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【記事化】#4-4 コミュニティとビジネス!初期の人がいないとコンテンツがない問題はどう解決する?

※この対談記事は以下の放送についてAIを使用した上で修正してまとめていす。


けんすう: コミュニティ編の第4回目となりました。

尾原: そうですね、あっという間に4回目になりました。

けんすう: 今回は、コミュニティをビジネスにする方法について話そうと思います。

尾原: かなり難易度の高いテーマに踏み込みますね。

けんすう: そうなんです。最近では、アメリカの掲示板サービスであるRedditがIPOを予定しているという話があります。これは、コミュニティのマネタイズ、つまり収益化が可能であることを示しています。しかし、日本ではまだ難しい面があります。

尾原: そうですね。Redditは2ちゃんねるのようなカテゴリー別掲示板のアメリカ版とも言えます。コミュニティから売上や利益が上がることが見えてきている一方で、日本ではまだ難しい状況です。そんな中で、コミュニティ運営の歴戦の勇者であるけんすうさんがこのテーマに切り込むわけですね。

コミュニティ収益化の3手法

けんすう: はい、基本的にはコミュニティ自体でマネタイズすることは難しいと考えています。しかし、ビジネスモデルとしては主に3つに絞られると思います。

尾原: 3つに限られるということですね。

けんすう: はい。順番に説明すると、1つ目は広告、2つ目が課金、そして3つ目がEコマース(EC)です。

尾原: ECは物を買ってもらったり、予約をしてもらったりすることですね。

けんすう: その通りです。

尾原: 実は、この3つはコミュニティに限らず、ほとんどのインターネットビジネスのパターンと言えますね。結局、ユーザーから課金するのか、企業から課金するのか。企業から直接的にお金をいただくのがEコマースや予約サービスで、企業から間接的にいただくのが、その面に合った相性のいい広告主を出すという広告モデルです。ほぼこの3つでネットサービスは成り立っているんですよね。

けんすう: その通りです。この3つ以外のビジネスモデルはほとんどないと言われるほどです。コミュニティでもこの3つが主なビジネスモデルになると思います。

おそらく一番ベーシックなのは、コミュニティメンバーが投稿したコンテンツをメディア化して、そこに広告を載せるというモデルです。これが最もポピュラーで、一番多いと思います。

尾原: そうですね。日本では昔、このようなモデルをCGM(Consumer Generated Media)、つまりユーザーが作るメディアと呼んでいました。また、メディアではなくコンテンツそのものがユーザーによって作られることから、UGC(User Generated Content)とも呼ばれていました。最近はあまり使われなくなりましたが、海外ではUGCという言葉がまだ多く使われている印象があります。

けんすう: 日本でも2000年代はCGMという言葉が多く使われていましたが、今はUGCの方が使われる傾向にあります。海外の用語に合わせているようです。

個人的には、コンテンツだけでなく、コンテンツがメディアになっているのでCGMの方が感覚的には近い言葉だと思いますが、日本以外ではあまり使われていないので、UGCで統一するのがいいかもしれません。

尾原: コンテンツとメディアのどちらで表現するかは大きな議論になりますね。この辺りも深掘りしたいところです。

けんすう: そうですね。では、なぜメディア化するのがいいのかについて説明しましょう。そもそもコミュニティでは、投稿する人はかなり限られています。

尾原: そうですね。

けんすう: 古いデータですが、投稿する人は1%から5%程度だと言われています。わかりやすく言うと、Wikipediaを熱心に投稿している人がどれくらいいるか、あるいは周りにWikipediaにめちゃくちゃ投稿している人がいるかを考えると、ほとんどの人がいないと答えると思います。

尾原: そうですね。世間的には0.5%から1%程度と言われています。Wikipediaに投稿する人のことをWikipedianと呼びますが、その割合はかなり少ないですね。

