あんたらは空の青が一番鮮やかだった頃を知っているか。

眩しい世界の中でただ一人の横顔を見つめたことはあるか。

思い出したくもないけど、思い出してしまった。



舞台は田舎町。田んぼの真ん中にある古い駅。

テーマソングは、Base Ball Bear。そう、夏。

思えばおかしいくらいに都合良く、すぐに進展して、かと思えば一瞬にして崩れて、少し経ってまた戻った。

そして冬が来て、いつしかほとんど会えなくなって、会いたいとすら上手く思えなくなった。

また暖かくなっていつでも会えるようになってからは、なんだか二人の部屋に張り詰めた空気が重くて、息苦しかった。

「私の身体を傷つけようとしないでほしい」それはただのわがままとしか捉えられなかった。

ずっと顔色を伺っていた。ちゃんと理解したかったから、聞こうとしていた。でも、何も教えてくれなかった。

とるべき選択は、早い段階でわかっていた。

でも、どの選択も怖かった。

食べ物があまり喉を通らなかった。

心の中で彼の偽物を用意することで、ようやくその決断が可能になった。

その偽物もまた、重くて苦しいのは同じだった。




青くて美しい演劇と、誰かが否定した流行りのラブソングがそんな日々を思い出させた。

私は、儚く輝いて、澄み切って、あの日の青とともに焼き付いて苦しめるような少女になりたかった。

あの部屋の張り詰めた空気、横顔ばかり覗いたこと、涙をこらえて笑ったこと、後輩の前で泣いたこと、表現することでしかきっと報われない。


あの青を私はそのまま思い出すことはできない。

あの部屋の記憶も薄れていく。

色褪せていく。



あの頃よりずっと幸せになりたいと願うことはあっても、あの夏の日の鮮やかな青だけは願うことすらできない。


私の瞳は濁った。私の命はくすんだ。だからきっと、もう見られない。

そうさせたのも、あの夏鮮やかな青を見せた人だ。





許さねえからこうやってたまに表現して、いつか板の上でぶつけたいんだ。

【募金箱】病人ですが演劇も被写体もこれからやっていきたいです。サポートしてくれたらもっと色々できちゃうかもしれないので、興味があれば是非。