自分を許してね
私は心療内科に通院している。
原因は人生の色んな場所にあった。
今回はその中でも、私にとどめを刺した人の話をする。
その人は、いつも笑っていた。
出会った頃は、その笑顔が大好きだった。
真剣な話もまるでボケのように笑いながら話すし、酷い環境に身を置いていても「辛い」という感情を話すことはせず、客観的に「ヤバい」と話していた。
その人は無敵だ。
周りの人に好かれていた。今もきっと好かれている。
ある時、私はその人に耐えがたいいじりを受けた。
「ナナセちゃんがリアクションするから楽しいんだよ」
何でそんな仕打ちをしておいて、加害者のくせに被害者のせいにするのか。
私は、何で私がそんな人のために我慢しなければならないのか聞いた。
「マイナスな感情を出すのは悪いことだよ」
もう一度言う、その人は周りの人に好かれている。
周りに人はいた。誰一人として反論しなかった。
私の負の感情の全ては、その瞬間から逃げ場を失った。
「出してはならない」負の感情は、数ヶ月後に爆発して、薬なしではその人が存在する日常を生きられなくなった。
復讐のことも考えていた。遺書にその人のせいで私は死んだと書いて、何かの形で命を捨てる以外には考えられなかったけど。
最初のカウンセリングは、勿論その人の話になった。心理士さんは、なぜその人がそんなことを言ったのか私に聞いてきた。
みんなに厳しい人なのか、弱音を吐く私に厳しいのなら、否定的な意見ばかり言う人にはもっと厳しく言うはずではないのか。
そうじゃない。
その人は、いつも笑っている。
辛くてもいつも笑っているから、「辛い」のが周りにわかるような私が許せないのかもしれない。
「マイナスな感情を出すのは悪いことだよ」
それは、その人が自分自身に課しているルールなのかもしれない。
正解かはわからないけど、自然と出てきた答えだった。
心理士さんは、自分が頑張ってることを他人がしていないとムカつくからそうかもしれないね、強制するのは違うよねって言っていた。
カウンセリングを終えて、何だかその人のことが心配になった。
心を殺されかけて、吊るし上げたいとまで思っていた人を心配するほど、私はお人好しだった。
今その人がどんな日々を送っているのか、私は知らない。
ただ、私が知っている範囲ではやっぱりずっと好かれていて、私をここまで追い詰めた奴が「いい人」なんて言われている事実は腹立たしい。
届かないと思うけど、
あなたは「いい人」かもしれないし、みんなに好かれている。
でも、あなたと同じ生き方を強いられたら死ぬ人間もいる。
ずっと頑張ってきたのに頑張ってない奴を許せなんて酷い話かもしれないけど、
まずは自分を、許してあげてよ。
自分を縛ってきたものをほどいてよ。
もっと楽に、心を動かしていいんだよ。
心の弱さが誰かに見えたっていいんだよ。
私たちを許すのはそれからでいいから。
さようなら。
【募金箱】病人ですが演劇も被写体もこれからやっていきたいです。サポートしてくれたらもっと色々できちゃうかもしれないので、興味があれば是非。