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音楽の聴き方、移り変わり

no music no lifeという言葉がありますが、私もかなりそれに近いですね。芸術には文芸、絵画などもありますが、私の場合は圧倒的に音楽から自分の人生の彩りをもらっています。…と言っても、演奏はせず、もっぱら聴く専門ですけど。
私にとって音楽は、ある時は気分転換、ある時は自分の感情に浸り、またある時は自分が前に進むためのエネルギー源であったりします。

音楽との出会い

私が最初に音楽に触れたのはおそらく父親の影響だと思います。
父はクラシックが好きでした。私の小さい頃は毎朝NHK-FMのクラシックを聴きながら朝食を食べていたのを覚えています。私はクラシックは聞かない方なのですが、生活の中に音楽がないと何となく寂しい感じがするのは子供の頃のこの経験があるからなのだろうと思います。

自分の好きな音楽を探して聴くようになったのは、小学校5年生の時からでしょうか。確かクリスマスプレゼントか誕生日のプレゼントにラジカセ(当時はテレコと呼ばれていましたね)を親が買ってくれたのでした。
特に買って欲しいと言ったわけではなかったのに、突然与えられたのでちょっと戸惑ったのを覚えています。当時は音楽を聴く習慣はなかったですが、メカは好きだったのでいろいろと触って遊んでいる感じでした。
たぶん、当時いわゆる「お受験」を始めた頃で親としてはテレビを見るよりもラジを聴きながら勉強しろということだったのかもしれません。

父親が家のステレオセットでクラシックのレコードをガンガンかけていましたが、私は勉強部屋にこもって黙々と宿題をしていました。宿題が終わってからシーンとした部屋にいるのが何となく気持ち悪くなってFMラジオをかけるようになりました。
まだ子供でしたが、AMラジオのお喋りはうるさいなと感じていて、音楽中心で喋りは曲の紹介程度にとどめているディスクジョッキーを聴いていました。アーチストとかはわからないので、聞き流しているだけでした。

夜遅くまで勉強をするようになってきたある土曜日の夜24時。なかなか眠れない私の耳にラジオから聞こえてきたのが、「渡辺貞夫マイ・ディア・ライフ」という番組でした。
その音楽がジャズであるということすら知りませんでしたが、サックスの柔らかく優しい音色を枕元に聴きながら、呼吸が楽になりスーッと力が抜けてすやすやと眠れたのをよく覚えています。そこから毎土曜日にその番組を聞くようになっていました。記憶にある限り、自分の意思で聴く音楽を選んだのはそれが最初でした。

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初めて買ったレコード

中学に入って友達ができると、音楽の聴き方も友人の影響を強く受けるようになりました。友人はお小遣いをそれなりの金額をもらっていて、それを何に使うかで自慢をしていました。
漫画を買って読んでいるというと子供扱いされ、芸術的な匂いのするものや大人が買っているようなものを買っていることが自慢の種になるようなところがあり、私立の中学だったせいもあるのか、皆大人びて(見せようと)いましたね。

私はそれほどお小遣いをたくさん貰っていなかったので、友人のようにレコードを買うことはできず、ラジカセでFMラジオを聞き、それをテープに録音して繰り返し聴くというのをやっていました。死語ですが「エア・チェック」というやつですね。番組表を掲載しているFM雑誌を買って、皆がレコードで持っているアーチストの特集番組を見つけて録音していました。
仮にレコードを買ったところで、ステレオセットは父親が占有しているので使わせてもらえず、使わせてもらえたとしても当時のレコードプレイヤーは非常にセンシティブな機械だったので、恐れ多くて触れなかったと思います。

親友と呼べる友人ができ、その友人宅にお泊まりに行った時、友人が自分のレコードコレクションを自慢し、友人の父親のステレオセットでかけてくれました。黒い円盤に針を慎重に落とし、音がスピーカーから出てきたときの感動はとても新鮮なものでした。
その時に聴いたのがカーペンターズの「緑の地平線(Horizon)」というアルバムでした。

友人の父親のステレオセットの音質も良かったのでしょう。素晴らしくそして優しい音に包まれて一気に虜になりました。何というか、体に染み込んでくるような感覚がありました。
そこから小遣いを必死に貯めて初めて同じアルバムを買いました。そして、母親を通じて父親に家でかけて良いかをお願いし、父親の立ち会いのもと買ったばかりのアルバムを開いてレコードに針を落としたのでした。

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傷をつけないように大切に大切にレコードを扱い、何度も何度も聞き直していました。当たり前ですが、ラジカセで聞くラジオの音とは格段にスケールも音の美しさも違います。
このあたりから、音楽に、音響にハマって行ったのだと思います。

