借金200万円#毎週ショートショートnote「親切な暗殺」
ガソリンの臭いが立ち込めている。
「ようやくこれで静かになった」
1月の冬、月がやけに大きい夜の晩だった。
午後8時からそれは始まる。恋人の祐介が怒り出す時間だ。なぜか彼はネジ巻き時計のようにこの時間になると怒り出す。
「今回」は私が思いやりのない相槌を打った、らしい。しかし思いやりのある相槌とは一体何なんだろう。
「お前が俺を怒らせるんだ。お前が全部悪いんだからな」
彼はそう言い捨てて、ドアを力いっぱい閉めた。バシンと鳴らした大きな音がまるで自分の頬を引っ叩かれたかのように痛い。頭の中でガヤガヤと声が煩い。違うな、もっと不快な音だ。あれは何の音だっけ?
それから彼が何故か上機嫌で帰ってきて、一緒に寝ているシングルベッドで眠った時、「私」は起きた。
夜の2時だったがすくっと立ち上がって彼の愛車である赤のスカイラインにガソリンを丹念にかけた。
ライターで火をつけたら一気に明るくなった。
「ようやくこれで静かになった」
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