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【投資】"賃金は景気遅行指数である"という事実に向き合う〜ではどうするか?

大学時代は理科系だったので、本格的に経済を学んだのは、最初に入社した銀行での研修の頃でした。経済指標の中に、景気動向指数というのがあり、景気サイクルに先んじて動く先行指数、景気サイクルと一致して動く一致指数、そして遅れて動く遅行指数に分かれており、賃金・雇用系の数字は遅行指数に反映されると。まあ当たり前と言えば当たり前、ただキャリアのスタートを切ったばかりの自分にとっては"衝撃的な事実"としてうつりました。


景気動向指数とは?

景気動向指数は内閣府が毎月発表している、文字通り景気の動向を総括的に示す指標です。下記に簡単にまとめられてますのでご参照ください。

なお労働・雇用関係の数字でいうと、新規求人数は先行指標、有効求人倍率は一致指標、完全失業率やきまって支給される給与は遅行指標として計算されています。

"衝撃的な事実"というのは大袈裟としても、当時まだ何もわかってなかった自分にとっては、(ちょうどバブル崩壊後というタイミングもあったと思いますが)「景気が良くなっても、すぐに給料が上がるわけではないんだ」と思ったのが印象に残ってます。一方で、その印象も"危機感"までに至らなかったのは、景気サイクルに寄らず年次が上がれば自然と給与は上がるという当時の年功序列的な考え方もまた事実として残っていたからかもしれません。

企業経営者の立場で考えると?

労働者・従業員の立場からすると、会社の業績があがれば、すぐにでも給与を上げて欲しいと思うかもしれません。ただ企業経営者の立場で考えてみると、少し違った考えも見えてきます。

景気回復の兆しが見えてきて、ビジネス拡大のチャンスがより明確になってきたら、それを逃すまいとまずは人員等の先行投資を行います。新規求人数が先行指標として扱われるのはそういうことです。そして見込み通りに業績があがってきたら次は何をするか?その成長をさらに維持すべく、設備投資など、今後のビジネスのための更なる投資を行う、あるいは、今年の利益については株主へ配当を支払う。景気サイクルの短いビジネスであれば、来るべきダウントレンドに備え、逆に投資を抑制し内部留保を確保するかもしれません。

そういった諸々の判断の後で、余裕があれば「頑張って働いてくれた社員に報いるためにボーナス出そうかな」ってなるのかなと。ですので、最終的には社員に返ってくる部分もあるのですが、固定費である毎月の給与が上がるというまでに至ることはなかなか無いのではと想像します。

ボーナスは上げたり下げたりはしやすいですが(それでも設備投資等、その他の投資・ビジネス判断が先ですが)、毎月の給与は一度あげたらなかなか下げづらいこともあり、上げる判断はより慎重になりますね。

ではどうするのか?

自分が勤めている企業の業績拡大の恩恵をダイレクトに受ける方法、それはその会社の株主となることです。企業の業績がアップすれば、株価は素直にそれに反応します。「従業員持株会」という制度があり、自身の給与から毎月天引きで自社の株を買える仕組みがある企業もあろうかと思います。事実私自身も、入社後すぐに、その持株会の制度を利用して自社株を買い始めました(少ない額でしたが、自身の最初の株式投資経験です)。

勤めている会社が上場企業ではない、持株会の制度もないということであれば、例えば同業他社で上場企業があればそこの株を買うのもいいかもしれません。景気がいい時、自社の業績がいい時は普通に考えて、同業他社の成績も同様にいいと想定されますので(あきらかにその同業他社が負け組企業となっていたら別ですが)。

持株会を利用して自社の株を買う、または自社の業績がいい時に同様に良さそうな上場企業の株を買うことで、自身の給与のアップを待つまでもなく、その恩恵に授かれるようになります。

持株会にもデメリットがある

そんな持株会の最大のリスクは共倒れリスクです。勤めている会社が倒産したら、自分の雇用が失われるだけでなく、同時に持株会経由で買っていた株も紙屑になってしまいます。踏んだり蹴ったりです…倒産する心配がないような大企業であっても、将来何が起こるかわかりません。僕が最初に勤めた銀行は既に他行と合併してますし(その場合は紙屑にはなりませんが)、またそのリスクを最大限感じたのが1997年の山一証券の廃業でした。当時、米国のビジネス・スクールに留学したばかり。ファイナンスや投資の勉強もしっかりやっていた頃ですね。自分の会社がすぐに倒産するとは思いませんでしたが、何が起こるかほんとわからないな…と思い、持株会を通して株を買うのはやめました(留学後すぐ会社も辞めてしまうんですけどね^^;)。

キャリアリスクをヘッジする

共倒れリスクを避けるために、よほど「自分の勤めている会社は倒産しない」という自信のある方以外は、自社の株を買うよりも他社の株を買うことで自分のキャリアのリスクをヘッジしておくことをオススメします。
例えばですが:

  • 就活時、自分が行きたかったけど内定がもらえなかった企業、業界はありますか?もしまだその企業への憧れがあるなら、その企業の株を買ってみるのはどうでしょうか?自分の代わりに採用された人たちが、自分の代わりに頑張って働いてくれて、業績がアップしたら自分が恩恵を受ける。なんて素敵なことでしょうか?(笑)

  • 自分の業界、会社が苦戦している時に、逆に恩恵を受けそうな業界、会社はありますか?あるいは業界構造の変化によって、自分たちの業務が他のサービスに置き換えられる危機感を感じてますか?その恩恵を受けそうな業界、企業に今更転職するのが難しければ、その企業の株を買っておくのはどうでしょうか?

  • 友人から、勤めている会社の自慢話を聞いて羨ましいなと思ったことはありますか?もしその会社が上場しているなら、その会社の株を買ってみるのはどうでしょうか?「友人が株主である私のために働いてくれている」なんて思えるようになるかもしれません(笑)

以上、「給料は待っていても上がらない、であれば先にその恩恵を受ける株式投資を」「でも、買う場合には自分のキャリアと共倒れにならないようなリスクヘッジを」というお話でした。








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