見出し画像

6.随筆「ラブレター」


今日はやけに寝れない日だ。
別にお昼寝をした訳でもないし、なんなら一日中歩き回っていた。身体は疲れているはずなのに、深夜2時半も過ぎた頃。
まだ私は布団の上で目がぱっちりと開いている。


今日、好きだった女の子のことを思い出した。
何の脈絡もない中、私の頭の中はなんども彼女でいっぱいになった。

今、どこに住んでいるんだろうか。
今、なんの仕事をしているんだろうか。
今、誰を想い誰に想われているんだろう。

もう全くの赤の他人になってしまった彼女に
今更好きだな、なんて感情は一切も沸かせたくないのに

こうやってふと
若くてなにも知らなかった時の楽しい記憶が蘇る。

自分から手放して、嫌な思いもさせたのに
今更こうやって好きだと思うのもおかしな話だ。
「顔も見たくない」「当時のことよく覚えてない」
そう言われても仕方がない。

私は今、彼女の中のどこかで生きているのだろうか。
私のように私のことを思い出して「何してるのかな」と考えることがあるだろうか。

あればいいな。と思うと同時に
そんな訳ないよな、と苦しくなった。

LGBTなどマイノリティに対する世間の目が
だいぶ優しくなった現代だからこそ
「少数派に憧れる人間」を敵視してしまう。
少なくとも少数派ではあるから。受け入れられる人間とそうでない人間がまだまだ分裂しているから。

あの時の彼女が抱いていた私への感情が
そんな「憧れ」じゃなくて、本心だと思いたい。

当時の私が抱いていた感情は「憧れ」に近いものだったが
失った時にそれがしっかりとした恋愛感情であることに気付いて7年もの間、その気持ちは優しく包み隠してきた。
別に言うことじゃない、誰かに知られてなくてもいい。

こんな眠れない、空の位置が高い日は
何故かショートカットの彼女を思い出す。

もう寝ているだろうか。


また、なんて考えるべきではない。
あの頃の私も彼女も今はどこにも居なくて、すっかり変わり果ててしまっているだろうから。


私のことを好きでいてくれた彼女も
運動している時がかっこいい私も
多分もうどこにもいなくなってしまって

好きだったんだ。
本当に。

大きい声では言えないし、直接伝えたいとも思わない。
また、優しく静かに自分の中に隠しておいて。
今は目の前の幸せを大事にしないとならないから。

お元気ですか。幸せですか。
私は嫌な事も幸せ以上にあるけど、なんだかんだ幸せなんだろう。と思います。


突然思い出しちゃうんだ、
それくらい大きな存在だったってこと。


いつか、どこかで。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?