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人間の翻訳機能と機械翻訳との類似点 後編

他者とのコミュニケーション手段(言語に限らず)と、頭の中のイメージを介在するものとして「フィルター」というものを考えると整理しやすいなと思ったのはもう20年くらい前のことですが、きっかけとなったのはこの本。

自分では、たとえ英語で話しているときであっても、日本語で考えていると思う。しかし、英語を話すときには、いちいち日本文を作成してから訳すのではなく、言いたいことを言語以前の段階のもやもやしたもの(概念というのかな)から直接英単語に乗せて出すことができる。
ペラペラ話しているときの自分の脳ミソの働きを自己分析すると、言いたい内容や概念に合致する「英語」や「スペイン語」をすばやく検索する機構ができあがっていて、必要に応じた言葉にのせて概念を吐露することができる。私にとっての外国語知識とは、トコロテンを押し出すカタのようなものである。

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トコロテンのカタとは、こんなもの

この網目のところが、言語によって異なるということ。それをフィルターと呼びましょうか。
 
この網の目の作りが縦横だったり、斜めだったり、幅がばらついていたり。
フィルターがきれいに出来上がっていれば(その言語に習熟していれば)、言語情報を得た時にそのイメージを脳みその中に再構築できますが、それが不十分だと情報が全ては入手できず、イメージが不十分なものになります。
逆方向もしかり。
フィルターを形作るものは、単語だったり、文法だったり、慣用表現だったり、発音の体系だったり、文化的背景だったりします。ある事象を言葉で表現するのに用いられるありとあらゆる要素を指します。
 
同じ言語で分かり合えるふたりは同じフィルターを持っています。
 
英語を使えるようになろうとするときに、英語のフィルターを別に作っていくことになります。
母語と外国語が近い場合は、母語のフィルターをコピーしてそれに微調整をかければふたつ目のフィルターができそうです。イタリア語とスペイン語みたいな近い言語の場合です。
日本語と英語だと距離が離れているので、いちから作る必要があり大変です。


 モヤモヤしたカワイイ生き物を英語ではdogと言い、日本語では犬と言い。

このような単語レベルの対応はまだ分かりやすいですが、でもDOGと犬の意味領域が同じ広さ・厚さであるかどうかは分かりません。
オオカミを含める言語もあるかもしれません。
人によって、モヤモヤの領域も異なります。
アルプスの少女ハイジにとっては犬と言えばセントバーナードだけだったかもしれません。チワワを初めて見た時は同じ犬だとは思わなかったでしょう。
このように言語によってその単語の意味領域も異なりますし、その個人のもやもやの領域も知識と経験で異なります。

英語の学習が進んだら英英辞典を使うべきと説く人は、言語によって意味領域が異なるから、dog = 犬 という「一対一対応」から逃れるためにそうすべきだとおっしゃるわけです。
私は英和辞典派だと以前も書きました。

dog にチワワも入るとか、ダックスフントも入るとか。
それは、その後に大量の読書、リスニングで範囲を確定していけば良いと思っています。
まずは英語のフィルターを作って、少しずつ調整していきましょう。

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