けんすう: 昔読んだWikipediaの本によると、日本のコンテンツのほとんどが上位1000人くらいで作られているという話が載っていました。

尾原: それは本当にありがたい話ですね。

けんすう: ありがたいですね。しかし、Wikipediaを見たことがある人は、おそらくこの話を聞いている人のほぼ100%に近いと思います。

尾原: そうですね。実は、グローバルにおける検索の約60%が人の名前に関するものだと言われています。人の名前で最初に出てくるページがWikipediaなので、GoogleはWikipediaの結果を検索結果の右側に直接表示するほど、ユーザーに愛されているコンテンツでありメディアなんです。しかし、先ほど言ったように、実際に1から書いた人や修正した人の割合は本当に少ないんですよね。

けんすう: そうですね。つまり、構造的には上位1000人の人だけが投稿していて、非常に多くの日本人がそれを見ているという形になっています。

尾原: そうですね。

けんすう: そうなると、やはり見ている人に対してビジネスした方が効率的だという当たり前の話になります。

尾原: この辺は、昔から言われているグランズウェルという本に関連していますね。2008年にシャーリーン・リーが書いた本で、ハーバードビジネスプレスから出版されています。Social ladderと呼ばれる概念を説明しており、書き込みをしてくれる一部の人がいる一方で、コメントなどを軽くやってくれる人がいて、さらにRead-Only Userと呼ばれるユーザーがいるという形で、ソーシャルやコミュニティがインターネットの中で大きな力を持つときに、どのようにユーザーが変化し、影響力を持つのかということをまとめています。

けんすう: もう15年以上前の本ですね。

尾原: そうです。グランズウェルは15年、16年前の本です。今見るとAmazonで単行本が9円から販売されているので、絶版ですが買ってみる価値はあるかもしれません。

グランズウェルの時代にはWikipediaはまだそれほど影響力がありませんでしたが、インターネットのコミュニティにおいて、アクティブに0から書いてくれる人は0.5%から1%で、それに対してコメントをしたり少し修正したりする人が20%くらいいて、80%はROM(Read Only Member)と呼ばれる読むだけのメンバーだということが書かれていました。

けんすう: そうですね。だから、見ている人に対して広告を打つというビジネスモデルがいいということになります。

ここで補足したいのですが、コミュニティと言うと現代では多くの人がSNSを思い浮かべがちです。TikTokやInstagramの影響が強すぎて、それらを想像しやすいのですが、それらはグローバルのスーパーサービス、いわばバケモノサービスなのでそれらを見て「みんなが投稿できるSNSを作ろう」とすると難易度がすごく上がってしまいます。

尾原: Googleも失敗していますよね。Google+というサービスがありました。日本では尾原っていう人が事業開発責任者だとか・・・。

けんすう: そうですね。Googleがやって、日本でよく分かっている尾原さんがやったとしても、やはりSNSはそう簡単ではないので、そこまでいかなくてもちゃんとビジネス化できる範囲で今話しています。

尾原: もちろん、私がやったというよりは、本国で作ったもののビジネスアライアンスを私がお手伝いしたというくらいの話です。おっしゃるように、コミュニティの力でユーザーが書いてくれるものをメディアにしていく、メディアとしてみんなが使える品質を作らなければいけないというタイプのCGMと、SNSという「今何してるの?」「今こんなこと考えてるよ」というようなブログやSNSは別物として考えた方がいいということですね。

けんすう: そうですね。先ほど3つのビジネスモデルがあると言いましたが、正直なところ、課金とECについてはそれほど説明する必要がないと思っています。むしろ広告がほぼメインなので、ここをもう少し深掘りしたいと思います。

尾原: いいですね。実は私もGoogleにいた時は、Google+の事業開発をする前に、モバイルメディアにどのように広告をつけると、メディアの収益が最大化するかということをやっていたので、この分野にはかなり詳しいんです。

