」を使うあなたは少し年配ということだ。

200年以上も続いた「マジ」の文化はZ世代によってガチに壊されるかもしれない。もうマジは使われなくなってしまうのだろうか。それはそれで忍びないものである。

しかし私にはもう「マジ」が身体の奥深くまで染み付いている。だから私はこれからも「マジ」を使い続けるだろう。
背伸びして若作りのために今さら「ガチ」を使うつもりはない。マジでそう思うのだ。

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