見出し画像

サウンドスケープしたい朝だった。

朝の散歩をしてきた。

サウンドスケープしたい朝だった。

ほとんどは僕のスニーカーの足音やジーンズの擦れる音。たまに聞こえるは、車や自転車が通る音、公園で遊ぶ子どもと親、仕込み中のカフェから流れるゆるい洋楽、どこかから聞こえる工具の音。歩みを進めるといつか聴いた音楽が。近づいてくる。コインランドリーだ。入ってみる。さらに音が大きくなっていく。奥のスピーカーから流れていたらしい。曲名を思い出そうとするが思い出せない。宇多田ヒカルであることは間違いない。歌詞も分かる。ただ、曲名が出てこないのだ。まあいい。そんなことより、今度シーツを乾燥しにこようと思う。アンディではない。布団のシーツのことだ。コインランドリーを出ると油っぽい臭いがする。道路のコンクリートがまだ新しい。たぶんそのせいだ。少し進むと臭いが収まってきた。宇多田ヒカルも聴こえなくなってきた。一応振り返る。大丈夫だ。足跡はついていない。そんなこんなで折り返し地点を過ぎ、帰路についていた。少し歩くだけで色んな店や劇場などがある。この街は歩くと狭いが、世間は広い。道も景色もだいたい覚えたが、この街で暮らす人を知らないのだ。コンビニやカフェの店員なら数人は顔を覚えている。しかし、数百いや数千の人が住んでいるこの街の、たった数人しか知らないのだ。しかも、そのたった数人の人となりは何も知らない。そこに止まっているメルセデスやポルシェのオーナーを私は知らない。この人たちは自己満足や趣味で乗っているのだろうか。それなら良い。私もポルシェのタイカンを見てかっこいいなと思う。ただ、他人に見せつけるために乗っているのなら、大損だ。ほとんどは誰かも分からない人に見せつけているのだから。私みたいなやつに見せつける気ないわ、と言われそうだが。まあ、その人の属する世界では一種のステータスになるのかもしれないなと思う。など思っているうちに家に着いた。とにかく、この街は狭いが広い。少しずつでいい。まだ見ぬ景色を見に行こう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?