見出し画像

洒落たバーで隣の客の会話に入り込んだ話と、武蔵野市の住民投票条例案にかんして

画像1

以前、八重洲辺りのバーに行ったときのこと。隣の若い男性客とバーテンが「アラン」が好きとか飽きたとか話していた。僕は人見知りチキンですが、そのとき一緒に来ていた女性に度胸あるアピールをしたくて、その会話に入っていった。

祖父江慎(そぶえしん)というブックデザイナーがいる。風貌は奇妙で派手だが、装丁(本の表紙だけでなく、紙やフォントの選定から文字間のスペースの調整など本全体を整える仕事)はとても繊細。で、その人の事務所が装丁を担当した、哲学者アランの幸福論という本がある。哲学書と聞くと高尚で堅苦しい印象だか、この本はチープなザラ紙に印刷され、多くの絵(イラストではなく絵だと思う、イラストとは文章に合わせて描かれたものだとするならば)(HIMAAこと平山昌尚さんの初期の)が大迫力にどデカく挿し込まれている。

僕はヒマさんの絵がすきなので(みんな好きか!)その本を買って、ついでに文章もところどころ読んでいた。だから哲学科でもないのにたまたまアランを知っていた。

人間というのは、得意なことや知ってることだと強気に出れるので、僕はバーでイキってその哲学論議に加わろうと話しかけた。ところがよくよく話を聞くと、彼らはウイスキー「アラン」の話をしていたのだった。

冷や汗をかきつつも、なんだかんだその隣人とは仲良くなることができました。ところでアランは幸福論の中にこんなことを書いている。

他人を幸福にしようと思ったら、そのためには
まず自分自身が幸福になることです。

つまり、てめーのお腹が空いてるときに、ほかの誰かに対してパンをあげることはできないよね、聖人君子でもない普通の人は。ってことで、それで表題の件に戻るんですが、(ちなみに、僕はこの条例案に賛成です。なぜなら、日本をベースに生活しているのなら、国籍は関係なく同等の権利を持つべきだと思うからです。この国の社会に対して、働いて労働力を提供したり、税金を納めたり、買い物をして市場にお金を落としたり(母国への送金もあると思いますが、それを差し引いても)日本という国や住んでいる地域に貢献しているのだから、社会をつくる権利があって当然だと考えるからです。)

でも結局否決された。なぜか?
この条例案に反対した人たちは、「自分自身が幸福ではない」からです。

余裕がないから、豊かでないからです。
経済的にも、文化的にも。

ひとが不寛容になるのは、私たちは社会のなかで「限られたパイを奪い合っている」と勘違いしていることが原因です。彼らは、外国人がパイを取るから、自分の取り分が減るのだと考えます。

同様に、自分の福祉サービスが削減されるのは、障碍をもつひとや生活保護を受けているひと、延命治療している年寄りに税金が使われるからだと考えます。相模原の施設で知的障碍者を殺した植松聖も、犯行動機のひとつに「日本の借金をこれ以上増やさないため」と述べていました。

でも、それらは全て間違っています。
なぜならパイは「限られていない」、パイは可変だからです。数を増やすことができる。

パイというのは、ここではお金のことです。政府の財源のことです。
財源なんて、新規国債を発行すれば増えます。同時に国の借金が増えても全く問題ない。なぜなら日本はギリシャやアルゼンチンと違って、自国通貨発行権を持っているからです。円で借金しても円を発行できる。だから借金が増えてもデフォルト、財政破綻はあり得ないんです。このことは麻生太郎も言っています。財務省HPにも書いてあります。アメリカも日本と同じく通貨発行権がある国なので、世界恐慌のときに当時のルーズベルト大統領がドル建て国債を大量発行し、それで得たお金を公共事業等に使い、結果国民の所得は回復しました。ニューディール政策というやつですね。バイデンもグリーンニューディール(国債を原資とした再エネ投資)をやると公約に掲げていました。

おしまい。

(ちなみに、なのですが、
上で「国の借金」と書きましたが、これは誤りです。正確には「政府の」借金です。そして政府が日銀に対して借金をして得たお金というのは、福祉や助成金、公共事業などとして国民のために使われます。つまり「政府の借金=国民の資産」なんです。

また、「財源は私たちの納めた税金」というのも誤りです。税は「なにかのための財源」ではありません。税金の役割は2つ(高校の教科書に載っています)、
①富の再分配
②インフレの抑制
です。

つまり、
①経済格差が拡がることを防ぐ。
②みんなが買い物しまくって、市場にお金が溢れる(需要が供給を大きく上回り、物価が急激に上がる)ことを防ぐ。

以上から、税という仕組みは、お金持ちが多く持っているお金、あるいは市場で溢れそうなお金を吸い上げて格差や物価を調整する機能があるんです。

だから外国籍のひとが、例えば日本の福祉サービスを利用しても、(そもそも福祉の財源は私たちの納めた税金ではないし、)日本人への福祉財源が減らされることもない。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?