けんすう: そうですね、ちょっと楽しみですね。

まず、ユーザーによってコンテンツをどう作っていただくかという話をしますが、ここでよく勘違いされやすいコストの話について注意事項を述べたいと思います。

昔から結構あるのですが、コミュニティができあがると企業はコストをかけずにコンテンツが自動的に出来上がっていくから良いという考え方があります。

尾原: あるあるですね。ユーザーが勝手にコンテンツを書いてくれるとか、ファンだからめちゃくちゃ詳しいから彼らは愛を持って書いてくれるんだよ、みたいな少し都合のいい言い方がありますね。

けんすう: そうですね。確かに食べログは勝手にレビューが集まって店舗の情報も整理してくれている、Wikipediaは全部無料で作られている、といった具合です。しかし、コストダウンを目的としてここに取り組むと、結構失敗しがちだと思っています。

尾原: もともと作らなければいけないコンテンツを好きな人が勝手にやってくれるからコストが少なくて済むからいいじゃん、という話はよくありますね。

けんすう: すみません、話しながら少し嫌悪感が出てしまいました。

尾原: そういう話はよくありますよね。

けんすう: やるとしたら、もっとコストがかかるかもしれませんが、それをやる理由があるのかという観点で考えた方がいいと思います。ですので、コストダウンを目的としてここに取り組むのは基本的にはかなり難しいということを覚えておいてください。

尾原: 小規模でもこのコミュニティでやる方がもっとコストがかかるかもしれないというのは、けんすうさんのコミュニティ運営の実績や愛を感じますね。単純にプロに頼むと1万円払えばコンテンツを作ってくれますが、お客さんは楽しさや充実感、様々なインセンティブがないと協力してくれません。私たちのコストを下げたいから無料でやってくださいと言っても、嫌がられるのは当然の話ですね。

けんすう: その通りです。押し付けではないので、自分でやりたいと思わないと書いてくれません。

尾原: そうですね。自発的にやりたいと思わないと書いてくれないですからね。

けんすう: そうなると、やはりお客さんが投稿したいと思わせるような仕組みを作ったり、例えば表彰制度を作るとか、「いいね」がたくさん集まるとランキングに載るとか、いろいろなことを考えないといけません。結局、人間をよく理解した上でうまく動かさなければならないので難しいのです。

尾原: そうですね。だから、一人一人に原稿を書いてもらうという都度払いのコストがいいのか、それとも良質な記事を書きたくなるようなインセンティブ作りやモチベーションが湧くような仕掛けを作った方がいいのかという話になります。前者は単発のコストなので予測可能ですが、後者の仕掛けを作るには最初にお金を払わなければならないし、結構読めないところも多いということも含めて覚悟を持ってやらなければいけないというのは非常に理解できますね。

コールドスタートの解決策

けんすう: まさにその通りですね。特に、コンテンツを作る上でコミュニティにおいて「コールドスタート問題」というものがあります。

尾原: いわゆるネットワーク効果で話をした最初の段階で、うまく回らないという問題ですね。

けんすう: そうです。これを非常にシンプルに言うと、誰もいないコミュニティの投稿数は基本的にゼロなので、何もなくなってしまうのです。大抵の人は先ほど言ったようにコンテンツを見に来るので、コンテンツがゼロのサイトには理論的には誰も来ないはずです。

YouTubeにコンテンツが一つもなかったら誰も見に行かないという状態になります。つまり、コンテンツがないとユーザーが来ない。ユーザーが投稿しないとコンテンツができない。これは卵が先かニワトリが先かという問題になりやすいのです。

この問題を解決しないと、コミュニティ、特にUGC(User Generated Content)のようなものはうまく機能しません。これをどう解決するかが一番のポイントでありコストがかかる部分でもあります。

尾原: そうですね。コンテンツが先かユーザーが先かで言うと、どちらがハードサイドなのかという話になりますね。

けんすう: 私は完全にコンテンツだと思っています。コンテンツを先にと言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、この問題の解決方法を3つ考えてきました。