原点となったマイ・テープ作り

カーペンターズに始まり、その後は友人の影響もありロック(KISSとか聞いてましたね。最初はジャケ買いでしたけれど)も聞くようになりましたが、滅多なことではレコードは買いませんでした。当時で2,500円は数千円の小遣いには重すぎたので。
それでも友人には恵まれていたので、皆快くレコードを貸してくれ、それを自宅でかけました。高校生ぐらいになると貸レコード業が現れるので、そちらも活用していました。父親も母親もロックは嫌がるので家では流せず、ヘッドホンで聞いていましたけれどね。あとはもっぱらエア・チェックで新しい音楽を探していました。

友人からレコードを借りてばかりでは心苦しく、何か自分からも返せるものがないかということで始めたのが、テープ作りでした。
レコードから録音したもの、ラジオから録音したものをダビングして組み合わせたオリジナル選曲のテープを作って、レコードを貸してくれたお礼に友人に渡すととても喜んでくれ、すごく嬉しく思ったのを覚えています。

オリジナル・テープ作りは、その後私のコアな趣味となります。音楽の聴き方が、レコードからCD、配信になっても、自分の好みの音楽を曲順にもこだわってプレイリストにしたものを共有したりプレゼントしてきました。
友人にプレゼントする時には、その人のことを想い、その人が感動できるような選曲と編集を行って、ケースやジャケットにも装飾を入れてきれいにしたもので渡すようにしていました。感激して泣くくらいのものを、とかなり力入れて時間をかけて作ってました。

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おそらく、私のクリエイターとしてのスタートであり、原点はここにあるのではないかと思います。
届ける相手にとって最高のクオリティであり、他にはない唯一のものを魂を込めて集中して作り込む…
これをやっている時間というのは、時が経つのも忘れ、気がつくと朝になっているということもザラでした。それでいて全く眠くなったり疲れたりということはないのです。

演出(ムード作り)で音楽を使う

社会人になる前に、サラリーマンになるよりも音楽関係の仕事ができないかと真剣に考えた時がありました。しかし、親にも反対されましたし、食って行けるほどの腕があるわけではないなと思ったので、「音楽は趣味、だからこそ嫌いにならないで一生楽しめる」と割り切ることにしました。

社会人になって自分で稼ぐようになると、エア・チェックして録音というところからは卒業し、自分のステレオを持ちCDも何枚も買うようになっていました。買ったCDや借りたCDから選曲をしてオリジナルを作るのは変わらず続いていました。メディアはカセット・テープからCDへと変わりはしましたが。

趣味として仕事とは切り離していたはず音楽ですが、思わぬところで仕事の場でも使うようになります。
それまでは、仕事中は会社でも自宅で持ち帰って仕事する(今はしませんけれど)ときでも音楽はかけないで集中していたので、仕事と音楽が結びつくことは無かったのですが…

人材開発の仕事をするようになったときに、ちょっと型破りな研修講師と一緒に仕事をしたことがあります。
カナダ生まれだけど日本語ペラペラの彼女は、それまでの日本型の「研修」の型に囚われず、シナリオのないリーダーシップ研修をやってくれました。その研修の設計にもファシリテーションにも私は大いに影響を受けましたが(それはまた別の機会に話しましょう)、それ以上に刺激的だったのが、彼女がiPodとBoseのスピーカーで自分のお気に入りの音楽を大音量でかけながら研修をやったことでした。
休憩時間にかけるだけではなく、グループ・ワークで手を動かしているときや、内省してもらいたいときに、状況に合わせた音楽をiPodから選んで流していたのでした。

私はその演出がすっかり気に入って、そのリーダーシップ研修を彼女から引き継いで自分がやるようになってからは、スピーカーとiPodで同じように音楽を研修の演出として使うようになりました。

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音楽はうまく使えば、微かな感情を増幅したり、自分を超えた大きなものとつながるのを助けてくれますよね。
研修の中で演出として使っている音楽ではありましたけれど、研修が終わってから「使った曲のリストとかありますか?」と聞かれることもたまにあるので、その時はあらかじめCDに焼いておいたものを渡していました。

音楽との付き合い方は人それぞれ

これまでお伝えしてきたような音楽の聞き方、楽しみ方を私はしてきているので、お気に入りのアーチストをずっと聴き続けているという具合になりません。だいぶ前に「お前の音楽の聞き方はおかしい」と言われたことがありますが、振り返ってみると私は当初から「いろいろ聴きたい」人だったのかな、と思います。

今、こうしてnoteを書いている私の目の前にはHomePod miniがあるのですが、このガジェットはまさに私のような音楽の聴き方をする人にぴったりのものになっています。
…というのも、Siriに向かって今の気分を伝えるとそれに合う音楽を探し出してかけてくれるからです。

iPodからiPhoneへと音源は移りましたが、その間にiTunesを使って自分の音楽ライブラリをクラウドに作り上げ、その中にたくさんのオリジナルのプレイリストを置いています。
そして今、20年近くかけて作った自分の資産が、目の前の小さなスピーカーから自分のムードを作るのを助けてくれています。

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