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「仕事も遊びも子育ても、自由にフィールドを広げていこうと決めた」 森田應学さん

気づけば11月になってしまいました! 不定期連載中の「みんなの35歳」。4人目は株式会社アイロリ・コミュニケーションズ(以下アイロリ)代表の森田應学(おうがく)さんです。

森田さんは私の知っている大人の中でもトップクラスで不思議な人です。掴みどころがなく、いつも飄々として楽しそう。そして、会社の打ち合わせスペースには囲炉裏があったり、大きな絵画が飾ってあったり、事務所の隣ではリキュールオタクが営むBARを運営されていたりと、森田さんの周りは「なんで?どうして?」がたくさんあります。私が一番気になる大人・森田さんにお話しを聞いてきました。

広告ディレクターから宝石調査という異色の経歴

マギー:本日はよろしくお願いします!まずは森田さんの若いころのお話しを聞きたいです。アイロリを始める前は何をされていたんですか?

森田さん:僕は美術大学を出てから、専門学校で3DCGの講師をして、そのあと、デザイン会社の設立、広告代理店、印刷会社と経て、そんな中でアイロリを設立しました。その頃、プライベートでは、地元新宿の自治会や組合からアイデアを相談されたり、理事に推薦されたりするようになったこともあり、それならば自分の裁量で自由に動ける会社を作ってしまおうと思ったわけです。今から15年くらい前かな。
未来を見据えたアイデアや変化は重要だけど、古い繋がりや継続も1日にしては成らない大切なもので、みんなの困りごとを解決するうえでアイデアを集められるHUBでありたいと思ったのが動機ですね。で、設立の時最初に探したのが囲炉裏と自在鉤なんですよ。

マギー:へー!じゃあ囲炉裏ありきの会社だと。

森田さん:そう。ちなみに「アイロリ」っていうのは囲炉裏(irori)ってローマ字の英読み。広告代理店時代に「ブレストって会議室でするもんじゃないよね~」って同僚とよく話してたんだけど、当時このビルは木造2階建てで、昔ギャラリーだったスペースが空いていて、だったらそこを拠点にしようか?って話になったんだよね。駅前で集まりやすいし。「どうせなら囲炉裏を囲んで居心地よくやりたいね!」って気になり、その場で囲炉裏付きテーブルをネットで検索してた。
けっこう苦労して骨董屋を巡って、いい感じの魚の自在鉤もゲット。居心地には雰囲気が大切だからね。今はビルの建て替えでなくなっちゃったけど、囲炉裏で呑む器も作ろうと思って、日曜大工で陶芸工房も自力で建築したんですよ。

画像1アイロリの打ち合わせスペースにある囲炉裏。シンボル的な存在

マギー:そんなノリだったんですね。実際にアイロリが動き始めてからはどんなことを?

森田さん:アイロリを設立してからしばらくは、会社員をしながらの二足のわらじ状態がしばらく続きました。で、ちょうどその頃実家の宝石業方面でちょっと面白いお誘いを受けたんです。僕の家は祖父の代から宝石商を営んでいて、その繋がりで宝石協会の先生から「鉱山行ってみない?」って誘われて。僕自身それまで家業にもかかわらず宝石に全く興味なかったんだけど、何で欲しい人がいるのかには興味があったし、ジャーナリズム的に日本と世界と宝石について見識を広げてみようと思い、宝石の鉱山に行ったり宝石職人を訪ねたり、宝石の世界について勉強しました。

マギー:宝石の鉱山巡りも始めたんですか!? 異色すぎる!ちなみに学んでみて宝石の世界はどうでしたか?

森田さん:めっちゃ面白かったよ。色々な国を旅していると「日本人」って言うと色んな反応が返ってくるの。その時にそれぞれの国で歴史的事実や国のイメージって勝手に作られているんだなって思いました。
マダガスカル(アフリカ大陸の右側にある島)に行ったときには、現地の貧困を目の当たりにして価値観が変わった。例えば、鉱山で宝石を掘り出した人がいたとする、でもその人は次の日いなくなるという話…。

マギー:何でですか?

森田さん:狙われて殺されちゃうらしい。

マギー:ええ~!!!

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森田さん:鉱山の近くには周辺の国から人が集まって集落ができる。僕が行ったイラカカという町は、ゴールドラッシュならぬ「地球上最後のラッシュ」と呼ばれいて、サファイアラッシュに一攫千金を夢見た人たちが月に2000人も押し寄せてました。ただ、貧困は酷いのに子どもは増え、毎年エイズで4割が死ぬと聞きました。そんな状況を目の当たりにして、貧困がすぎると教育が無くなり人間は人間でなくなるんだって知りました。

マギー:それはすごい経験ですね。自分が抱いていたお金や命の意味がぶっ壊れそうです。

世界から生活に目を向けた35歳

マギー:そういえば勤め人をしながら会社も経営して、宝石の鉱山巡りで海外へ行けたんですか?

森田さん:地域活動や鉱山巡りが忙しいから辞職を申し出たら「後継者を育てて」と提案され、迷惑をかけつつも1年間ぐらいディレクターの育成を行いました。ディレクターの育成では、鉄の掟というものを作りました。
①定時帰り(事前準備)
②自分で作業をしない(管理徹底)
③人のせいにしない(指揮責任)
と紙に書いて貼ってた(笑)。

マギー:その時代で定時帰りなんて最先端ですね! そのあと無事に役目を終えて退職してアイロリに専念を始動するんですか?

