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長岡高校3年生の皆さんへ

県立高校の休校措置に際し、長岡高校の特に3年生の皆さんへ、かつて長岡高校を卒業し東京大学へ進学した先輩として、勝手にアドバイスを授けます。

はじめに

はじめまして。12年前くらいに長岡高校を卒業した者です。その年は私のようなマグレも含めて現役生からたしか7名の東大合格者が出たのですが、その1人です。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、明日から休校の措置が取られることとなりましたね。GW後の再開を願うばかりですが、東京をはじめ国内での感染拡大収束の目途は立っておらず、今後どうなるかわかりません。

皆さんがいままで生きてきた中で最も大きな試練のひとつであろう大学受験に挑まなければならない年に、このような先行き不透明な状況となり、学校まで休校措置までとられ、保護者の方を含め大きな不安を抱えていることでしょう。

本当に何がどうなるかわからないのですが、長岡が誇る金の卵である皆さんが、この困難に負けずに未来へ羽ばたいていけるよう、先輩のひとりとして勝手ながらいくつかアドバイスを授けたいと思います。

私が東大に挑戦した当時の経験と、現在に至るまで学び続けている心理学や学習学に沿って、時代が変わっても社会が混乱しても変わらずに大切であり続けるものだけをお伝えします。ひとつでも使えそうなものがあれば参考にしてみてください。

1 この状況をむしろチャンスだと考える

大学受験は全国区の競争です。競争相手は隣の同級生ではなく、日本全国の高校3年生と浪人生です。

全国区の戦いである大学受験は、都会に住む高校生のほうが有利です。長岡より東京に住む高校生のほうが有利なのです。実は私たちは、最初からハンデを背負っているようなものです。

都会の高校生のほうが有利になる理由は色々とあるのですが、それは今はどうでもいいです。大切なのは、「会えない」「集まれない」というこの状況によって、都会に住む高校生の有利さが薄まり、私たちの背負うハンデが軽くなる可能性が高いということです。

自分だけを見れば、授業が受けられなかったり、同級生と教え合えなかったり、モチベーションの維持が難しかったりとマイナス面ばかりでしょう。でも、大学受験が順位を競うものである以上、日本全国でだいたい似たような状況であれば、相対的に田舎のほうが”いつもより”有利です。

今年の大学受験は田舎有利です。チャンスです。そんなことを大声で言うと「不謹慎だ」と叱られるかもしれませんが、不謹慎批判は私が一手に引き受けるので、皆さんは虎視眈々と勝利を目指してください。

田舎の受験生万歳。

2 入試は予定通り行われるものと決めつける

新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になりそうです。学校も5月に再開出来るかわかりません。

それどころか、入試自体、本当に実施できるのかさえ正直わかりません。本当に何が起こるかわからない状況です。

しかし、「入試が行われないかも」「行われるとしても形式が大幅に変わるかも」などと考えてしまうと、学習効果が著しく低下します。人間の脳はそういう風に出来ているのです。

周りから「入試なんて無くなるんじゃね?」とか「どうやらやり方変えるらしいよ」などといった憶測や噂が聞こえてくることもあるでしょうが、そういった話は人間関係が悪化しない程度にテキトーに聞き流しましょう。

もしかしたら本当に大きく状況が変わるかもしれませんが、それは正式に国や大学が決定したときに考えればいいです。国や大学は、まずはギリギリまで予定通り実施する道を模索するでしょうし、もし皆さんに大きな影響が出る判断をする場合も、やるべきことに集中してやってきた皆さんが不利になるような決定はまずしないはずだからです。

大学もこの困難な状況下でしっかり努力してきた学生を入学させたいに決まっています。考えても仕方ないことは出来るだけ忘れて、「入試は予定通り行われる」と自分に言い聞かせましょう。

3 第一志望校の問題形式を確認する

これは新型コロナウイルスによる影響がなくてもとても大切なことですが、休校措置が取られる状況では重要度が増します。

大学入試は、大学ごと、もっと言えば学部ごとに問題が全然違います。問題が違えば当然、求められる学力も違うのです。求められる学力が違えば、やるべき勉強も違います

「最初は基礎を固めて、志望校に応じた対策は夏以降」みたいな考え方もありがちですが、「基礎を固める」なんてふわっとした目標では、ほぼ自習の状況でモチベーションを維持するのは難しいです。

同じ「基礎を固める」でも、第一志望校の問題を確認してみて、例えば現在の自分では数学の公式があまりにも身についていないだとか、身に着けた英単語が少なすぎるだとかで歯が立たなければ、そこでようやくどんな基礎が足りてないかを実感するのです。この”実感”が、その後の学習に大きく効いてきます。

4 ほぼ問題演習のみ行う

勉強をしようというとき、まず最初にこういうところからはじめる人がいますが、やめてください。時間の無駄です。

・教科書や参考書を読み返す、マーカーを引く

・公式や単語を書き写す

・講義動画を見る

・ノートにまとめなおす

これらをやっても入試で得点する力はほとんど身につきませんが、勉強した気にはなってしまうのが怖いです。

入試で得点する力をつけるには、入試と同じように、問いに対して自分の頭のみで回答を作るという脳の使い方をするのが一番効率がいいです。そこでまず間違えて自分で✖をつけて、どこが✖なのか、どうすれば〇なのかを考えながら解答・解説を読んだりするとようやく頭に入るのです。

