抵抗
君はいつもストローを逆に指す。
あの蛇腹になっていて曲がるようになっているところをコップに指すのだ。
中の液体がなんであれ、そうする。コーヒー、カフェオレ、アイスティー、牛乳。全部の飲み物でそうする。
理由を尋ねると、「小さな抵抗」と君は言って逆のストローで氷を鳴らした。
私も真似をしてみた。中身はコーヒーだった。
意外となんの不便もなく、こんなもんかと思ったが、ストローを手繰り寄せた時にとても違和感があった。
その違和感は冷たく、しっとりとしたものだった。いつまでも、いつまでも続くような。
私はこの違和感が残る限り、君はここにいて、この違和感がなくなる頃に、「小さな抵抗」をやめるのだろうか。
その「小さな抵抗」は、誰に向けたもので、その違和感の僅かな優しさは誰から貰ったものなのだろう。
私は君の真似をして氷を回してみて、いつもは入れないミルクを入れた。
君は「それが君の抵抗?」と言って笑いかけた。
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