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きさま! メロすぞ!!

おかしい。
『走れメロス』って無知蒙昧なメロスが邪知暴虐な王に激怒して親友を担保に妹の結婚式に出席する話だと思ってた。
無知蒙昧なのは王のほうらしい。
あれ? だってメロスが無知蒙昧で政治が分からぬから、自分の分からぬ仕事をしている王を邪知暴虐としてブチ殺すんでしょ?

ざっくりあらすじ見たら、人が言ってるのを聞いただけで激怒して王を殺しに行ったらしい。
ええ?

ムチモウマイって言葉いいよね、おいしそう。って話をしようと思ったのに、わかんなくなっちゃった。
一回ちゃんと目を通すか。
というわけで走れメロス、青空文庫で読んだ。さっき見かけたあらすじ嘘やんけ。いや嘘ではないかもしれんが、省略の仕方が悪くて話が変わっとる。
最初の激怒って、王の話を聞いたあとの激怒だよな。そっからメロスの背景説明になってるんだよな? 前後関係が分かりにくい。

メロス、最初から王を殺しに行ったわけじゃなくて、妹の結婚式の買い出しに市へ行っただけだった。
そして町に人が少ない理由を若者に尋ねて無視され、次に会った老人を怒鳴りつけ、体を揺さぶって「なんでや!」と詰問している。暴虐。
メロスは牧人でガタイがよいであろうから、若者を追っかけて詰問はしないけれど、脆弱な老人相手なら強く出られるのだ。
王が疑心暗鬼に苛まれて民を処刑しまくっているので、メロスは王を殺すことにした。メロス的には人を疑うのは悪いことなので、メロス的に悪いことをしている王を殺すのは正義なのだ。

小学校の学芸会で走れメロスをやらされたことを思い出してしまった。記憶から消えてたのに。
クラスのみんなが平等に活躍するべきだという担任の方針で、台詞のない役はなかった。
私も台詞を言わされた。泣き真似もさせられた。拷問だった。
死にたい。もうメロスとかどうでもいい。
この記憶を消してくれ。お願いだ。殺してくれ。

メロスが王を殺して、その罪でメロスも処刑されて、世代交代するんだったらそれはそれでよかったのにな。
良くなるか悪くなるかはともかく変化ではある。良くなろうが悪くなろうが民衆は新しい不満を探すだろう。
そしてまた同じようになる。
あ、結婚式が終わって城に戻ってる最中に山賊に襲われたメロスが「王の差し金か」って人を疑ってた。せんせー、メロスくんが人を疑ってましたー!
最後はみんなで無知蒙昧になってハッピーエンド。やはり幸せというものは知識と道理を捨てた先にあるらしい。

蒙も昧も「くらい」って意味があるんだなあ。
そういや何らかの分野に対して知識があることを「〇〇に明るい」って言う。
無知蒙昧。知らん! なんも分からん! 闇! でも未知に対する恐怖もない! だってバカだから!
いいじゃない。無知蒙昧になりたい。早く。

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