"philosophy"と100回書くよりも、まず"philosofy”と書き間違えてから10回書くほうが覚えられます。

いきなり問題演習をやると8~9割が✖になりますが、自分しか見ない8~9割の✖にビビらないでください。✖と向き合った分だけ伸びますから。

5 生活習慣と勉強をくっつける

ひとたび机に向かえば集中できるものの、机に向かうまでに時間がかかるという人は多いと思います。だいたいみんなそうです。

大学受験という長期戦を戦う上で対策として有効なのは、生活習慣のなかで「これをやったらこれを勉強する」というルーティーンを作ってしまうことです。

例えば、朝ご飯を食べたらまず数学の問題集、昼ご飯を食べたら英語のリスニングと速読、お風呂にはいったら世界史の一問一答みたいな感じです。学校が再開したら、帰宅したらまずこれをやってからお風呂とご飯みたいにしてもいいです。ちなみに、暗記系は寝る前にやるのがいいと言われていますね。

ただ、これは性格によって合わない人もいます。ルールを決めてもそれをどうしても守れずに自己嫌悪になるくらいなら逆効果なので、合わない人はやらないほうがいいです。

6 分散させて繰り返す

1冊の英単語帳や、数学の問題集を1年かけてマスターしようとするとき、12分割してひと月ごとに別の範囲をやるよりも、4か月で全範囲をやって、それを2,3周繰り返すほうが明らかに身につきます。

これは、人の脳の忘れるメカニズムによるものです。人の脳は、使わない記憶をどんどん忘れる機能があります。一時期にどんなに一生懸命覚えても、その後何か月も思い出すことがなかったら入試当日は思い出せません

やったはずの範囲が模試で出来なくて自己嫌悪してしまった経験がある方もいるかもしれませんが、それはあなたの能力が低いのではなく、勉強のやり方が上手くなかっただけなのです。

定期的に同じ問題に取り組んで思い出す作業をすることで、脳はその情報を人生において重要なものだと判断して、長期に記憶してとっておきます

イメージとしては、ペンキ塗りです。

横12メートルの白い壁に黒いペンキを塗ることを想像してください。ひと月に1メートルずつ真っ黒に塗るのではなく、いきなり12メートルうすーく塗ってください。何度も何度も重ね塗りした黒は、少しの雨風では剥がれません。(あくまでイメージです。正しいペンキ塗りのやり方は専門家に聞いてください。)

7 勉強計画には余白を作る

何をどんなふうに勉強すべきかおおよそわかったら、毎日のスケジュールに組み込んで勉強計画を立てるとよいですが、勉強計画には余白を必ず作りましょう。

自由時間の全てを使う前提で計画を立てると、必ず上手くいきません。つい怠けてしまったり、予期せぬ事態で思っていた勉強が出来ないことは必ずあります。

なので、計画通りに勉強できなかったときにそれを埋め合わせる余白を最初から作っておきましょう。1日ごとに小一時間、1週間ごとに1日程度余白を設けると、おおよそ無理なく進められると思います。

8 友達と教え合う

授業が受けられないという事態を補って余りある対策が、友達と教え合うことです。

長岡高校ならば、授業を受けなくても教科書を読めばわかってしまう友達が居ると思います。得意教科はそれぞれでしょうから、例えば数学はコイツが、英語はアイツが、地理はオレがというように、何人かでチームを組んでそれぞれが先生の代わりになってしまうのも面白いですね。

教え合うことの面白いところは、一番勉強になるのは教える側だということです。わからない相手がわかるように自分の言葉で人に伝えるという作業は、単なる問題演習よりもかなり深い学習です。難関大の入試では見たこともないような問題が出ることがありますが、こういう良問に立ち向かうために効果的なのが、人に教えるなどの深い学習です。そう言って頭のいい奴を口説いてください。東大卒が言ってるんだから間違いありません。

教えてもらう側にももちろんメリットは大きいです。相手が先生ではなく友達なので、変に遠慮せずにコミュニケーション出来て、言葉のキャッチボールをしながら理解を進められます。

当然、こんな事態なので何人もで集まるのは難しいですね。でも、Zoomなどのビデオ電話サービスを使えばむしろ時間や場所の制約なく可能です。デジタルデバイスやサービスに関しては皆さんのほうが詳しいでしょう。

休校が終わっても是非是非続けてほしい勉強法です。

おわりに

この大変な状況で、自分のやるべきことにフォーカスすることは簡単ではないと思いますが、自分と自分の大切な人たちのためにやれることはあります。

私よりも10歳以上若い皆さんが生きる時代は、たぶん激動の時代です。新型コロナウイルスは激動の時代を早めただろうと思います。激動の時代を生きる練習問題として、今年度の大学受験に挑んでみるのもよいかと思います。

来年の桜は晴れ晴れとした気持ちで見上げることが出来るよう応援しています。

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