尾原: では、その解決策について詳しく見ていきましょう。

けんすう: はい。1つ目の解決策は、ツールとして最初に展開するというものです。

尾原: Tool to Networkですね。

けんすう: そういう言葉があるんですか。

尾原: いや、ネットワーク効果の回で説明したのを覚えていないんですか。

けんすう: 忘れていました。この話で言うと、最初はコミュニティっぽく見せずに、ツールですよと見せるのが大事だという話です。言い換えると、1人が使っても成り立つようなサービスにするということになります。つまり、コンテンツがなくても使えるサービスにすることです。

例えば、食べログの初期段階を調べてみると、最初はお店のレビューを書くサイトでもお店を探すサイトでもなく、どちらかというとお店の感想などを投稿できるブログサービスのような感じでした。つまり、食べ物に関するブログで食べログだったのです。

当時はブログブームのようなものがあって、多くの人が自分のブログで「こんな店に行ったよ」とか「美味しかったよ」といったことを投稿していました。食べログはそういう人たちに向けて、お店に行った記録を残せるブログツールですよ、というような形で最初にアプローチしていったのです。

尾原: 見る人が前提で書くというよりは、自分のために整理がしやすいメモですよ、という感覚だったんですね、最初の食べログは。

けんすう: そうです。だから初期の食べログのリリースノートなどを見ると、ひたすら投稿者向けの施策ばかりやっていたんです。投稿しやすくて、みんなが楽しく使っていて、データが集まってきたら、だんだんお店が探せる場所としてアプローチしていきました。

「食べログで探すといい店が見つかるじゃん」というようになって、だんだんコミュニティ化していき、良いコンテンツがたくさんあるメディアになって、ビジネスモデル的にも成り立つようになっていったという経緯があります。

尾原: Instagramも同じですね。Instagramは最初、TwitterやFacebookにきれいな写真をアップロードするための変換ツールというところから始まって、「どうせきれいな写真が撮れるんだったら、クローズドな大切な友達にだけ見せたい写真をアップロードしよう」と言って、だんだんネットワークになっていきました。

実はYouTubeも、最終的には「あなたのTube」「あなたのチャンネル」ということでみんなに見てもらえるというところを目指しましたが、実は最初は動画を無料でアップロードして友達に共有できるツールという感覚で始まったんです。

けんすう: 本当に良い例を2つ挙げていただきました。Instagramもやはり最初はFacebookなどに投稿するためのものでしたし、YouTubeも私の記憶では、ブログに埋め込むためのものが大きな要素でした。外部サービスに載せるためのストレージのような感じだったんです。

このようにすると、お客さんもどんどん見に来てくれる集客にもなるし、使っている人は単にストレージというか、見せるためにアップロードしている場所みたいな使われ方だったのでうまくいきました。

Pixivも同じで、絵を置いていける場所みたいな感じでした。これら全てに共通しているのは、昔はホームページにイラストを置こうと思っても容量がすぐにいっぱいになってしまうという問題があったことです。

尾原: 容量が足りなかったんですよね。お金がかかるから。

けんすう: そうなんです。だから本当に月に何千円もかけてホームページの容量を増やさなければならなかったのが、Pixivだと高画質のイラストを無料で置いておけるということですごく使われました。

そうすると何が起こるかというと、当時SNSなどもあまりなかったので、ホームページからリンクを貼るんです。「イラストはこちら」と言ってPixivに皆が飛ぶので、そこでまたPixivの集客につながるということが起きていました。

尾原: そうですね。だから今はあまり言われなくなりましたが、当時は「Piggyback」という言葉が英語で流行っていました。つまり、1から自分たちのサービスを立ち上げるときに、自分で全部集客すると大変だからツールとしてそのときに流行っているネットワークコミュニティサービスに使われる存在になると、そのネットワークから勝手に集客ができるからロケットスタートできるよね、ということで「Piggyback」という言葉が流行っていたりしました。

実は今、生成AIでちゃんとしたものを作ろうとするとコストがかかる中で、いろんなコミュニティやいろんなネットワークサービスの上に乗っかるものが作れるという意味では、まさにAIのようなものはツールとネットワークの典型的なものになりやすいとも言えますね。

