#329 グレーを楽しむ

　この2〜3日、鈴木くんにいい人ができたら…とか、気持ちを伝えることもできずに鈴木くんが結婚してしまったりしたら…、とか、これまであまり真剣に考えてこなかった可能性について目がいって、すごくつらい気持ちでした。起こってもないのにね。でも可能性としては大いにあるわけで。

　鈴木くんは、口では恋愛結婚に乗り気でなさそうな発言をしているし、何かあればすぐに情報が入るだろう、と思ってあまり気に留めていなかったですが、そもそも興味関心がないなら、恋愛結婚について話題にも出さないだろうし、前の彼女とは結婚をしたくて付き合っていたわけだし、失敗した姿を見られたくないから、と思うようになって、周りの友人には言わずにひっそり恋愛を進めていることもありうるわけで。

　そりゃ〜そうだよな〜。結婚してる身で、落ち込む資格すらないくせに何動揺しまくっているんだわたし……と、言って、自分の感情を否定したくなる気持ちをグッと堪えて、しかたないよね、本能には常識は通用しないもん、好きなものは好きだし、嫉妬するものは嫉妬する！仕方ない！と認めつつ……。

　それでもあまりにも辛いので、ふと、信頼している友人に話を聞いてもらいたくなり、「実は好きな人がいること」「弱かったり、ずるかったり、自分の嫌な部分をつい隠してしまって、誰にも本来の自分を見てもらえないようで辛いこと」を話そうと思い立ちました。

　こんな面を伝えたら嫌われちゃうかもなあ、と思ったりしてましたが、すんなり受け止めてもらえて、むしろもっと仲良くなれたかな、という気がして、ちょっとずつ、嫌な自分も出していくことが、今の自分には必要なことなんだろうなと感じました。

　というアレコレを経て、なんで私こんな鈴木くんに対して縮こまってんだろう、とアグレッシブな気持ちになってきて。
　私、別に法に触れるようなことしてないし、鈴木くんだって「疚しさ0の関係です。」って明言してるし、だったら、好きな時に好きなように、こういうことしようよ！って誘えばいいじゃん。と。

　飲み会以外のデートっぽいこと誘っちゃうのはアウトかな？とか謎の線引をしてましたが、その謎の線引……いらなくね……？？

　いつかは鈴木くんにいい人ができて、二人では会えなくなっちゃうかもしれないし、私か鈴木くんのどちらかがそういう気分じゃなくなっちゃうかもしれないし。だったら誘うだけ誘って、今の私のトキメキを大事にしたっていいじゃん、と。

　鈴木くんは真っ当な人なので、私が行き過ぎているなと思えばさり気なく断ってくれるだろうし、惰性でズルズル行きたくない誘いに乗るような人でもない。だから、断りやすいように逃げ道はちゃんと作ってあげとくくらいの配慮は必要だけど、誘うこと自体をためらう必要はぜんぜんないんじゃないかな、という境地に至りました。

　と、思って、映画を観に行こうよ〜と誘ったら、するっとOKをもらいまして……。なーんだ、やっぱりそうじゃん、私が勝手に怖がって、罪悪感でビクビクしてただけじゃん、と今はすこし軽やかな気持ちです。

　今はまだ鈴木くんに気持ちを伝えることはしない方がいいと思うし、恋愛恋愛したノリを出しえしまうのもよくないと思う。鈴木くんの気持ちは気になるし、白黒ハッキリつけたくなる気持ちもあるけど、すこしずつ、グレーなままでもいいや、グレーなままでいられる今を楽しもう、と、達観できる状況に近づけているのではないかな……と思っています。