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ピューニッキの丘とカルダモンドーナツ

以前、コラムを連載するお仕事を頂いていた時、フィンランドのタンペレについてお話を綴ったことがありました。

このお話に出てくる通り、長い長いピューニッキの丘をゆっくりと上って、最後に辿り着くのは、小さなピューニッキ展望台と小さなカフェ「ピューニキン・ナルトルニン・カハヴィラ」です。

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この小さなカフェで作られている「ムンッキ」は、フィンランドで一番美味しいと言われていて、遠方からも買いに来るフィンランドの人たちの車で渋滞ができるほど。

その味わいは、カルダモンがしっかりと効いたモッチリ揚げパン。そうなんです。ドーナツというよりは、「カルダモン入りの揚げパン」。これこそが、このカフェの「ムンッキ」の味なんです。

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この「ピューニキン・ナルトルニン・カハヴィラ」のムンッキの味を、どうにかして日本でも再現してみたい。うん。やってみようよ。
こうして、私たちの試行錯誤の日々が始まりました。

粉の配合を変えてみたり、日本人の口に合うようにフワフワにしてみたり。そのフワフワを、もう少しモチモチに近づけてみたり。そうそう、販売当初は、穴の開いたリングドーナツを作っていました。

結果、今のまん丸ムンッキに辿り着いたわけですが、当店ではこれを敢えてムンッキとは呼ばずに、「カルダモンドーナツ」と呼んでいます。皮つきのカルダモンを、ひとつひとつ手で剥いて、その実をミルで手挽きをしてから、生地に練り込みます。シンプルにカルダモンの爽やかな香りを楽しんでもらえる、軽くて丸くて優しいドーナツ。それが、istutオリジナルの「ムンッキ」なのです。シンプルだけど、香りが良く、また食べたくなる。ありそうでない、不思議な魅力のまん丸くん。

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と、オリジナルだなんて、ちょっと格好つけちゃいましたが、しっかりと参考にしたのは、あのタンペレのムンッキの味であり、私たちの原点であり、立ち戻る味はあの場所にあります。

タンペレのピューニッキの丘は、たくさんの樹木をくぐりながら上って行きます。湖のほとりにある丘なので、木々の間からは美しい湖が見えます。立ち止まって、空を見上げたり、湖を眺めたり。自分だけの小さな休憩をしながら歩いて行くのがオススメです。やがて辿り着く小さなカフェでは、静かなコーヒー休憩とムンッキの時間が待っています。

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でも今日は、せっかくなので、コーヒーとムンッキをテイクアウトしてみましょう。帰り道は、この赤いベンチに座ってぼんやりと湖を眺めましょう。そしてタンペレの静かな空気に包まれながら、美味しいムンッキを頬張りましょう。

おやおや、ここ東京荻窪にも、カルダモンの良い香りがしてきましたよ。今日も、istutのカルダモンドーナツが出来上がったようです。

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