けんすう: 確かにそうかもしれませんね。YouTubeも同じで、動画などはもう全然置けるものではなかったので、という感じでした。

次に、2番目の方法として、自社でコンテンツを作るというパターンがあります。これはとてもわかりやすくて、自社でコンテンツを作ってからメディアとして成り立ち、そこからユーザー投稿を開放していくというパターンです。

わかりやすい例としては、クラシルという料理レシピサービスがあります。クラシルは、一般的なレシピをどんどん大量に自分たちで作ってお客さんを集めて提供するということをやっていました。

レシピの場合、ハンバーグなどの定番料理が圧倒的に人気になるので、そこは自分たちで作っていくということをやった後に、今ではユーザー投稿を開放して、TikTok風のショート動画でアップロードできるようになったり、Instagram風の写真でレシピが投稿できるようになったりしています。

このポイントは、クックパッドという競合がいたことです。クックパッドは完全にユーザー投稿型でしたが、お客さんに高品質な動画を作ってもらうにはもう少し時代を待つ必要があったので、クックパッドは動画レシピを提供できない状態でした。

一方、クラシルは自社でスタジオを作ってオペレーションを最適化し、高品質なレシピ動画をどんどん作っていきました。定番レシピが大体そろったところでユーザー投稿を開放し、ニッチなレシピをどっと増やして、より強くしていくという二層構造にしたのです。これによって、コールドスタート問題を鮮やかにクリアしたというパターンだと思います。

PGCとUGCの戦略的融合

尾原: この辺りは、日本ではあまり言われなくなりましたが、UGC vs PGCという言い方で議論されていました。ユーザーが作るUser Generated ContentとプロがつくるProfessionally Generated Contentをどのような形でうまくハイブリッド化していくかというところが議論になっていたんです。

先ほどのクックパッドとクラシルの例はわかりやすいですね。ある意味、クックパッドはユーザーがどんな良いレシピをアップロードしてくれるのかを褒めるという文化が中心になってしまったので、そこに大量のプロが作った動画を入れると、コミュニティの中で軋轢が起きてしまうんです。

けんすう: そうなんですよね。

尾原: それに対してクラシルは、本当にスタジオを作って、上からの画角でフライパンの動きが撮りやすいようにするなど、すごく高品質なものを低コストで作る体制を作りました。テキストから動画へのインフラのゲームチェンジの時に、うまく変化していった典型例ですね。

けんすう: そうですね。さらにすごいのは、おそらくInstagramやTikTokなどに料理人がレシピを投稿するようになると、クラシルは厳しい状況になりかねなかったと思うんです。しかし、定番レシピを探すならやはりクラシルの方が良いということになっているので、そこをちゃんと両方取れたというのは、すさまじいセンスと戦略だなと思っています。

尾原: そうですね。この辺りはリクルートの回でも触れましたが、結局どこに染み出すかという戦略設計がすごく大事です。ビジネス化するためには、やはりユーザーさんにたくさん来ていただかなければいけません。

そうすると、リクルートの時にやったように、ビジネスには発見の中の出会い頭で動いていく「ディスカバー型」のビジネスと、自分の目的に対して探していく「サーチ型」のビジネスがあります。

InstagramやTikTokはディスカバー型です。「これおいしそう」とか「しずる感がある」とか「簡単に作れそう」といったところで発見します。しかし、2回目に「今日の献立を作ろう」となったときに、わざわざディスカバー型のTikTokやInstagramで探していると効率が悪くなります。

実は、クックパッドの中で一番検索されているタグは「15分以内で作れる」なんです。

けんすう: なるほど。

尾原: この15分というのは、言い方は悪いですが、検索の時間も含めて15分で作れるということなんです。

けんすう: なるほど、面白いですね。

尾原: だから時間があるときはディスカバーの中に浸ればいいけど、パッと作りたいというときはやはり検索の中でサクッと自分が喜ぶメニューをどうやって探すのかということになったときは、やはりクラシルというメディアの方に行くんですね。

