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9.音


帰り道。

バス停。

家までは3分。

仕事終わり。
バス停を降りてから自宅に着くまで聴いてる音楽。


代わり映えのない日常。


音。

音が、聴こえた。


渡りきるはずだった信号をぐるりと振り向き
そのまま走り出してしまった。

それは、反射的に。


音に詳しい訳じゃない、寧ろ金管楽器の音の違いなんてちゃんとわからない。


なのに、

身体は気付けば土手にあった。


いつか、あなたが聴かせてくれた音だと思った。

それはあまりにも安直な考えすぎて
そこにはあなたの姿は無かったのに

こうして自分の気持ちより身体が先行してしまったその時が
何故かとてつもなく幸せだと思えた。


仮にあなたがいたとしたら私はどうしたんだろう。


きっと喋りかけることも出来ず
その前をあたかも気付いてないように通り過ぎるだろうか


「もしかしたら気付いてくれるかも」
そんなこと、あるはず無いのにな


現実はあまりにもしんどくて
嘘ばっかり。


「あなたよりも幸せなんだから」なんて
見せつけるかのように投稿する写真もただ虚しく

ただ、切なく、そこにも別の愛があって
それも愛おしいなんて


どうにかしてるよな

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