森田さん:勤め人を辞めて、アイロリに専念できるようになってしばらくして子どもが産まれたので、「もう仕事辞めます。これからは子育てに専念します」って宣言をしました(笑)。それが35歳のとき。長女が産まれて8カ月は奥さんも勤め人をしていたので、僕が育児をしていました。

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マギー:え!? なんで急に子育てしようって思ったんですか?

森田さん:30歳ぐらいから周りの友人や家族を見渡したときに、「このままいくと僕の周りは老人ホームになる、20年後はヤバいな。幅広い人が繋がって楽しむには、世代も幅広くいないとダメだ」って思って、初めて妊活を意識。もともと人を選ぶことが嫌いなので、相手は精神が乞食じゃなければ良し。子どもが出来たので即結婚。全ては思いつきとタイミング。

マギー:精神が乞食って極論すぎる(笑)。すごい決断力ですね。

森田さん:真面目に誰と結婚するかって考えても、所詮は他人の自由を尊重した先にあるものですから考えようも無い。人の形状やスペックなんてすぐに変わるし、自分のフィーリングやタイミングを信じた方がいいよ。

マギー:分かりました。肝に銘じます。子育てで得た経験はありますか?

森田さん:子育てして分かったのは、勤め人の頃は視野が狭かったなってこと。子どもから学ぶ感性のコミュニケーション。昼間近所で何が起きているか、どんな人が住んでいるか全然知らない。日本は働いている人が半分強で半分弱はそれ以外、老人や学生、子どもや主婦など幅広い世界があることを、子育てを通して知ることができた。子どもを連れて出かけることで、全く違うコミュニケーションが生まれる。多国籍なネットワークなんかも面白い。そうするとまた遊べるフィールドが広がる。
「老人から子どもまで幅広く集まってイベント」とか「その辺に椅子を置いてコミュニティ作り」「野菜売り」「もちつき」「流し素麺」と新しい繋がりから遊びが広がるんです。仕事とは全く違った新しい視野が広がりました。

仕事は遊びながら、好きなことには励む

マギー:森田さんって面白がって仕事してますよね。

森田さん:善かれで考える分には、仕事も遊びも私生活も、境目は無いからね。仕事か遊びかと言うより、ただ「生きてます」って感じです。
やることを強勢されるとその枠の中のことしか出来ないので、いつの間にか基準を壊しているか、摘み出されることになるのだけれど、いずれにせ喜ばれたり嫌われたりが明確なので面白い。

マギー:嫌われても気にしないのが森田さんっぽいです(笑)。仕事のスタイルは昔から変わらないんですか?

森田さん:最近よく考えるのは、年齢と共に立場が変わってくるにつれ、トラブルが起きたとき昔の付き合いやノリだけで解決はできなくなってるなということ。気づけばアイロリも15年。やっぱり人の繋がりが一番大切なので、クライアントと楽しく仕事していきたいですね。なぜかキリキリした人は離れて行くの(笑)。一緒に面白がってくれる人が最終的に今も付き合いがありますね

画像4新宿間税会で開催した子ども向けの税のオンライン講座の様子。大人が生徒役に扮しています

マギー:確かに森田さんの周りには魅力的な人がたくさんいますもんね。これからやっていきたいことはありますか?

森田さん:具体的にはないんだけど、キャリアや人脈が広がってどんどん仕事がやりやすくなってきたように思う。たとえば、新宿間税会だと会員の百貨店と何かイベントをやろうという時も意見を出しやすい良い関係が築けてる。思い付きを実現するのが大分近くなってきたのが楽しいかな。

マギー:なるほど。とにかく楽しく、面白くというスタンスが、飄々として見えるんだなってわかりました。最後にこれから35歳を迎える人たちに伝えたい言葉を教えてください。

森田さん:好きな物事に励んでください。やりたいことが見つからないって人は多いと思うけど、いわゆる趣味でもなんでもいい。好きなこと、夢中になれることが一つでもあれば、それを突き詰めてみてもいいかもしれない。とは言え、僕自身は、趣味って言葉はよくわからないんですけどね。絵を描いていたら友人に「これって趣味なんじゃないの?」って言われたけど、しっくりこないわけ。好きで拘ったパン屋のパン打ちは趣味?みたいな。ずっとそこから趣味って何だろうって考えて、多分、趣味っていう言葉は自己紹介のためのレッテルで、要は「楽しくやれる何か」があるってことが大事なんだろうなって気が付いた。僕が絵を描いてきたのは好きだから励んでいたこと。努力なんて一度もした憶えは無い。
やってて苦だなって思うことはさっさと辞めて、自分が心地よくしがらみなく出来ることを見つけられたらいいよね。

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森田さんの話が面白すぎてかなり長尺の取材になってしまった今回。常時爆笑し続けた楽しい時間でした。大幅にカットした部分もあり、また違う企画で小出しにしていこうかなと目論んでいます。
色んな世界を見てきたからこそ、目の前で起こっていることに対して柔軟に対応できるのだなと思うとともに、「人を怒らせることが好きなんだよね」って笑って言うお茶目さがアイディアを生み出し続ける秘訣だし魅力だと感じました。

【お話しを聞いた人】

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森田應学
株式会社アイロリ・コミュニケーションズ代表。新宿間税会常任理事青年部長。東京国税局間税会連合会理事青年副部長。
アイロリ・コミュニケーションホームページ
新宿間税会ホームページ

撮影/reiko nakamura(Instagram

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