だからそこら辺のディスカバーとサーチを戦略的に切り分けてやっていた堀江さんという人は本当に優秀な人だなと思います。

けんすう: 本当にそうですね。面白いです。15分以内で検索する人は時間がないから、とにかく早くレシピにたどり着きたいというニーズがあるんですね。

尾原: しかも、機能性と違うものが必要だったり、アレルギーがあるとアレルギーに配慮しなければいけなかったりと、実際の現場では制約条件を回避したものを探さなければいけません。そうすると、コンテンツにたくさんディスカバーとして出会っていくSNSメディアよりは、もう良質なコンテンツが集まっていて、検索の中でパッと探せるCGMであり、プロが生成したメディアのハイブリッドの方が良いということになります。これが自社で作るときの重要なポイント設計になりますね。

けんすう: なるほど。

尾原: いくらでも語れてしまいますね。

けんすう: そうですね。では、3つ目の方法に移りましょう。

3つ目は、演出でごまかすというパターンもあります。

尾原: 演出ですか。

けんすう: これは、私が昔やっていた「アンサー」というモバイルのQ&Aサービスの例です。質問サービスは質問がないと答えが集まらないという極めて当たり前の構造があります。これを、あえてチャット風の画面にしたんです。

当時、スマートフォンがこれから来るぞというタイミングで、みんなあまりスマートフォンのUIに慣れていない状態でした。そこで、LINEのようなチャット風の画面にして、最新のコメントがあったら一番上に上がるというフロート式と呼ばれる仕組みにしました。こうすると、リロードするたびに上位の投稿5件くらいは常に入れ替わっているように見えるんです。

尾原: なるほど、賑わいが見えるわけですね。

けんすう: そうです。ヘビーにLINEを使う人でも毎秒メッセージが来るということはさすがにないので、このサイトに来ると「めちゃくちゃ人がいる」というのをLINEと比較して感じるんです。

これによって、ユーザー数が少なくても「なんでこのサービスはこんなに人がいるんですか」という質問が来るくらい、すごく投稿があるように見えました。

なので、いわゆる人気と呼ばれる、たくさんの人がコミュニティにいるかのように錯覚させることは非常に大事で、こういった手法を使うのも一つの方法だと思います。

尾原: いやー、やらしいですね。でも、これって本当に人気が大事なんです。例えば、今はコンビニが当たり前になったのでステージが変わりましたが、昔はなぜコンビニは立ち読みを許していたのかという話があります。

昔、コンビニがまだメジャーではなかった頃は、雑誌棚をあえて入り口の横に置いていました。しかもライトで結構明るくして、誰が立ち読みしているのかが見えるようにしたんです。

けんすう: はい、はい。

尾原: そうすることで、深夜にやっているコンビニで人気がないと少し不安に思ってしまうところを、立ち読みしている人がいることによって人気を演出していたんです。

それでコンビニが安心して入れる場所として徐々に定着していきました。今は定着したので、あえて入り口横に雑誌棚を置かなくてもよくなってきたという経緯があるんです。

けんすう: 人気は本当に大事ですね。

尾原: そうですね。ところで、ちょっと30分を超えていますが、この辺りの話が大好きなのでもう少し深掘りしてもいいですか。

やはりアンサーを出すタイミングは、スマホでLINEなどが定着した頃だったので、コミュニティサービスを非同期で作るのか同期で作るのかというのも重要な決断でしたよね。

いわゆる掲示板のように、答えを書いたら次の日になったら答えてくれるという、割とすぐに答えが返ってこなくてもいいサービスがあります。一方で、すぐに答えが返ってくるとその答え自体がそんなにピンポイントでなくても嬉しいというサービスもあります。

本人の感情の同期設計を正確な答えに持っていくのか、それとも誰かに構ってもらえているという安心感、いわゆる前回けんすうさんが話したグルーミングに持っていくのかというところが重要です。

