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旅する大学、はじめます!

「旅する大学」には、2つの「旅」があります。
ひとつは、大学そのものが旅をすること。
もうひとつは、学ぶ人も旅をして大学にいくこと。

1.大学が旅をする

キャンパスをもたない旅する大学は、全国どんなところでも、学びたい!という声がかかれば、要望に応じて講師陣をそろえ、一座で旅に出ます。

文化人類学や歴史学などの人文学、政治学などの社会科学、デザインや現代アート、建築など、おもにリベラル・アーツといわれる大学で学ぶ学問をそれぞれの土地に応じて組み合わせ、学びのカリキュラムをホストの方々と相談しながらつくる。

もちろん既存の大学で教えられている授業がそのまま外に出ていくわけではありません。年代も、興味関心も、土地柄も、まったく違う場所におかれた大学の学問そのものが、いろんな化学反応を起こして変身を遂げていくことを期待しています。

それは、教える側と学ぶ側がともに学ぶことを意味します。講座のなかに、地域の人や参加者が先生になる時間をつくる。みんなで外に飛び出し、その土地ならではのエクスカーションやフィルドワークをする。大学で学問を学んできた者がその土地や人から学び、学問そのものがよりおもしろくなる。そんな教える者が学べる場にこそ、意味のある学びが生まれると考えています。

自分たちの町に学びの場をつくりたい。小規模でも、机と椅子、泊まる場所さえあれば、公民館でも、本屋でも、ゲストハウスでも、商店街でも、お寺でも、どんな場所でも旅する大学のキャンパスになります。まだ誰も知らない、おもしろいことを学びたい。そんな思いをもつ人たちとの出会いを楽しみにしています。

2.旅をして大学にいく

旅する大学は「旅行」の中心に「学び」をおく、あらたな旅のスタイルを考えています。観光で行ったことのある土地でも、あらたな学びの場ができれば、何度でも訪ねたいと思える。

たとえ観光名所がなくても、僻地でも、そこでしか学べない場所が生まれれば、どんなに遠くても旅に出たくなる。そんな旅の姿をイメージしています。

観光地をめぐるのではなく、学ぶために旅をする。その土地で暮らす人の隣に、別の土地から旅をしてきた人が机を並べて、ともに学ぶ。いろんな異なるバックグラウンドや経験をもつ人たちが集い、それぞれが直面している問題をともに考え、知見を共有する。

教える者も、学ぶ者も、旅をして、見知らぬ土地の人や町や自然と交流しながら対話を重ねる。そこには、ガイドブックや口コミサイトの情報をたどるだけの旅では経験できない、予測不可能な偶然の出会いと学びのおもしろさがある。それは、コロナ禍でもっとも失われた時間かもしれません。

そこでしか出会えない、でも行ってみないと何が起きるかわからない。そんなスリリングな旅の中心に「学び」がある。それは数日だけの滞在になるかもしれませんし、もっと長い旅になるかもしれません。「学び」に終わりがない以上、「旅」にも終わりはないのですから。

3.大学や学問をもっとおもしろく

いまの大学からは「おもしろい!」や「どきどきする!」といった好奇心を自由に羽ばたかせる余地がどんどんと失われつつあります。大学に閉じ込められてきた学問が、わくわくする旅の出会いのなかで、息を吹き返す。そんな旅する大学が生まれれば、既存の大学や学問ももっとおもしろくなるはず。

なにより、学問を心から楽しむこと。単位とか、学位とか、就職とか、何か他の目的のための手段ではなく、学ぶことそのものを喜びとすること。この「旅する大学」の試みは、現状への危機感にねざした、ささやかな抵抗であり、別の可能性をみずから示していく建設的な提案でもあります。

さあ、学びの旅に出かけましょう!


 「旅する大学」お世話係 松村圭一郎