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パーソルキャリア様 インタビュー前編~「MyLearning(※1)」の事業立ち上げフェーズ~

国内のスタートアップ企業は、年々存在感を増しています。
2023年5月に開催されたスタートアップの経営幹部やベンチャーキャピタル(VC)関係者が一堂に会するカンファレンス「IVS」では、参加者数が過去最高の1万人を超えました。
一方で、大企業において新規事業を立ち上げる部署に行きたいと志願する人の数は、スタートアップへの転職者数と比較すると、圧倒的に少ないです。ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化する昨今、大企業において新規事業を創出するニーズは年々高まっていますが、企業内で新規事業が生まれにくい状況は変わっていません。
この事例集では、“大企業における新規事業立ち上げ”にフォーカスを当て、当社がこれまでに関わった企業の事業担当者様へのインタビューを通じて、大企業で新規事業を成功させたストーリーや、成功のための必要なノウハウなどをご紹介します。新規事業に携わっている方、興味がある方に、少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

今回お話をうかがった企業

-人々に「はたらく」を自分のものにする力を-をミッションとし、転職サービス「doda」やハイクラス転職サービス「doda X」を通じて人材紹介、求人広告、新卒採用支援などを提供するパーソルキャリア。同社は「キャリアオーナーシップを育む社会の創造」、すなわち、はたらく人々が自らの意思で自身のキャリアや人生を選択することができる社会の実現を目指しています。その実現に向け、自らの可能性を知り選択肢を増やすための「学び」と、「学び」と「はたらく」をつなぐために、2023年2月より新規事業の一つとして社会人向けリスキリングサービス「MyLearning(マイラーニング)(※1)」のβ版の提供をスタートしました。「MyLearning」は、事業開発・マーケティング・UXデザインなど、日々の業務や未来のキャリア開発に役立つコンテンツが、現場で活躍するビジネスパーソンによって投稿されるサービスです。
「MyLearning」では、テーマごとに社会人向けにゼミを開講しており、2023年8月には代表の水野が「新規事業の効果的な調査の仕方」というテーマで3回にわたって講義を行いました。
今回は、「MyLearning」の事業責任者である工藤大助様に、サービスの立ち上げから現在に至るまでの道のりや、大企業において新規事業を立ち上げる難しさといった様々なお話をうかがいました。「MyLearning」の事業立ち上げフェーズと、実行フェーズに分けてご紹介します。
■“現場で活躍するビジネスパーソン”から学べるMyLearning」(※1)


(※1)インタビューは2023年時点のものです。今後「MyLearning」は「PERSOL MIRAIZ」に統合予定。(2024年2月現在)



インタビュイープロフィール

パーソルキャリア株式会社  工藤 大助様
PERSOL MIRAIZ事業責任者兼MyLearning事業責任者

大日本印刷株式会社にて海外事業開発に従事後、パーソルホールディングスに入社。グループ経営企画部にて、APACでのM&A支援、グループ中期経営計画策定、パーソルブランド立ち上げ、グループ広報・PRをリード。2023年2月、事業責任者として社会人向けリスキリングサービス「MyLearning」を立ち上げ後、7月より、はたらく未来図構想統括部「PERSOL MIRAIZ」事業責任者を兼任。
■パーソルキャリア株式会社
https://www.persol-career.co.jp/
■PERSOL MIRAIZ
https://miraiz-persol.jp/

株式会社ISSUE 代表取締役社長 水野 貴弘
野村證券に入社後、株式会社ファインズのグループCFOとして財務面での戦略立案/資金調達/M&A/他社とのアライアンス/上場準備等をリード。事業面では子会社を2社設立し、メディア事業及び人材事業を推進。YCP Solidianceではスタートアップ×ファインナンス(M&A/資金調達/ビジネスDD等)を軸としたプロジェクトに従事。2021年、株式会社ISSUEを創業し、代表取締役に就任。


パーソルキャリア様 インタビュー前編
~「MyLearning」の事業立ち上げフェーズ~

工藤さんのキャリアについて

水野:工藤さんのこれまでのキャリアを教えてください。
工藤:もともとはDNP(大日本印刷株式会社)で東南アジアにおける事業開発をしていました。当時も携わっていたのは、新規事業の立ち上げでした。当時通販が流行っていたので、ECパッケージや決済サービス、スマホ用アプリなどを提供していたのですが、それらの国内向けサービスを東南アジアでどう売っていくかをフロント側に立って考えていました。海外での事業開発が楽しかったので、もっと携わりたいと思った時に、ちょうど当時のパーソルグループが東南アジアで事業を拡大するタイミングでご縁があり、パーソルホールディングスのグループ海外戦略室に移りました。
その後は経営企画業務を主務として、ホールディングスにて約5年間従事していました。初めて事業側ではなく、経営側に携わりました。

