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おばけになる夜

わたしあの国道に飛びだし 道の真ん中をあるきたい。でもね轢かれてしぬから、建物と建物に挟まれてちぢんだ空をみるためこの歩道ぎりぎりのふちを綱渡りのように歩いてく。おおきな横断歩道あるいは歩道橋にのぼれば束の間わたしの視界に空の中心がひらけてうつる。ワンフレームにテールランプや信号機や街灯の艶やかな光彩あふれる。夏の昼ならばいくつも並んだ車の屋根に反射する太陽光がちらちらと水面のようにひかって、小さな水平線がたぶんみえていた。きょうの夜などはまるで絵に描いたように細い橙色の三日月までぽかんと浮かぶ!
背のたかいあのビルに分断された空の中心はこの世にいくつもあるが本当の空の中心などはこの世の何処にもない。真ん中行けないかな、それじゃあ幽霊になろうかな。いつかわたしの手脚が綺麗に透けたら国道の真ん中に立って見たい景色をいくらでもみれる。もし脚がなくて歩けないならばあなたの脚を借りて道路に飛びださなくてはならない。それであなたが困るならば死体の脚は腐らせないで と願ってやる。おねがい叶えて。

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