グルーミング的なサービスとしてのこういう同期性、人系の演出というところはすごく上手いなと当初思いましたね。

けんすう: もうまさにおっしゃる通りで、みんなこう悩みをちゃんと説明しないで、「はあ、つらい。」とかで投稿します。そして、みんながどうしたのって聞いて、「実は...」みたいな感じにするように設計していたんです。

だからやはり即レス型と言っていたんですが、まだスマートフォンが普及して間もない頃なので、普通のQ&Aサービスと違ってもう10秒で返ってくるみたいなところを価値として提供していました。

尾原: こうやって分解するとめちゃくちゃわかりますね。

けんすう: そうなんです。他にもテクニックがあるので、簡単に紹介します。例えば、他のサイトが崩壊した時に引っ張ってくるみたいなパターンもあります。

Twitterが買収された後にいろんな代替サービスが出ましたが、あれもやはりそれを狙っていて、「ここがダメになったから他に移動しなきゃね」みたいな人たちをガッと取ってくるみたいなのはよくあります。2ちゃんねるも、まさに大きなAmazonというサービスがちょっと崩壊した時にガッとユーザーを持ってきたという形でした。

あとは、コンテンツを作るために自作自演するみたいなパターンもあります。これも先ほどのプロが作るというのの派生系です。

コストをかけて自分たちでコンテンツを作っていくというのもありますし、NewsPicksのように有名な人にお金を払ってコメントしてもらうみたいなこともあります。堀江貴文さんがコメントを書いているからちょっと見に行こうかなというので魅力的になってくるので、そういった形もあると思います。

尾原: この辺は先ほど言った、ユーザーが集まってくるとコンテンツも集まって、逆にコンテンツがあるとユーザーが集まってきます。

ユーザーが集まってくると人に見られて嬉しいから、役に立つからなのか、帰属意識があるからなのか、ユーザーがまたコンテンツを書いてくれるという循環が生まれます。

コンテンツがユーザーを呼び、ユーザーがコンテンツを呼ぶというネットワーク効果を回していくということが、結局トラフィックを作ることになります。トラフィックを作れば一旦広告のようなところでマネタイズができるということになります。

ユーザーを呼ぶためにある程度最初コンテンツがあるのか、NewsPicksのように有名人に払ったり、プロに作ってもらったり、ヒト系を作ったりというところで回すテクニックもあります。

一方で先ほど言ったように、買収してみたいなところだったり、他から逃げてくるみたいなこともあります。逃げるところは次の一頭地になるかもしれないから先にユーザーがコンテンツ作ってくれるみたいな考え方もあります。

先ほどのニワトリと卵の問題で言うと、必ずしもコンテンツから始めなくてもいい応用編として、この避難先みたいなポジションを狙いますみたいなものもあるというふうに考えればいいのかな。

けんすう: その通りです。完璧な解説ですね。

尾原: いやいや、前回までのけんすうさんのコメントの具体例とまとめ性というところを頑張って私も補足しながらサブ役をやらせていただいております。

けんすう: 素晴らしいです。

というわけでもう30分を過ぎてしまったので、今回はコンテンツを集めてメディア化して広告を載せるというビジネス、マネタイズのところを説明しました。

次回に分けて課金とECのところをごく軽く言いつつ、尾原さんに直接マネタイズする以外のところのビジネスについてもお話ししてもらえないかなと思っています。

尾原: 了解です。そうですね、ビジネス化イコール、コミュニティそのもので売り上げを作る、利益を作る、マネタイズするという手もあるんです。

しかし、コミュニティがあることによって別のところの収益が生まれるからコミュニティはサブパーツとしてビジネスとして持続的になれるというパターンも実はアメリカでは非常に主流になってきたりしています。

その辺の解説も私もプラスしていこうかなと思います。

けんすう: はい、ありがとうございます。では今日はこんな感じでしょうか。

尾原: はい、ありがとうございます。


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