水野:大企業でしかもホールディングスの経営企画ということは、まさに上流の部分をみていらっしゃったんですね。
工藤:そうですね。中期経営計画を策定したり、当時まだパーソルというブランドが存在しなかった時に社名をどう浸透させていくのか、ブランディングやコミュニケーションプランをどのように企画、実行していくかなど、広報活動にも携わりました。ですが、ホールディングスにいると日常的にコミュニケーションをとる相手が役員をはじめとする経営層になります。取締役会やグループの経営会議には事業側の執行役員もいますが、市場との距離があります。もともと自分はフロント側に立ちたい人間なので、自ら手を挙げて新規事業を輩出するパーソルイノベーションに転籍しました。(その後、「MyLearning」の吸収分割のタイミングでパーソルキャリアに転籍)

パーソルキャリア株式会社 工藤 大助様

「MyLearning」の事業立上げフェーズ

水野:「MyLearning」の事業構想自体は、工藤さんがゼロから立ち上げたのですか?それとも、それっぽいものがもともと社内にあったのでしょうか?
工藤:社内にもともとあった訳ではありません。ですが、ラーニング領域、つまり「学びの機会の提供」は、パーソルグループ全体で「事業を通じた社会課題の解決」の一つとして注力すべきテーマとして掲げています(※2)。ラーニング領域をパーソルグループとして体現するなら何ができるのかーまずは国内外の市場をリサーチしながら、参入戦略を練っていきました。まさに水野さんが得意とする分野だと思います。M&Aを視野に入れてリサーチしたり、アメリカや欧州などで先行する企業の情報収集だったり、あまりアセットを使わずに展開する方法など、サービスを立ち上げる前段階では様々な検証を重ねました。結果、Web上で学習コンテンツをキュレーションするサービスとして展開するのが適していると判断し、「MyLearning」がスタートしました。
(※2)「パーソルグループ中期経営計画2026」

事業立上げの難しさとは

水野:現在「MyLearning」は実行フェーズに入っていますが(2023年2月よりβ版を提供開始)、多くの大企業の場合、そこに至るまでのハードルが高いと思います。そこを超えられたポイントは何だったと思いますか?
工藤:意思決定者(決裁者)を味方につけたことが一番大きかったと思います。
事業がちゃんと成果を出すことを証明し、投資してもらうというプロセスで進めるのも良いですが、新規事業は簡単に実績が出ません。
もちろんパーソルグループ内では社内起業制度もありますが、審査を重ねるのでそのプロセスを踏むのはある程度の時間がかかってしまう。私は事前に意思決定者を巻き込みながら、密なコミュニケーションを重視して行動しました。

水野:ある程度経験を重ねて、何か自分で事業をやりたいなってなった時に、今だとスタートアップに転職する人も結構増えていると思います。そうではなくて、今の大企業の中で新規事業をやろうと決断した理由は何だったのでしょうか。
工藤:ホールディングスから事業会社に移る時に、グループ内と外どちらでやるのが自分の価値を出しやすいかで決断しました。ラーニング領域のスタートアップは、まだ市場ができておらず、分散しています。中小企業が参入している研修系、テクノロジーをベースに効率化するサービス系、そして学校、学生向けに特化している学習系といった感じです。
そう考えると、人的なネットワークもあり、企業ビジョンが定まっている大企業の方が、勝ちやすく、さらに、新規事業であれば相対的に自分でも価値が出しやすいと考えました。
水野:僕はもともとスタートアップ側にいたこともあり、自分の会社で新規事業立ち上げのコンサルも行っていますが、やはり大企業の新規事業はとても難易度が高いなと思います。将来的には大企業の新規事業向けの人材紹介事業もやろうと思っていて、今のお話はとても参考になりますね。

水野:大企業における新規事業の立ち上げで、人を採用するのか、それともコンサルに依頼するのかはその企業によると思いますが、国内のスタートアップって、今でも割とスポットライトが当たり続けていますよね。一方で、大企業の新規事業部に行きたい、という声はあまり聞かない気がします。でもそこに興味がある人は絶対いるはずなので、このインタビューを通じて、少しでも面白いと思ってくれる人が増えたらいいなと思います。
工藤:大企業の中で新規事業に興味がある人は、多分マイノリティだと思いますね。スタートアップに限らず、大企業の新規事業開発部門やCVCも含めて、プロダクトを生み出し成長させるという括りがあった時に「私できます」「私やりたいです」という人材は、中途採用が多い印象です。VCやコンサル出身とか。スタートアップでちょっと疲れたから次は大企業で、みたいな人もいるかもしれない。ですが、全体で見た時に母数は圧倒的に少ないので、大企業内で立ち上がる事業が少ないのだと思います。

工藤:結局は、M&Aによって既に出来上がっている事業を買収するのが、新規事業を創出する一番近道ってなってしまいますよね。だからこそ新規事業、もしくはBizDev(ビズデブ)や、プロダクト開発といったチームに入れるような人材は、これから市場で価値が出そうですよね。

>>>インタビューは後編に続きます


インタビューは2023年時点のものです。今後「MyLearning」は「PERSOL MIRAIZ」に統合予定。(2024年2月現在)


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