松村沙友理篇 制作日記No.15〈『モモ』その①〉
2021年4月14日(水)
お疲れ様です。ご無沙汰しております。
乃木坂46メンバーの卒業後を描いたファン・フィクション小説を書いています。現在、『振り向けば青春~あの後の彼女たち~』松村沙友理篇のチャプター1(第一稿)を公開中です。
本日は、ミヒャエル・エンデの名作児童文学『モモ』を読んで衝撃と深い感銘を受けたことについて話させてください。
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▼2つの対比
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『モモ』は「時間ってなんなの?」というのがメインテーマになっているのですが、僕は『モモ』の中で「対象的な時間の考え方」が2つあると感じました。
①「物語の時間」←→「読者の時間」
②「物理的時間」←→「流動的時間」
この2つの対比はそれぞれ、あるキャラクターによって象徴的に描かれています。
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▼①「物語の時間」←→「読者の時間」
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僕は、「小説を書きたい!」と思い立ってから、それまでほとんど読んでこなかった小説というものを読むようになりました。
物心ついた頃から本をたくさん読んできた方々はもう感覚的に物語とシンクロできるのかもしれませんが、僕のような後天的に本を読むようになった人間はいちいちロジックが気になってしまいます。
何冊か小説を読んで、現実世界とは異なるルールで動いている「物語独自の時間の流れ方」みたいなものがあると感じました。
(#過去の制作日記をお読みくだされ)
こんなことを考えながら『モモ』を読んでいたら驚きました。
『モモ』では、そんな「物語独自の時間の流れ」があるキャラクターを使って確信犯的に表現されているのです。
そいつの名は……
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▼カシオペイア
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カシオペイアというのは、マイスター・ホラが飼っている亀です。
読んだことがない方にかんたんにご説明します。
実はマイスター・ホラの太字で書いた4つ目の設定が「物理的時間と流動的時間の対比」を表しているのですが、それはまた後で。
「カシオペイアは時間の圏外で生きている」とはどういうことか、マイスター・ホラの言葉をもう少し引用してみますね。
コイツは一体何を言っているのでしょうか。物語の中ではこれ以上のことは何も明かされません。
本文のあとに載っている『訳者のあとがき』を読んで、ようやくこの意味がわかりました。
物語の中で時間が停止しても、読者には関係ありません。「物語の時間」と「読者の(現実の)時間」は別物だからです。だから我々は、時間が停止した世界で「時間の花」を持って孤軍奮闘するモモの冒険を読み進めることができるんですよね。
さて、
訳者によるとミヒャエル・エンデは『モモ』という物語と読者の間に、芝居と観客のような関係を期待しているそうです。
ほとんどの登場人物が「物語の時間の流れ」で生きている中に、ひとりだけ「読者の時間の流れ」の中で生きているカシオペイアというキャラを紛れ込ませて、「芝居と観客の関係」を確信犯的に可視化しているんだと僕は思いました。
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▼『ふりはる』にどう活かすか
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『モモ』という物語はそもそも「時間ってなんなの?」をテーマにしているので、カシオペイアのようなトリッキーな設定も可能なのでしょうが、「読者の時間の流れ」で生きているキャラクターを紛れ込ませるなんて普通の小説に転用できることではありません。
カシオペイアから学べることを小説に活かすとすれば、「現実世界の時間」と「物語世界の時間」は性質が異なるものであると覚えておくことだと思います。
スポーツ漫画でオフェンスとディフェンスが向かい合ったときに、一瞬のはずなのにめちゃくちゃ会話するみたいなのあるじゃないですか。
あれって、現実世界ではあり得ないですよね。ところが、漫画の世界だとけっこうよくある。
それはなぜかというと、歴代の無数の漫画家たちが長い年月をかけて積み上げた「漫画という表現形態における真実らしさ」みたいなものだからです。
漫画の中では、一瞬のうちに3ターンくらい会話するという時間の使い方は真実らしさを帯びているんです。
僕はこれから、「物語世界の時間の流れ」に適した「小説という表現形態における真実らしさ」を会得していかなきゃいけないし、そのためにもっとたくさんの本を読んで考察しなければなりません。
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続きは明日の記事で書きます。
「物理的時間と流動的時間の対比」についてです。
『モモ』はぜひ読んでほしいのですが、まずあらすじを知りたいという方は中田敦彦大先生に教わってください。
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【執筆風景】https://www.showroom-live.com/5a5cb3573384
では、また後ほどお会いしましょう。
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